マレーシア編④カジノテーブルでピクチャーを叫ぶ

僕は改めてHくんにバカラの説明をした。空いている席に座り、チップをテーブルに用意する。「place your bet」などの合図でベットをし、「no more bet」との合図でベットは終了。ベットが締め切られるとバンカーとプレイヤーに2枚ずつカードが配られ、2枚の合計点数が9に近い方の勝ち。


カードが特定の数字だった場合、カードがもう一枚引かれる。プレイヤーの場合は、合計数字が0から5だったときは両者1枚ずつ。バンカーは合計数字が0から2の場合、両者に1枚ずつ追加される。


参加者は、バンカーとプレイヤーのどちらが勝つかを予想して賭ける。バンカーが勝利すると、バンカーに賭けていた人の配当から5%の手数料が取られてしまう。引き分けに賭ける場合は「タイ」のところにチップを置く。


プレイヤーは2倍、バンカーは手数料を引いて1.95倍、タイは8倍。タイは当てれば強い。


「じゃあプレイヤー一択だね」

「僕もそう思うよ」


偶然隣り合った席が空いていたため、僕らはまた隣に座る。ゲームの途中だったため見送り、次のゲームで勝負が開始した。


「place your bet」


僕は前回の悔しさもあり、100MYRをプレイヤーに賭けた。Hくんは50MYR。やがてベットが締め切られ、カードが配られる。このラウンドで最も賭け金が高かったのは僕だったため、スクイーズの権利を得た。


プレイヤーの1枚目は3だった。バンカーの1枚目は6。


カードに視線が集まる中、僕はゆっくりとカードを絞る。数字が見えないように指で隠し、絵札かどうかを見る。ハートの上部分が並んでいるのが見えた。絵札ではない。スートが近く隣り合っていたため、5以上の可能性が高い。


思い切り捲ると、プレイヤーの2枚目は5。合計8点だ。この時点で、追加のカードが無いことが決定した。


さて、問題のバンカーの2枚目。3が出ればプレイヤーの負けとなる。


数字を隠して捲ると、絵札のようだった。この時点で確定したため、カードを全員に見えるようにテーブルに裏返す。Jだ。絵札は0として扱われるため、バンカーは6。


プレイヤーの勝利。2倍配当なので、僕は100MYRのプラスを得た。


「結構ドキドキするね、これ」

「捲るのクソ楽しい」

「次多めにベットしようかな」


僕は次のゲームもプレイヤーに100MYRを賭ける。するとHくんは、200MYR賭けてきた。どんだけスクイーズがしたいんだ。ほかの人はミニマムで賭けており、スクイーズの権利はHくんが握ることになった。


プレイヤーの1枚目は9、バンカーは1。


絵札が出れば、ナチュラルで勝ちになるかタイになるかの二択だ。


Hくんが見よう見まねで数字を指で隠し、ゆっくりゆっくりと捲る。まず自分だけ見て少しのリアクションをし、周囲をざわつかせた。その後、一気に捲る。


K!絵札!


これはあまりに強い。


場も大盛り上がり。ここからタイになることはなかなかないだろうと、プレイヤーに賭けていた面々には安堵の表情が浮かんでいるように見える。僕も安心して、息をついた。


バンカーの2枚目は、4。合計9対5で、プレイヤーの勝利だ。


僕は100MYR、Hくんは200MYRのプラス。


さてどうしたものか。ここまでプレイヤーのナチュラル勝利が2回続いている。見送ったゲームではバンカーが勝っていたが、どちらが勝ってもおかしくはなさそうだ。


しかし、僕は一点賭けこそ正義だと思っている。プレイヤーに100MYRを賭ける。Hくんは、バンカーに50MYRを賭けた。


僕らに触発されたのか、徐々に場の賭け金が上がってくる。150MYRを出した人がスクイーズの権利を得た。


プレイヤーの1枚目は、2。

2枚目は、1だった。

合計は3。


バンカーの1枚目は、4。

2枚目は、3。

合計は7。


3枚目が配られる。


プレイヤーの3枚目は、絵札。

合計は3になった。

バンカーの2枚の合計が7なので、バンカーは3枚目は引かない。


プレイヤーの負け。僕は100MYRを失い、Hくんは50MYRを得る。


僕はプレイヤーに200MYRを賭け、Hくんはバンカーに50MYRを賭けた。僕は、バカラでは負けたら賭け金を2倍にしようと思っていた。そうすれば、連敗しても一度勝利すれば損失を回収しつつ、プラスになる。幸い資金は豊富にあるのだから、活用しなければ意味がない。


僕がスクイーズ権を得た。


プレイヤー1枚目:6

プレイヤー2枚目:9

合計:5


バンカー1枚目:絵札

バンカー2枚目:5

合計:5


ここまではタイだが、プレイヤーが5ポイント、バンカーが5ポイントのときは3枚目を引くことになる。


プレイヤー3枚目:1

バンカー3枚目:3


バンカーの勝利。


続いて、僕の賭け金は400MYR。もちろんプレイヤー。Hくんはプレイヤーに150MYR。


プレイヤーの合計:8

バンカーの合計:8


まさかのタイ。こんな高得点でタイになることもあるのか。どんどん釣り上がる賭け金に恐怖を感じるが、ここで引いてしまえばすべてがパーになる。Hくんが「え、まじで?まだやるの?」と言っているが、気にしない。


800MYRをプレイヤーにベット。


流石に少しだけ注目が集まりはじめた。みんな割と少額ベットしてるからね。しょうがないね。


プレイヤーの1枚目:9

バンカーの1枚目:6


おっと。ここに来て、一番盛り上がる数字を引いてしまった。絵札なら最高得点、それ以外なら点数が下がる悪魔の数字だ。手汗をかきつつ、2枚目を絞る。まずは自分にだけ見えるように。あれ?スートが並んでない? もう少し絞る。


そして僕はテーブルに思い切りカードを出した。


「ピクチャーーー!!!!!」

「hooooo!!!」


これには大盛りあがり。ほとんど勝ち確定のようなものだ。あとはバンカーが3さえ出さなければいい。


バンカーは少し早めに絞った。思わずニヤニヤとしてしまう。


「ピクチャー!!!!」


両方とも2枚目が絵札。バカラでは絵札をピクチャーと呼ぶ。こういう場面では叫ぶ人も結構いるらしい。


僕は800MYRの配当をゲットした。これまでの損失額は「100・200・400」の合計700だから、100MYRのプラスになる。


しかし、僕は物足りなさを覚えていた。800MYRという大金を賭けたのに、収支が100MYRプラス? 足りねえよなあ! 血湧き肉躍るような盛り上がりが欲しくなり、僕はその渇望のままに、同じことをタイで行うことにした。


まずは賭け金をリセットし、100MYRをタイにベット!


タイは出る確率が低い。当然、連敗も積み重なり、賭け金を2倍にする方法だと最終的な賭け金はどえらいことになりかねない。


しかし、8倍配当。損失を回収したうえで、一気に大幅プラスになる。


僕は残り資金すべてを投げ売ってでも、ここでライバルたちに一気にさをつけようと考えた。


現在の総資金:4671MYR。

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