第35話 いよいよ怪しくなってきた
解析結果を待つこと1時間。一応身構えてはいたが、動きはなかった。
『終わりました。どうやら辺り一帯が周りから隔離されているようです。出る方法については確証は持てませんが何かしらの強い衝撃を与えれば何か起こりそうです』
ふむぅ、檻に捕らえられたといったところかな?このまま捕まったままでいる気はないし、こいつの言う通りひと暴れしてみますか。
呼吸を整え、目の前の岩に向かい剣を振り下ろす。前の世界であればただ剣を折るだけの自殺行為だがこの世界では魔力がある。魔力を剣に込めることで剣にまとった魔力が触れたものを切り裂くのだ。
(まぁすべての物が切れるってわけじゃないんだけどね)
剣が振り下ろされた岩は真っ二つに割れる。それだけでは先に進めないのでもう何度か切り刻み、細かくなった岩をどけ、新たに現れた岩と対峙する。後はこれの繰り返しだ。
何度か繰り返しているとある時、急に景色が変わる。先ほどまで登っていた光景だ。
(なるほど、ある程度外に出ると一定の場所に戻されるってことか。だがその場所さえわかれば・・・)
再び坂を駆け降り、飛ばされる前の場所に戻る。今度は飛ばされる少し前の位置で立ち止まり、何もない空間を思い切り切り裂いた。
最初は半信半疑で振り下ろしたが魔力をまとった剣が何かにぶつかった感触を得る。非常に強い力で押し返され、危うく手から剣が落ちてしまいそうだったがぐっとこらえ、そのまま振り下ろした。
鉄の板を切り裂くがごとくゆっくりと剣が降りていく。同時に剣が衝突のエネルギーのせいか非常に高温になっていた。このままでは握り続けることはできないので慌てて冷却の魔法を使い事なきを得る。
そして下まで振り下ろす頃に急に剣先が軽くなる。どうやら無事に何かを壊せたようだ。
(どうだ?何か変わったか?)
『もう一度同じ場所に剣を振り下ろしてみて何も起こらなければこのまま進んでみるというのはどうでしょうか?』
(まぁそれが今できることか、)
もう一度先程と同じことをしては見たが今回は何も起きない。罠かもしれないが一先ず状況は変わった。進んでみよう。
一歩、また一歩と慎重に進んでは行くが何も起きない。そしてすぐ岩の壁が立ちはだかった。
ここから気合で外まで行くのは疲れるので一度外に出てまた坂を登ることにした。
そして問題なく、クレーターの頂上へとたどり着く。この景色は見たことがある。これで帰れる。そう思った瞬間、先程まで感じなかった気配を感じ、すぐに戦闘態勢に入る。
しかし、目視はできないためこのまま戦うわけにはいかない。すぐさま感覚強化のスキルを発動させ、五感を研ぎ澄ます。
もう目の前まで来ていることに気付き、慌てて対応するが流石に間に合わずに直撃こそしなかったもののまともに攻撃を受けてしまい、吹き飛ばされる。
クレーターの斜面を転がり落ちていき、やっと止まったかと思えばすぐに追撃の手が迫っていた。
しかし、今度は対処するまでに多少の猶予があったので何とか攻撃をいなすことに成功する。
相手の姿は見えないがおおよその位置はわかる。そして先程のやり取りの中でこちらが向こうの動きを察知できると思ったのだろう、じっと動きを止めてこちらの様子を伺っているようだ。
(このまま逃がしてはくれないだろうなぁ)
『しかし、この状況は困りましたね。接近戦ならばこちらに分がありそうですがああやって距離を取られるとスキルを使っている分こちらが消耗するだけです。相手側にそのことがばれていないであろうことはいいことなんですが・・・』
お互いにじっと睨み合う。いや、向こうが睨んでいるのかなんてわからないんだけど。
このまま時間だけが過ぎていくのは困るが向こうに焦っていると思われるのはまずい。ここは向こうに動いてもらうのがベストなんだが・・・
(勝負をかけようとすれば焦っていると思われるなら逃げればいいのでは?追ってこないならそれでいいしそうでないなら距離を詰めれる可能性が高い。そうとわかれば・・・おい、街の方向はどっちだ?)
『右の方向に真直ぐです。細かな指示は後程でいいでしょう』
よしわかった、早速決行だ。勢いよく右方向へと踏み出し、そのまま真直ぐ進んでいった。
俺の動きに反応して俺の後を追ってきている。なるほど、これは戦うことになりそうだな。
俺は急に立ち止まり、こちらに向かって来る相手との交戦を開始する。再び距離を取る選択をされなかったのは幸いだ。
一層感覚を集中させ、近い距離での攻防を開始する。
(まぁインファイトってやつかな?)
相手の特徴は見えない事だけでそれ以外の動きは凡だった。当然、実際に見えているわけではないので後手に回ることもあるが全体的に俺が優勢なまま戦いを進めれていた。
そして相手側の甘えた動きを見逃さず、攻撃に使っていると思われる部位を切り裂いた。
あまりの痛さに耐えかねたのかついに姿を現した。この辺りで見かけるような魔物のようには見えたが魔物がこんな魔法を使って姿を隠すというのは聞いたことが無い。どちらかと言えば斥候の職がやるような・・・
はっ、とした俺は痛がっている魔物の方を再び見る。もう勝負としては決着がついているので今更何か起きるわけでもない。
そして今まで仮説としてきたことが本当なのか、その確認に入った。
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