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それからというもの、出勤して部署の前を通るとき、緊張するようになってしまった。
僕にはななちゃんがいるじゃないか。と自分に言い聞かせてみたものの、あまり効果がなかった。
咲丘さんのことは、ななちゃんよりもよく知らないのに、なぜこんな気持ちになるのか。
僕はちょっと異常なのだろうか。
席についてあれこれ考えていたら、北条に肩を叩かれた。
今度同期の飲み会があるということだった。
僕は心臓の高鳴るのを感じた。
咲丘さんは出席するだろうか。
なんとか話をする機会を作りたい。
そうも思った。
チャンスなのかもしれない。
「誰が企画したんだろう。」
「営業の林あたりだろう。」
「そうかあ。みんな出るのかなあ。」
「どうだろう。最初だから、みんな出てくるかもね。」
その日は、同期会で咲丘さんと何を話すか、なんの話をしたら興味を持ってくれるのか、そんなことを考えて、なかなか仕事が手につかなかった。
あの信号で咲丘さんの人違いを見てから、なんか急激に気持ちが変化した。
ずっと自分の中で咲丘さんのことを思っていたのかもしれない。
電車の時以来そうだったのかもしれない。
一方でななちゃんのことを考えて、他方潜在意識では、咲丘さんのことを思っていたのか。
ちょっと自分が気恥ずかしくなってきた。
なんかそんなことばかり考えていて、こんなんでいいのだろうかと思えた。
今、部屋で限定のウィスキーを飲んでいる。
静かで、物が少ないこの部屋で、僕の頭の中を満たしている二人。
まだ会話もしたことがない女性と2回の握手とその時挨拶程度の会話をした女性。
リアルとアイドル。
同期会もチェキ会も楽しみで待ち遠しくなってきた。
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