第3話 絶対に負けない恋愛

期末テストが終わった。

私は、学年順位を二十位上げた。


「咲希どうしたの?急に真面目になったじゃん。」


テスト後、久々に一緒になった帰り道、由衣に聞かれた。


「いやあ、自分でも上がりすぎてビビッてるんだよね。」


まさか、由衣といえど、実際の理由まで言えない。


「そっか・・好きな人でもできたかと思った。」


きっと、彼女にとっては、冗談のような何気ない一言なのだろう。


「ウチが頑張れるとしたら、一輝のためかなあって思うし。」


由衣には、こういう所がある。自分の言葉が誰かに刺さっているのに、それを自覚しない。


「まあ咲希はあんまそういうのないか。」


私は、由衣のその言葉をスルーできなかった。


お前には恋なんて分からない、そう言われているような気がした。


「私だって!」


思わず口走って、でも、続く言葉が見つからないことに気づく。




私は、彼の何でもない




「え?咲希、どうしたの?」


少し驚いたように、由衣が問いかけてくる。


「あ、いや、なんでもない。」


慌てて誤魔化した。


由衣は少し不思議そうにしながらも、会話を続ける。


「あ、でも、咲希にはあの子がいるじゃん。ほら、沖田くん。」


彼の名前を聞いた途端、鼓動が速くなった。


「あの子を彼氏にしちゃいなよ。いいなあ、勝ち確じゃん。」







 家に帰ると、由衣の言葉が蘇った。



「勝ち確じゃん。」


そうだ。彼は、私のことが好きなんだ。


何も焦ることは無い。彼が告白してくるのを待っているだけでいい。




これは、絶対に負けない恋愛だ。

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