第20話

「ミイラ取りがミイラになっちまったのか。

 いや、墓守がミイラになったのか?

 しかし。これでお前さんも晴れて妻帯者か。」


 横のつながりのある生産系ギルドや商人ギルドのマスターたちと会話をしていると不意に、金槌で殴ったような言葉を吹っ掛けてきた。


「私は彼女に惚れてしまったのだからしょうがない。」


「ひゅーひゅー、言うねえ。

 でも、喫茶店はどうするんだ。

 営業自体は今まで通り行うにしてもあの嬢ちゃんと仲睦まじい姿を見せられたら客足も遠のくぜ。」


「仕事は仕事、どうにかするさ。」


 家庭と仕事は別が望ましいがそうは行かないのが現状。

 半分電撃結婚みたいな奴だし、同棲歴一日でしかも付き合っても居ないのに結婚するって不思議だ。

 人生何があるかわからないって言葉は本当なんだな。


「ねえねえ、エレンツォ!

 この烏賊みたいなのはなに?」


「タツノオトシゴと同じ魚の仲間だけど、貝みたいな味がする、イカノオトシゴって魚。」


「イカノオトシゴ、なんで烏賊?」


「それより大きな沼の主クラスにあたるクラノオトシゴが居るからね。」


「超ファンタジー感。」


「なんだなんだ、そこの嬢ちゃん悪魔の世界から来たわけじゃないのか。」


「法国がやらかした犠牲者だよ。

 全く上層部が手綱を握っていないから馬鹿が野ざらしになる。」


「そうなんですー。」


「ってことは出禁喰らったか。

 ならより荒れるな。」


「私の店はそこまで需要があるのか、いまだに疑問だけど。」


 コンセプトは悪くないとは思う。

 趣味の時間に没頭できる空間がコンセプトの店だ。

 一人の時間を大切にしつつ、趣味仲間も集まりやすくする。

 

 貴族では味わえない青春の日々を提供する喫茶店は確かに国から離脱することが認められた店でしかできないが、やろうと思えば自宅でもできることだし、テキトーな集まりを設ければいいだけだ。

 コーヒーや蕎麦の実も手に入れるのは簡単だ。


「おまえさんが、嫁さんの説得も美味いからだろうに。」


「え?

 その程度の理由?」


「埋め合わせの仕方とかそういうアドバイスが結婚していないのに的確過ぎるんだよ。」


 そもそも女性との会話ってしたことが無いんだよね。

 あくまでも人としての会話の範疇でしかない。

 社会人としてのビジネス会話術でやってるだけなのに、なぜ私はここまで言われるのやら。


「僕てっきりプレイボーイなのかと思ってた。

 夜も初めてだったのに上手だと思ったし。」


「よし、アンズさんデザートでも口にくわえておきなさい。」


 飛んでもねえこと言ってきたので即座に口を閉じさせた。


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スライム道

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