11
同期会が先だった。
大きめの居酒屋を貸切って行われた。
咲丘さんもいた。
男子と女子はそれぞれグループを作って固まっていた。
咲丘さんは、女子グループの一番奥にいる。
林がやっぱり主導していた。
さらさらと挨拶のようなことを言って、乾杯となった。
こういったところは卒がない。
会社の行事と違って退屈しない。
すこしづつ男女がばらけだした。
僕はとりあえず北条と話しながら、特に興味がないといった風を装ってまだ残っている女子グループの辺りを見た。
だいぶ距離がある。
北条とも話す話題が尽きたころ、林が回ってきて、
「おいおい、男でしゃべってたってつまらないぞ。」
といって僕と北条の手をひっぱって女子グループの近くまで連れて行った。
抵抗するでもなくなんとなく移動したあと、林が適当に受けるようなことを言って、場をなごまそうとする。
女子のひとりがそれに乗ってちょっとは場がゆるんだ。
その時、咲丘さんと目が合った。
電車の時と違って、表情が穏やかだった。
何かをしゃべりたかったが、間に5人は、人がいる。
咲丘さんの隣にいたさっきの女子が僕に話しかけてきた。
「面接の時同じグループだったよね。」
確かに見覚えがある。
「そういえば。」
「どこ?」
「え!?」
「配属先」
「ああ。xxです。」
快活な女性は苦手だ。
加えて右にいる咲丘さんが気になって話が入ってこない。
「さきおの隣じゃん。」
咲丘さんはにこっと笑った。
初めて笑顔を見た。
ここが話すチャンスだと思ったのに、握手会の時のように舞い上がってしまい、なにもできなかった。
そのあとは、話題が移ってしまった。
"さきお"。そう呼ばれてるのか。
そのうち別の数名がやってきて女子と話だし、僕と北条はまたふたりきりになった。
「かわいい子がいないよね。」
北条は、うまく女子と絡めなかったからか、強がりを言っている。
「そうかな。」
僕は正直にそう返事をした。
北条は、怪訝そうな顔をして、その話題はそれで終わりになった。
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