7
2回目の握手会は、山本さんと落ち合って会場に向かう約束をした。
10月になっていた。天気がよくて、雲一つない空がきれいだった。
待ち合わせは、駅の改札を出たところだったが人が多くてちょっと離れたところで待った。
いい天気だなあ。空を見上げて深呼吸をしたら気持ちがよかった。
15分前に着いてゆっくり待とうと思っていたが、山本さんはすぐにやってきた。
「サブロー君、早いね。」
もう山本さんにはサブロー君と呼ばれている。
山本さんは、赤いチェックのシャツに紺色の上着を着ていてこの間よりなんかちゃんとしている。
「おしゃれしてませんか。」
「まあね」といって山本さんは先週買った服の説明をしてくれた。
服は自分じゃうまくコーディネイト出来ないから、勇気を出してお店の人に頼んだらしい。
まあ似合っているしいい感じだと思う。
僕は、前回とほぼ同じ格好で来ている。
服は数パターンしか持っていない。
僕も今日のために買おうかちょっと考えたりもしたが、どこの店に行ったらいいかすら思いつかなかった。
会場についた。
雑然としたこの感じをそういえば前回びくびくして歩き回っていたのを思い出した。
今日は、山本さんが居る。
なんか心強い味方が居てすごく幸せな気持ちになった。
ふたりでななちゃんのレーンを探し、今日は少し離れて並ぼうということになった。
近いと会話が聞こえてしまうしそれはやっぱり恥ずかしい。
いざ並ぶとなると二人とも緊張が高まってきて、さっきまで元気に会話をしていたのが嘘みたいに無口になった。
山本さんが先に行った。
しばらくして僕も並んだ。
握手が終わった後、二人並んでしばらく無言で帰り道を歩いた。
山本さんは幸せそうな顔をしている。
少し上気して顔に赤身がさしていた。
「やっぱりななちゃんだね。」ぼそっと山本さんが言った。
「そうですね。」それだけで会話は十分だった。
しばらくして、山本さんに促されてコンビニで缶ビールを買った。
ふたりしてベンチを見つけて座って缶ビールを飲んだ。
ビールがこんな爽やかな味に感じたのは今までにないことだった。
「またしばらく会えませんね。」
「うん。」
二人とも余韻に酔いしれていて時々思い出したように会話をする感じだった。
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