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会社に行くには、電車に乗って30分ぐらいかかった。
家から駅まで歩くのと駅から会社まで歩くので1時間ぐらいになる。
その間は、ずっとイヤホンをしてJAZZを聴いている。
アイドルの曲を聴かないわけではないが、通勤にはそぐわないと思っている。
休みの日に外に出るときは、アイドルの曲を聴く。
その日初めて、電車で咲丘さんに会った。
同期で、隣の部署に居るが、話したことがない。
顔と名前を知っているだけだった。彼女の方が先に気づいたらしい。
目線が合った。
少し離れていたので会話は出来ない。
彼女は無表情だった。
僕は反射的にちょこっと頭を下げた。
彼女が反応したのかしないのかわからないぐらいほんの少し頭を下げた。と思う。
同じ電車だったのか。
今までなぜ会わなかったのだろう。
駅に着いて彼女が先に降りて歩いて行った。
追いかけて話しかけようかと一瞬思ったが、一度も話したことがないからそんな勇気は出なかった。
それでも僕の方が歩く速度が早い。
もしかしたら咲丘さんが速度を緩めて僕が話しかけるのを待っているのかもしれない。
いやそんなことはないか。
「なんだなんか楽しそうな顔してる。」
横を向いたら北条だった。
そうだ北条はこの電車だった。
「あっ、おはよう」
北条は咲丘さんに気が付いてないようだ。
僕は咄嗟に北条が咲丘さんに気づかないように話題をふっていた。
「昨日も飲んだよあれ。」
その話題は会社に着くまで続いた。
咲丘さんはいつのまにか居なくなっていた。
会社について隣の部署の前を通る時、咲丘さんが居るか気になったが、顔を向けることはしなかった。
何事もなかったように席に着いた。
それから電車で見かけることはなかった。
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