第5話 私

 再びカラスが手紙を落とした。



「お前は私である」



 この文章もまた、何か大きなヒントでありそうだ。一方で、もし旅立ちの日の手紙にこう書かれていたら、どう思っただろうか。




 想像に過ぎないが、嫌な気配がしただろう。自分を探しに純粋な気持ちで旅立てただろうか。


 きっと無理だったろう。自分自身からの手紙を受け取るなんて。何か裏があると考える。もしくは、自分の性格上、流れに反抗したかもしれない。




 それを理解しているのだとしたら、やはりこの手紙の送り主は私なのかもしれない。




 さて、そこから読み解けるものはあるか。






 さすがにまだわからないが、この平和な世界と私にもしも関係があるのだとすれば、シンプルな考えが浮かぶ。




 一つは、私が勇者として世界を平和にし、その後、記憶をなくした。




 私だけが記憶をなくしたのか、皆も記憶をなくしたのか。




 勇者であれば多少感謝もされるだろうが、特にされないのが現実だ。



 無名の勇者だったという可能性もあるが。




 さて、もう一つの可能性だが、これを語るにはまだ早いか。

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