第2話 二柱の神と、二つの種

 

 ...遥か遠き日、過ぎ去りし時の話...


 スクディエアス。

 幾つかの大陸が海に浮かぶこの世界を、この世界に住む者達はこの世界をそう呼ぶ。

 ある時、スクディエアスに神と呼ばれる高次元の存在がこの世界に降りたって干渉を開始する。スクディエアスに降りた神は二つであり、後に二柱の神と呼ばれる神はそれぞれこう呼ばれた。

 一柱の神の名は、スクーア!

 もう一柱の神の名は、ディエス!


幾多に別れ繋がった世界一つであるスクディエアスに降りった二柱の神の目的とは、、世界がより良い方向に進めているのかを観察し、世界がより良き方向に進む可能性をまだ持ち得ていないと二柱神が判断した場合、その世界に二柱神は何らかの干渉を行い世界をより良い方向に進めるように促すした後、その世界がより良い世界を築けるか査定するのが二柱の神の目的であった。


 『生命の持つ多様性によって生み出される力と、生命の持つ高度な知恵によって世界はより良い新たな可能性を生み出す』

 その理念を元に、様々な世界を渡り歩き続ける二柱神が今回降り立った世界であるスクディエアスには、生命がまだ多くの誕生したばかりであった。

 二柱の神はスクディエアスに住む多くの生命を見た事で、この世界がより良い世界を生むのに欠かせぬ要素の一つを既に持ちえている以上、もう一つの欠かせぬ要素である知恵ある生命の誕生は近いと感じ、静観して知恵ある生命の誕生を待ち続けた。

 だが、二柱神の予想に反して知恵あるモノがこの世界に生まれる気配は、全く見られなかたので、二柱の神は高度な知恵ある生命が生まれように、それぞれ世界に干渉を始めた結果、新たな生命を二柱の神は互いに造った。

 スクーアが造った新たな生命は人族と呼ばれ、ディエスが造った新たな生命は魔族と呼ばれた。


 スクーアが生み出した知恵ある生命の種"人"は、個の力と環境への対応力が決して強い種でなかった。種の広がりも、基本種族であるヒュム含めてホビット、ドワーフ、エルフの4種族しか広がりを見せなかった種の広がりが薄い多様性に欠ける種が人であり、四つの種族を総じて人族と呼ばれるようになる。

 人族は個の力も適応力も強くない存在だと認識している者多いが故に、個の力ではどうにも出来ない事態が起きても、知恵を絞って解決に当たる機転の良さを見せ、種族が力を合わせ提携する事で、結束と団結による連携の力を生み出し、その力を持って事態に対応することで幾多の危機を乗り越える力を生み出せる力を持っているのが人族の強さであった。

 また種の多様性が薄い種族であると言う事は、種が同じあれば他の種族であったとしても、同族間の相互理解が早い種であった事も、結束と団結の力を生み出せる要素となった。

 また個の力の弱さと環境適応能力の弱さをないがしろにせず、己を限界以上に鍛える術を探求する探究心も優れてもおり、弱い部分は道具を使って補うという機転と応用力にも優れており、個が弱いが故に、次の世代を多く残す力にも優れた種が人という存在でもあった。

 

 魔造神ディエスが生み出した”ダイモン”は、環境の変化に対して適応が早く、それに伴って基本種族であるデモンから、ゴブリン、オーク、オーガー、ゴーレム、フェアリー、ドラゴン等広大な種の広がりを見せる多様性に溢れる種であるダイモンは、広大に広がる種族を総じて魔族と呼ばれるようになる。

 魔族の示した多様な広がりは、同じ魔族であったとしても、見た目から同じ魔族であると共通点を見出す事が出来ないほど、見た目に差がある新たな種族が次々と生まれ広がる程であった。

 そして魔族は一個の力が非常に優れている種族が多い事も特徴であった。しかし一個が優れている者が多い種族であればあるほど、その優れた力を次の世代を残す力が弱くなる種でもあった。

 また広がる種の多様性によって生じる差は、外見に留まらずといった個の持つ能力の差も大きな差が生まれた。その事が仇となり、同じ魔族同士でも種族が違えば、相手の理解が深まりにくいが故に不和を生みやすいという、相互理解を深める事に時間を要する種でもあった。

 相手への理解が進みにくいが故に、団結が必要となった際、同じ魔族であっても種族が違えば結束し、団結の力を生み出す事が滅多に出来ない団結と結束の力が弱い事も、魔族の特徴だった。


 こうして二柱の神は、知恵ある生命である人族と魔族をを造った創造主、人造神と魔造神となった。


 異なる神から生み出され、見た目も特徴も全く違う二つの種族。

 時にはお互いをののしり合い、小競り合う時もあった。だが時には互いを助け、互いを認め合う時もあった。

 こうして二つの種は紆余曲折の時あれど、順風満帆な時もアリ。様々な体験と経験を共有し合った事で、魔族と人族は互いの種族の違いを知り、互いの違いを受け入れようと努力した。

 二つの種は長い時間をかけて互いを少しずつ理解する事で、新たな価値観を取り入れ、互いを高め合った。

 その結果、二つの種族は世界は生みの親である二柱の神の願った新たな多様性と可能性の芽を感じさせるより良い世界へと進む光の道を、二柱の神に魅せていた。


 この結果に二柱の神は気を良くし、もっと世界をより良い更なる高み押し上げるべきだとお互いに進言し始めた。

 そしてこの世界をより良くする為に、この世界を統べ、この世界に住まう全ての者を更なる高みの世界に導く事の出来る可能性を持つ新たな生命をお互い求めだす。

 しかし、その新たな生命をも求めた時、二柱神の意見は大きく分かれた。


 人造神スクーアは言った!


 「我の造りし優秀な人から生まれた人族こそ、世界を率いてより良い世界を作る可能性を持っているのだ!!」と


 魔造神ディエスは言った!


 「馬鹿を言うな!我の造ったデイモンから広がった魔族こそ、世界をより良く導く生命を生み出せる可能性を持つのだ!!」と


 こうしてスクディエアスに降り立った二柱の神は、初めてこの世界をより良くする方針で意見が分かれた!

 二柱の神はお互い自分の造った知恵ある者こそ、世界をより良く導けると者だと主張し続け、長きに渡って言い争いを続けた。

 終わりの見えない神同士の言い争いが続き、どれ程の時が経ったか分からないが、ある時二柱の神は同じ結論に達した。そう


 『このスクディエアスで最後に残り、この世界を統べたどちらかの種族が、より良い世界へと導ける可能性を持った新たな生命の種となり得るのだ』という結論に!


 人族と魔族。

 二つの種の間で時々小さなイザコザはあれど、互いを認め、尊重し合い、お互いの領分に上手く折り合いをつける事で、お互い平和を維持して来た。

 だが、その平和な時も、ほんの僅に崩れ始める時が来る。


 それは二種族の生みの親である二柱神が、言い争いの中から先の結論に達した時と同時だった。

 二柱の神が言い争いの中で生み出した答えは、強烈な思念となってスクディアエス中に広がったのだ!

 二柱神の造りし二つの種族は、お互い誰一人その思念を感じる事も気が付く事もなかった。

 だが、創造主の思念の影響は確実に受けてしまっていた。

 こうして魔族と人族、お互い知らぬ間に勝手に根付かされたある思想は、もう一方の種族に対して、ある小さなわだかまりを生むようになる。


 『奴らより我らの方が優れた種族なのではないか?』

 というわだかまりとして...


 こうしてお互い知らぬ間に根付かされた小さな蟠りは、今までと同じように起きた小さなイザコザを期に、以前より互いを見下し、罵しり合いだした。負の感情が二つの種に、以前より少しだけ強く表れるようになってしまったことで、以前より魔族と人族の間に、小さなイザコザが目立つようになってきた。

 それから今までは小さな問題で済んだいた事が、以前より少しずつ大きな問題へと変わるようになった事で、人族と魔族は以前より少しだけ強く争う事が増え始めた。

 こうして小さな争いが時が経つにつれ益々増えた事で、争いの増える勢いは増え続けた。


 こうして小さな蟠りが生うみだした小さな負の波紋は、いつしか取り返しのつかないほど強大な波紋としてスクディエアス中へと広がりきってしまったのだ。そう!

 人族と魔族の全面戦争という取り返しのつかないほど大きな波紋となって!


 これは二柱神によって引き起こされた、人族と魔族の戦争の物語である。

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