12

そのあと、ビンゴがあったり、何人か調子に乗って一発芸とかやりだしたり、だいぶにぎやかになったが、僕と北条は、その輪の中には入れず、傍観者になっていた。

咲丘さんも最後まで女子グループの中にいて、結局ほかのグループとは交わらなかった。

快活な女子が咲丘さんを守っているようでもあった。

快活な女子は”あこ”と呼ばれている。

たまにこちらに目線を送ってくる様な気がした。

咲丘さんがこちらに目線を送ってくるようなことはなかった。

僕など眼中にないのだなと半ば投げやりな気持ちになっていた。

そうなると早くこの会を抜け出して静かなところに行きたくなった。

北条もだいたいおんなじことを考えていたのだろう。


「そろそろ帰ろうか。」

「そうだね。」

「二次会とか面倒だし。」

そういってふたりして出口へ向かった。


会費は先に払ってあったから既に何人かはここを後にしている。

誰も呼び止める者はいなかった。

外は、少し寒くてそろそろコートが必要な季節になっていた。

駅まで無言で歩いた。

改札のところで、ちょっと寄るところがあると言って北条は、家とは逆の方向の電車に乗っていった。

ひとり、電車の中で、咲丘さんの笑顔を思い出して溜息が出た。

高嶺の花だな。思わず声に出しそうになった。

気持ちを切り替えようとチェキ会のことを考えようとしたが、うまく切り替わらない。

またため息がでた。

家についても、もんもんとしてやり切れない気持ちになっていた。


何を期待していたのだろう。

馬鹿だなあと自暴自棄になっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る