第40話 休日
気持ちのいい目覚めだ。何者にも急かされることもなく、ただ起きたい時間に起きれるというものは。
一緒に旅をしている者はいるが今日予定があるわけではない。もちろんこのままだらだらとするわけにはいかないんだが・・・
『おはようございます。非常によく眠れましたね。私もゆっくりと休むことができました』
ここ十数日は俺が寝ている間もアンデレは起きていたのでゆっくり寝ても疲れ十分に取り切れなかったのだ。
(そういえばお前は俺が指示した時以外はずっと起きていたんだもんな。今更だがそんなに寝ないでも大丈夫だったのか?)
『基本的には貴方が大丈夫なうちは大丈夫です。貴方の処理能力が追い付かなくなったときは一時的にスキルを強制終了することも有りますが・・・そのような状況は命にかかわるような状況ですので基本的には発生しませんね』
ふぅん、と何かヒントになる可能性のある状況を急に聞けたことに驚きつつ、ゆっくりと外へ出る準備をする。
『その前にユカ殿に一言かけておいた方がいいのではないでしょうか?昨晩は私も寝ていましたので今の状況が分かりません』
確かに、こっちの世界に来てからはこういう状況になったことが無かったから忘れていたが報連相はどこの世界でも大事なことに変わりはない。
ユカのいる部屋の扉をノックするが返事はない。うーん、寝ているのだろうか?
『流石にそれは無いと思いますよ。鍵がかかっているようですのでどこかに出ているのでしょう。受付の人にでも聞いてみてはどうでしょう?』
俺があまりにも深く眠っていたせいで諦めたと考えるのが自然か。すぐに受付の人に何か伝言を預かっていないか確認した。
「はいはい、ちゃんと受け取ってますよ」
そう言うと後ろの棚にある1枚の紙をこちらへと差し出した。
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いくら呼び掛けても反応がないので街に出ます。
アンナのところにでも行こうかなと思ってます。
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やっぱりそうだったか。それにしても俺はどれくらい深く眠ってたのだろうか。うーん、とりあえずお腹が減ったから何か食べようかな。
諸々の準備を終えた俺は朝食というにはあまりにも遅い食事をとりながらアンナの家の場所の書かれた地図を見ていた。
「ふぅん、ここからだと結構遠いんだな。それにしてもこんな地図・・・事前に誰かに渡すことを考えてないといけないくらいに細かく作ってあるよな。この旅に出る前に作ってたのかな?」
『あまり紙は古くなさそうですがいつ作ったかまではわかりませんね』
やっぱりそうか、まぁそんなことは今はどうでもいいわけだが・・・
「さて、そろそろ行こうかな」
正直一人で行動するわけにもいかないので一先ず他の皆のいる場所に行った方がいい。俺の勘がそう言っている。
地図を見ながら細い道を何度曲がっただろうか、もっと簡単に行く道はありそうなのだが地図にはこの道を通ること!と書かれていたので仕方なくそれに従っている。
30分くらい歩いただろうか、ようやく印のある場所にたどり着く。
周りを見渡してみてもどの建物も薄暗く、人が住んでいるような気配は感じられなかった。
本当にここであっているんだよな?と思いつつ、ギギギと音がする扉をゆっくりと開けた。
外からもなんとなく見えてはいたがお世辞にも手入れが行き届いているとは言えない庭だ。まぁ最近開けることになった原因を作ったのは俺でもあるからそこを攻めるのは違う気もするが・・・
警戒する必要は無いとわかっていても何故か警戒してしまうこの状況から抜け出したく、急いで家の入口まで向かい、ベルを鳴らした。
家の中で何かが鳴り響いているのを聞き、一安心する。もしかしたら壊れているかもしれないという不安が少しばかりあったからだ。
しかし、いくら待っても返事はない。もしかしたら留守なのだろうか?そう心配しだした時、誰かが慌てたかのような足音が聞こえてくる。
勢いよく扉が開かれ、目の前には寝間着を着たアンナが汗だらだらで立っていた。
「ちょっと・・・待たせたわね」
ちょっと?5分くらい待ったような気もするがと言いたくなったがぐっとこらえる。
「いや、もう少し来る時間を選んでくるべきだったかな?まぁこれに書いてなかったしおあいこってことで」
アンナは汗をかきながらもニコっとして上がりなさいと言うかのように合図をすると奥へと歩いていった。
慌てて家の中へと入り、アンナの後を追う。あれ?それじゃあユカは今どこにいるんだ?
そんな疑問をよそにアンナはどんどん奥へと進んでいく。お世辞にもきれいとは言えない部屋を彼女は訳もなく進んでいくがこっちは初めて来たのでそうはいかない。なんとか必死に追いつこうとするので精いっぱいだった。
(来てもいいよって言う割に散らかってるのはどうなんだ?まぁ俺もあまりきれい好きではないんだが・・・)
「その辺の椅子に座るがよい、ゆっくりしていくといいぞ」
俺がどう思っているかなんて気にもしてなさそうだ。
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