第37話 帰り道
帰りの旅路は特に語ることはなかった。行きの時点で魔物に遭遇するリスクがほとんどないことはわかっていたからだ。
そして約束の期日である5日目にサウスの街にたどり着いた。流石に今日までってことになっているので待ってはくれていると思うが・・・
『心配ですか?しかしそう思っても結果は変わりませんよ』
相変わらずの余計な一言を無視しながらユカの両親の館へと歩を進める。
おそるおそる扉を開け、魔素が入ってくる前にすぐ閉める。それにしても開けたままとは不用心だなぁ。
部屋内をぐるりと見まわしてみたが誰もいない。帰ってきたぞーと返事をしても反応はない・・・と思っていたら上の方からドタドタと足音が聞こえてきた。
内心ほっとしつつ、段々と大きくなる足音を楽しみながら聞いていた。
やがてユカとアンナの姿が見える。よかった、2人とも元気そうで。
「遅かったのう、もう少し遅かったら出発しようかと考えていたとこじゃった」
「ほんとよ、心配したんだからね。一体何があったの?」
俺がしゃべる間を与えられない程勢いよく質問攻めにあう。
「ちゃんと話すから、落ち着いて」
まだ戻ったばかりでここは玄関だ。流石にここで立ち話というのも違うのでゆっくり話せる場所に移動してから続きを話すことにした。
「・・・それで?5日待たせたんだから何か得るものはあったんでしょうね?」
「あぁ、一応今回の異変の元凶と思われる物は見つけてきた。見つけただけでどうすることもできなかったけどな」
そしてこの5日間で見たものやその考察について一通り話し終える。ユカは信じられないといった感じで聞いていたがアンナはかなり興味を持ったようで途中話を遮る色々と質問を受けた。できれば最後まで話し終わってからにしてほしいんだけどな・・・
「ふうむ、中々大変じゃったのう。同行できなかったのが悔やまれるわい」
「それで?これからどうするの?食料のこともあるから一度戻らないといけないのは確定でしょうけどまた向かうの?」
「それについてなんだけど・・・まだどうするかは決めてないんだ。一先ずここを出て2人にとって安全な場所まで戻るというのが最優先かな」
「まぁ難しい判断になるじゃろうな。ゆっくり考えるといい」
「また来ることになっても私達はまたここで待つしかないのよね・・・」
「ユカはお主が出て行ってから毎日気が気でなかったからのう。次もとなると心配じゃ」
「ちょっと、そんなことないんだからね。適当なこと言って困らせないで」
本当かどうかとても気になるが真実は分からないままでいるほうがいいのだろう。うん、きっとそうだ。
「と、とにかく。今すぐにでもここを出ようと思うけど準備はできてるよな?」
「もちろんじゃ、お主が戻ってこようとそうでなかろうと出る予定じゃったからの。部屋に荷物を取りに行くだけじゃ」
アンナの発言にユカも頷く。俺としては一息入れたい気持ちもあるがさっさとここを出てしまった方がいい。
2人はすぐに出発の準備を終え、ザボワダの街へと出発した。
道中、アンナに質問攻めにあったが他には何もなく、順調に来た道を進んでいた。
「ちゃんと街としての機能を保ってくれている・・・よな?」
「衛兵の人も頑張るって言ってたから信じてあげないと。それに私達が粗方魔物は狩ったから戻るまでの10日ほどで元の状態に戻るとは思えないわ」
「そうじゃ、あれだけ啖呵を切っていたんじゃ。信じてあげん方が良く無かろうて」
「ううん、確かにそうだな」
迂闊な発言だったかもしれない。2人に色々つつかれたがこれも自業自得として受け入れよう。
「おっ、見えてきたな・・・そういえばここに来るまでにあまり魔物も見なかったなぁ。まぁ行くときもそうだったんだけど」
「その辺も色々考察できることが多いのう。まぁサンプルが少なすぎるから色々と調べてみたいのじゃがそれはそれで面倒じゃのう。お主が魔物を全て狩ってくれれば楽ができるんじゃが」
「まぁ俺の目的ともあっていれば、かな」
「ふむぅ、ならばお主が動きそうな理由を何とか見つけてやろう」
「めんどくさがりなんだかそうじゃないんだか分からないな」
「そういえばお主、スキルの件は良かったのか?儂の友人の場所に行こうと思えば行けたじゃろうに」
「まぁ仕方ないよ。それどころじゃなかったからね。今度行くことがあればしっかり備えてから行くだろうからその時でいいかな」
「・・・お主がそうならいいのじゃが、まぁよい」
何やら間があったがどういうことだろうか。
『おそらく生きていたとしても長期間にわたってあのような場所に居続けているわけがないと思っているのでしょう。私でもそう思いますがそもそも貴方達がサウスの街についた時点で絶望的だったとは思いますがね』
(うーん、確かに。でもこのタイミングで言うってのはアンナもそう思ってたのかなぁ。まぁあの時それを言われてたら行動がブレていたかもしれないなぁ)
思い悩んでいるうちに街の入り口にたどり着いていた。さて、みんな元気にしているかな?
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