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まだまだだけど、ななちゃん絡みで知り合いが出来たことが嬉しくて、山本さんの家を出てからも浮かれて歩いていた。

その日は、もうひとつ行くところがあった。

学生の頃に館山さんという先輩がいて、その先輩が今度引っ越しをするからいらなくなった物で必要なものがあれば取りに来いという連絡が先日あった。

今日ちょうど山本さんの家に行く約束をしていてそこから3駅のところだったので

5時ぐらいに行く約束をしていた。缶ビールを飲んだせいで顔が真っ赤になっている。

「おお、来たか。なんだご機嫌か。」

いつものざっくばらんな感じで館山さんは僕を中に入れてくれた。

部屋の中はいかにも引っ越し準備中という感じで雑然としていた。

「なんかすごいことになってますね。」

館山さんは、捨てるつもりだといって、ある一角にある本やら雑貨やらを見せて好きなものがあったら持って行ってくれと言った。

「この棚も要らないかなあ。」

僕は、まっさきに一角の上に乗っかっていた箱入りのグラスを手に取った。

棚もいい感じで欲しかったけど置くとこがない。

「握手会行ったのか。」

館山さんにはななちゃんのことを言ってある。というか、貴重な相談相手だ。

「行きました。会えました。かわいかったです。とっても。」

日本語が変だぞといって館山さんは笑った。

そうか、よかったな、迷子にならなかったか、そうか、仲間も出来たのか、云々。

僕は一気にしゃべった。自分でもびっくりするぐらい色んな話が次から次に出てきた。

館山さんは、お前がうらやましいよ、そんな熱中出来ることがあってと言って笑い、そしてひとつ溜息をついた。

「すいません、僕のことばかりで。引っ越しはいつになったんですか。」


箱入りのグラスを手にして館山さんの家を後にした。

館山さんは最近彼女と別れて、思い出が多すぎるといって今住んでいるところを引っ越すのだった。

こんどは僕の住んでいる駅のとなりの駅なので歩いても行けるかもしれない。

館山さんには申し訳ないけど、近くなって嬉しい。

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