第10話3
「条件?」
「俺のほうの話です」
ここからが、本題。
「彼女は、この村の人間ではないですね?」
いや、町か。まあ、どうでもいい。
「よく分かりましたね」
「分かるも何も」
「そうですね。彼女は肌の色も髪の色も違う」
「彼女の、親を。探したい。彼女は、自分自身をこの村の悪しき慣習で生まれたと思っている」
救ってあげたい。せめて、ここから出してあげたい。
「それは、難しい条件です」
「なぜ」
「彼女は。今から20年前、この町に来ました。この国の人間ですらありません」
この国の人間ですら、ない。たしかに肌は白い。髪も金に近い。
「どういう、ことですか?」
「さっきも説明した通り、この村は閉鎖的で、外部と一切接触がありません。私が村長になってからも、それを変えるつもりはありませんし変わりません。私の許可なく人が増えることはありません」
だから。だからなんだというのだ。
「なので、人を隠すのに好都合なのです」
人を。隠す。
「今から20年前、ちょうど北欧から中東にかけて大きく支配体制が変わる動きがありました」
待て。ちょっと話の規模が大きい。
「その動きを察知した王族が、自分たちの子供を隠匿するように中央に働きかけ、そのなかで、閉鎖的だったこの村に白羽の矢が立ちました。このことは村でも年上しか知らないことです」
「彼女は」
「北欧から中東にかけての、どこかの王族の娘です。どの国かは、私も知りません」
「嘘、ですね」
「あら」
素性を知らない人間を、許可なく増やすことはしない。
「次に嘘をついたら、俺は大会を自体します」
「それは困る」
「では、正直に。おねがいします」
「個人的に調べたことなので、中央に知られないようにお願いします」
「どっちみち、喋りようがありません」
「それも、そうですね」
町長。ちょっと、考えるしぐさ。
「彼女の親は、北欧のある国の王族です。いち早く革命の動きに気付いて、自分の娘を、国とは関係のない場所で幸せに暮らしてほしいと中央に懇願したようです」
北欧か。
「その国は」
「彼女がここに来てから10年後、春に滅びました。王族の行方は不明です」
彼女の親は。
「ただ、革命の起こる10年前からその動きを察知して娘を逃しているので、暗愚な王ではないと思います。おそらく、生きています」
「それを、探し出してください」
「むずかしいです。非常に、むずかしい。それこそ、世界中にメッセージでも出さない限り」
「じゃあ」
大会で言えばいい。
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