4.6日常回

「おい細マッチョ」


 夕方。ちょうど来たとこ。


「あ?」


「おまえだよ細マッチョ。3位とはなんだ3位とは」


「あぁ。運がよかった。まっすぐ突っ込んで、反射神経勝負に持ち込んだ」


「コンピュータ相手に反射神経と動体視力で立ち向かうのは無理でしょ。細マッチョのくせに繊細なプレイしてんじゃないわよ」


「おまえもやってみろよ金髪色白」


「そうなんだよね。肌焼けないんだよね」


「ここの町の人間、みんな肌焼けてるよな」


「うん。気にくわない」


「町のことは好きじゃないのか?」


「まぁね。よく分からない慣習とか、あるし。あれがなければいいひとたちなのに」


 お。

 わたしの番が来た。


「やってみるか。反射神経勝負」


 5。


 4。


 3。


 2。


 1、


「ほら。無理だってコンピュータ相手に反射神経と動体視力は」


 29位。サイドボード表示画面下ぎりぎり。


「そうか。目は俺のほうが上か。そうかそうか」


「目以外は全部わたしのほうが上だろうが。なんでその見た目で目がいいんだよ。筋肉いらんだろ細マッチョが」


「脳がいいんじゃねぇの。べつに筋トレとかやったことないし。なんか、脳からの指令がどうこうってやつきいたことあるな」


「わたしも筋肉つかねぇかなぁ」


「その見た目で?」


「そう」


「金髪色白筋肉美女は無理あるだろ、さすがに」


「わたしに美女要素はねぇんだよこれが。この町の人間みんな美人だから」


「そうか?」


「もうこの話終わり。終わり終わり。ちくしょうめ」


「敬語使えとかやめろとか、わりかし雰囲気で喋ってるよなおまえ」


「わるいかよ」


「いや。慣れてきてはいる」


 彼が、エナジードリンクを少し飲んで。そして、すぐに水。


「なんでその飲み方なの?」


「プロっぽいだろ」


「なんのプロよ」


「プロはプロだ。この話は終わりだな」


「雰囲気で喋りやがる。わたしの真似か?」


「お互い様だな」


「ほら。あなたの番よ」


「よし」


 彼が、人差し指を眺めている。


「なにそれ。指環?」


 右手の人差し指。指環つけてる。


「そう。集中するときはこれを見るんだ」


「話は」


「そう。終わり。本番だ」


 なんとなく。

 お互い、触れられない部分があるなとは、ちょっとだけ、思う。そういうときは、話を終わりにしてしまうのがはやい。

 あまり細マッチョって言わないようにしたほうがいいかもなんて。わたしらしくないか。


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