第4話

「負けた。これは、戦術変えない限り勝てないな」


「戦術変えても、しばらくは無理だと思うけど」


 動きの癖とか、 戦闘の流れとか。そういう部分も含めて、たぶんわたしのほうがぜんぜんつよい。


「ぜんぜん勝てんなこれは」


「まあ、たぶんそうでしょうね」


 相手が、隣の筐体から出ていく。


「え?」


 あ、そうか。勝てないって言われたから心おれちゃったか。


「あ、いや。集中したいんじゃないかと思って」


 あ、そっか。そうだ。いじわるな気持ちでけちょんけちょんに倒してやろうと思ってたんだっけ。そのわりに、勝つことには勝ったけど、ちゃんと対戦にはなってた。けちょんけちょんにはできてない。

 細マッチョ。エナジードリンクと水をまた開けて、ちびちび交互に飲んでる。


「ふぅ」


 コンピュータ戦が始まるぞ。集中しろ、わたし。あんな細マッチョに心を乱されるな。


 5。


 4。


 3。


 2。


 1、


「ううん。だめか」


 21位。さっきとあまり変わらない。集中はしてたけど、なんかこう、別なところで、はまらない部分がある。


「いいか?」


「あ、どうぞ」


 隣でやらず、見てろってことだろう。

 どけて、メインボードのほうに行く。で、椅子に座る。椅子があるから座れば楽なのに。


「お」


 コンピュータ戦。メインボードに映し出される。

 かなり上手くなっていた。さっきのところも、サイト使わずタイミングばっちりで敵を倒せている。

 これは、なかなかいいところまで行くかもしれない。

 エナジードリンク。キャップを開けて、そのキャップで水と合わせて飲んでみる。


「うぇ」


 おいしくない。薄まったエナジードリンクの味がする。そりゃそうか水で薄まってるわけだし。うぇぇ。


「さて。これでどうかな」


 細マッチョが、メインボードのほうに来る。やはり、敬語じゃないほうが見た目にあってる。でも、顔がやつれてる。

 10位。


「うそぉ。トップ10はわたしのベストスコアなのに」


「よしよし。もうちょい上げられるな」


 細マッチョ。エナジードリンクと水を飲もうとして、わたしが飲んでいることに気づく。


「あ。すいません飲みました」


「まずかっただろ」


 うん。まずかった。

 まぁ座れよ。という感じで、椅子の向こうを指す。


「いや、俺は立ってる」


 なんでよ。


「ねぇ。細マッ」


 いやいや。細マッチョはだめだ。わたしが勝手にそう思ってるだけだから。ええと。


「おるたなてぃぶ7081、さん?」


「オルタ7と呼ばれてるけど」


「じゃあ、オル」


「略してんなぁ。そっちは?」


「え、わたし?」


 わたしか。


「わたし名前ないけど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る