第41話 今後の方針
「ユカがここにいると聞いたから来たんだが・・・来てないのか?」
「いや、お主が来るよりはるか前に来たぞ。もう帰ってしまったがな。それで今日は来客は無いと思い寝ていたわけなんじゃが・・・」
「あれ?それならどこかですれ違ってもいいような?」
「帰りはこの道を通るように言ってあるからな。すれ違うことはないぞ」
そう言って俺が持っているのとは違う地図を見せつける。
「すれ違わなかった理由はわかった。でも何故こんな面倒なルートを通らせるのか教えてくれないか?」
「単純よ、他の人にこの場所を特定されにくくするためね。私この街だと少し有名だから変なのが来ると困っちゃうんだよねぇ」
お前が一番変な奴だよという突っ込みを堪える。まぁ確かにその気持ちは分からないでもないからだ。今は同じパーティー仲間なので、できるだけお互いに快適に生活できるように努力しないといけないからな。これくらいの苦労は仕方ないか。
「はぁ、先にそれ言ってくれればこんな疑心暗鬼になりながら来なくてもよかったんだけどなぁ」
「始めて来る場所は少し自信なさそうに来るくらいが自然なのじゃ。言いたいことはあるじゃろうが許してくれ」
これ以上この件について話すのは野暮かと思い、話を変える。
「まぁそういうことにしておくよ。それはそうとユカもここに来たみたいなんだけどなんかしたのか?」
「ふむ?確かにユカもここに来たが・・・もしや!ここの物が気になって仕方ないのか?そうかそうか、お主も中々可愛いところあるのう」
「そんなつもりじゃ・・・いや、確かに変わったものが多いな。適当に良さそうな物教えてくれ」
「なんじゃその頼み方は、もう少し言い方があるだろうに。同じパーティーのメンバーじゃなければ追い出しておるぞ」
「すまない。迂闊だったよ。二度とこんなことは言わないから許してくれ」
確かに今の一言は良くなかったなぁと反省しつつ、そこら中に置いてある一見ガラクタにも見える物の説明を始めたアンナの話を彼女が納得するまで聞き続けた。
「・・・古市で偶然見つけたこれは・・・おっと、もうこんな時間か。すまんすまん、つい話しすぎてしもうた。どこかで止めさせても構わんかったのにお主も変わっておるの」
「失礼なことをしたお詫びでもあるさ。それに中々楽しかったよ」
「ふん、お世辞はええぞ」
お世辞じゃなくて普通に楽しめたんだけどな。きちんと知識のある人が話すのを聞くのは苦痛じゃないし寧ろ興味を惹かれる。アンナもそうなんだけどなぁ。
「じゃあこの辺で俺は帰らせてもらうよ。そういえば聞いてなかったけどまたこの街を出ることになったらついて来てくれるのか?」
そうだろうとは思っていたが一応聞いておかなければならない。パーティー加入時の契約では最低限この街に戻るまで、その後は任意でとなっているからだ。
「おぉ、そのことについてだがな。既にユカ殿には言っておるが今後ともよろしく頼むぞ。ただ出発するときは準備もあるでの、何日か前には知らせて欲しい」
「その辺は安心してくれ。よっぽど急なことでもない限りそういうことはない・・・が今は絶対とは言えないな。最低限すぐに出れる用意はしてもらえると助かる」
むぅっ、と何かを言いたそうにしていたがこちらも流石にこれは譲れないとオーラを出して黙らせた。いや、最初から黙ってはいたんだけど。
その後微妙な空気になってしまったので俺はそそくさとアンナの家を出た。家を出てすぐに後ろから紙を黙って渡された。帰りの地図だろうなと思って広げると案の定だった。
帰り道もよく分からないルートを歩かされ、気づけばもう真っ暗だった。この街は夜でも完全に真っ暗になるのは深夜なので助かったが、慣れない夜道はやはり気を遣う。次来るときはもう少し時間を意識したほうがいいな。
「おかえり~、行き違いだったみたいだけど随分と遅かったわね」
「アンナの自慢のコレクションを色々見せてもらってたらこんな時間になったんだよ」
「へぇ~、私の時もそうだったけど適当に流してたわ。よく聞いてられたわね」
「こういうの聞くのは結構慣れてるんだ。それに結構面白かったぞ」
ふーん、そうとでも言いたげなやや冷たい視線を感じ、この話題はこのくらいでよそうと思った。
しばらく微妙な間が開くかと身構えたがすぐにユカが沈黙を破った。
「それで?これからどうするの?もう休むのは十分じゃない?」
「そうだな、でもそれは俺だけじゃ決めることはできない。アンナは多分ついてくるだろうからまずは君の意見を聞きたい」
少しは考え込むかと思っていたが既に彼女の中では答えが決まっていたのだろう。間髪入れずに
「私は両親を見つけるまで帰るつもりはないわ。例え貴方が諦めたとしてもね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ大丈夫だ。俺もそのつもりはない。その上での意見が欲しい」
「そうね、今のままでは戦力が足りない。というのが問題なのよね。私も貴方もそして多分アンナも人という括りの中では相当強い方でしょうけどそれじゃ駄目なんでしょ?」
「駄目とは言ってないけどできるだけ備えはしておきたいっていうのが本音だな」
「誰かそんな強そうな人・・・そういないわよねぇ。あれ?あんたの両親滅茶苦茶強くなかったっけ?」
「う、確かにそうなんだけど」
「ど?なによ。ふぅん、詳しくは分からないけどやたら来てほしくないってのは伝わってくるね」
「そ、そうなんだ。両親にはスキルのこと嘘ついているからな。ばれている可能性もあるけど」
「はぁ、じゃあ本当にどうしようも無いなら頼るわよ」
「それで、それ以外に何ができるかなんだけど。一先ず魔素をどうにかしないことには始まらないと思う。魔素についての研究結果とかないのかなぁ」
「ここ数百年無かったことの研究を今更している人なんていないでしょうから古い文献・・・もしかしたら私の家にあるかもしれないけど」
「本当か?」
「え、えぇ、スキルの本は無かったけど古い時代の文献みたいなのはあった気はするわ。もちろん中身は見た事ないから分からないけどね」
「それはとても助かる・・・が、ここから取りに戻るのは面倒だな」
「それは任せなさい。実家に手紙を出すわ。街の交易は復活しているからこれでしばらく待てば届くわ」
「金持ちすげぇ・・・ついでにアンナにも何か参考になりそうな本とか無いか聞いてみよう」
「確かにアンナは意外なことを知ってたりするからね。明日また面倒だけど行ってみましょう」
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