みなしごたちの夜更けから

実験レポートNo.1 ～『消えた村』～

まず、最初に記載しておくが、当実験体は精神的に幼く、言葉がやや抽象的な傾向が見られる。そのため、発言の解釈には十分な注意が必要であり、カウンセラー又は児童保護職による再解釈および当実験体の精神的なケアが必須であると思われる。

(　 )《かっこ》―心的ストレスにより心内のイメージが具現化したものと推測。

括弧（かっこ）以外―実験体又はその親族による発言と推測。

(又、当実験体には比嘉山千秋という実姉が存在し、以降「アキ姉」は恐らくその人物と同一人物と考えてよい)

以下、実験体記憶サンプル(ノイズ処理済み)　治験ID：130 177 130 237 130 162

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(複数の子供の笑い声)

やめて

きたないんだよ

わたしのかおは．

だって、みんな　いつも

やだ

いいえ、きたなくなんかないわ。

いつもいっているでしょう。

貴方の心は純真そのものなんだから。

見た目を気にしろというなら人間は他の動物たちと姿形が同じでないことを恥ずべきだわ。

でも．．．アキ姉（ねぇ）、わたし怖いんだよ

少しづつ見える世界が変わっていくのが。

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今ね、もうね。何もみえないんだよ。けど、ひとつだけハッキリとみえる何かがあって。あのね．．．

いいのよ、言ってみなさい。

それはね、みんなの意地悪したいっていう気持ちなの。

それだけが、まるで心臓を痛くするみたいにズキズキするの。

そしたらね、「抑えなきゃ」って体が命令するの。その痛みを。

．．．でも私はそんなことしたくないって。あたまの中では。

でも、そのなんというか、もう頭の中で考えてることが体と一致しないんです。

それがずっと続くとなんだか自分が水の上でプカプカ浮いてしまっているような気分になって。

色々悩んでてもどうでもよくなって。

怠け者になるんですよ。私が。

体の感覚も変になってきて、最近は痛みを感じても傷がシールのようにくっついてしまうので。

体の痛いのはへっちゃらなんです。

でも．．．

やだ

やだ

やだ

やだ

やだ

やだ

な

ん

で

わ

た

し

が

こ

ん

な

め

に

ぁ．．．ぇ、お姉ちゃん．．．？

．．．どうしたの、そんな驚いた顔して。

あなたがイノシシを野生の熊だと勘違いした時みたいにびっくりした顔―

た

す

け

て

だ

れ

か

その、もう私ダメみたいです。だって今アキ姉が一番感じてること、今、、ハッキリとわかるんですよ。

え、それって。

さよならアキ姉。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(音声記録終了)