第7話

 何もないわたしの部屋に入った、彼が。

 息を呑むのが、分かった。

 だよね。

 ごめんね。何もなくて。


「どうぞ」


 彼が、うながされるまま、部屋に入る。


「ベッドに」


 躊躇していたので、彼のおしりを蹴っ飛ばした。彼がベッドにもふってなる。


「わたし」


 そう。


「わたしの番」


 ベッドに、わたしも座る。

 彼。もふってなったまま、いつ起き上がったらいいのか分からない感じになってる。おしりの上に乗って、起き上がれなくした。


「そのまま聞いてて。わたしのほうは見ないで」


 そのほうが、いい。

 顔を見られたくは、なかった。

 わたしの話で。彼のかなしい顔を、見たくない。


「ねぇ」


 彼の背中にちょっかいをかけながら。

 どうしようか。迷う。

 いまさら。迷ってる。


「ひとつだけ教えて」


 いじわるな回答に、たどりついてしまった。


「わたしの、せいって。言って」


 だめなわたし。わたしって。だめなやつだったらしい。今までひとと関わってこなかったから。知らなかった。


「わたしのせいなんでしょ。わたしが、あなたを倒しちゃったから。だから」


 彼が。何か言う。ベッドのふかふかに吸い込まれて、聞こえなかったけど。

 分かってしまった。




「いいの。そのまま。わたしのほうを見ないで。聞いてて。それがいい」


 彼の背中。大きい。


「わたし。名前がないの」

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