第10話5

 本当に、すぐにプレ大会は開催された。

 どうやら、メディアも開発側も待ち焦がれていたらしい。上位ランクも、凄い速度で会場入りしてきた。おそらく、町長がなんらかの手配をしたのだろう。


 会場全体。

 とても明るい。

 メディアもいる。招待枠ながら、観客もいる。


 すでに、頭には負荷がかかっていた。光で目の前もくらくらする。

 それでも。歯をくいしばって、最後まで戦うしかない。


 対戦自体は、すさまじいスピードで終わらせた。自分でも、追い込まれるとすごい力が出るらしい。いままでの自分で、たぶんもっとも強い。今なら、彼女に並ぶまではいかなくても、ある程度競ることはできるだろう。攻守の切り替えが、いままでの比ではなく滑らかだった。頭のいたみと光に対するくらくらで、他のことに気を配る暇がないからかもしれない。


 ただ、椅子には座らないようにした。

 少しこわいのもあったが、それよりも。彼女と一緒にいたときの状態をなるべく再現していたかった。エナジードリンクと水を、ちびちびと飲む。


 決勝も、秒殺で終わった。


 そして、ここからが本番。


『では、優勝者にインタビューを』


 よし。ここからだ。


 ふらつく身体と、いたむ頭をむりやり抑え込んで。もういちど登壇する。


「お願いが。あります」


 目の前が暗くなった。

 倒れたらしい。

 立ち上がった。大丈夫。ちょっと転んだだけ。まだ致命傷じゃない。攻守の切り替えはなめらかに。


「ごめんなさい。うれしくてちょっと転んじゃいました」


 笑顔までは、さすがに作れない。限界が来ている。


「あの。お願いがあります」


 指を。見つめる。指環はないけど。彼女のところに、ある。

 落ち着け。


 5。

 4。

 3。

 2。

 1、


「いつもよく行くゲームセンターに、親を知らない人が、ひとり、います」


 事前に町長から教えられた店名と名前を、言う。まったく知らない店名だけど、まったく知らない名前だけど。おそらく、当人にしか伝わらない暗号のようなものなのだろう。そう信じるしかない。


「おねがいします。これを見ていたら、会いに来て、いただけないでしょうか」


 だめだ。立っていられないぐらいにぐるぐるする。得られる情報が抑えられる分、頭のいたみは収まった。平衡感覚か。角待ちの心でいるしかない。動かない。他に方法はない。


「どうか。会いに来てください。このゲームをやっていて。生きていて。よかったと、教えてやりたいんです。よろしくお願いします」






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