10 ENDmarker.

 彼は、いなくなった。

 夕方に、わたしが起きたときから、もう。


 いるかもしれないと思って行ったゲームセンターにも、人がそこそこいるだけだった。彼がいないのに、ゲームする気にはなれなくて。その日は、そのまま帰った。


 帰ったら帰ったで、まだ玄関にあるベッドに潜り込んで、彼のことを思い出すだけだった。


 彼は、いない。

 いなくなってしまった。

 彼は、わたしのものじゃない。

 それだけが、いたいほど、分かってしまう。


 それからは、以前の日常が、なんとなく、戻っていった。


 最初は抵抗のあった、彼のいないゲームセンターも。ゆっくりと、慣らしていった。でも、どうしても、夜にひとりで居残ることは、できなかった。彼のことを、思い出すから。

 夕方に人ごみのなかを待って、少しだけコンピュータ戦をして。そして、店の電気が消えたらおとなしく帰る。


 いつもの日常。

 左手の指環だけが、わたしにとっての。すべてだった。


 なんとなく思いついて、通信教育で使った以来おしいれにしまっていた、通信端末を出した。

 彼は、通信端末を持っていなかった。たぶん、人と同じように、端末内のものを目で追ってしまって頭がいたくなるんだろう。



 通信端末。


 検索してみる。


 alternative7081。


 検索結果。


 0。


 彼は、このゲームに。戻ってきてないのかな。


 彼も、どこかで。このゲームを。


 続けてたら、いいな。

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