第10話6
目が覚めた。
「あれ」
どこだっけ。
革張りの椅子。
町役場か。
「おつかれさまでした」
町長。
「プレ大会は」
「大盛況のうちに、無事終了しました」
終了した。よかった。なんとか、終わった。
「すごいですね。そんな状態で、インタビュー後には静かに座ってて。気絶してると分かったのは会場の撤収作業が始まってからですよ」
インタビューから先の記憶がない。
「あ、立ち上がらないでください。もういちど目は閉じて。情報量に徐々に慣らしていったほうがいい」
言われた通りにした。革張りの椅子が、心地よい。それでも。彼女のベッドを、どうしても。思い出してしまう。
「彼女の両親からも、連絡がありました。今、会っているところだそうです」
「今?」
「大会は生放送でしたから」
「生放送」
知らなかった。
自分が倒れたら、大変なことになっていたかもしれない。
「彼女の両親は」
「私が思った以上に近くに住んでましたね。そこそこ近隣の町にいましたよ。安全のために外部には知られていないようでしたが」
そのほうが安全、か。
「彼女。大丈夫かな」
「会って確かめてきたらよいのでは」
そうか。
彼女には。
両親がいて。
この村があって。
「俺はもう、要らないか」
「そんなこと言うと思って、はい。これを」
許可証、のような、何かの書類。
「この村に、あなたを迎え入れます」
「それはそれは」
「諸々、すべて調えてあります。なんなら、今すぐわたしと寝るとかでも」
「ころされるな、それは」
「ええ。ころされます。だから、悲観的にならず、まずは彼女に会ったらいかがでしょうか」
いつもの、ゲームセンターか。
「彼女は、いつも通り夕方には来るでしょう。セキュリティ的にも、王族はあまり長居させられませんし」
「王族はだめで、俺はいいのか」
「ええ。村民の恋人ですから」
「ちょっと、こわいな」
町長。立ち上がろうとして、座った。
「そういえば、あのゲームセンター。あなたがいないうちに、色々と改築しました。人気に合わせて、筐体数とかも増加させました」
「それはよかった」
「2階に、あなたがたの専用スペースもあります。次に行ったら、使ってみてください」
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