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彼は、いなくなった。
夕方に、わたしが起きたときから、もう。
いるかもしれないと思って行ったゲームセンターにも、人がそこそこいるだけだった。彼がいないのに、ゲームする気にはなれなくて。その日は、そのまま帰った。
帰ったら帰ったで、まだ玄関にあるベッドに潜り込んで、彼のことを思い出すだけだった。
彼は、いない。
いなくなってしまった。
彼は、わたしのものじゃない。
それだけが、いたいほど、分かってしまう。
それからは、以前の日常が、なんとなく、戻っていった。
最初は抵抗のあった、彼のいないゲームセンターも。ゆっくりと、慣らしていった。でも、どうしても、夜にひとりで居残ることは、できなかった。彼のことを、思い出すから。
夕方に人ごみのなかを待って、少しだけコンピュータ戦をして。そして、店の電気が消えたらおとなしく帰る。
いつもの日常。
左手の指環だけが、わたしにとっての。すべてだった。
なんとなく思いついて、通信教育で使った以来おしいれにしまっていた、通信端末を出した。
彼は、通信端末を持っていなかった。たぶん、人と同じように、端末内のものを目で追ってしまって頭がいたくなるんだろう。
通信端末。
検索してみる。
alternative7081。
検索結果。
0。
彼は、このゲームに。戻ってきてないのかな。
彼も、どこかで。このゲームを。
続けてたら、いいな。
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