第54話 砦

 森が闇に包まれてから恐らく2日ほど経った。恐らくというのは太陽という1日の経過を伝えるものがないというのもあるが、それよりも魔力の欠乏により意識が朦朧としているということが大きな原因である。

 しかし、この魔力を限界まで使っている状況もそろそろ終えることができそうだ。僕が攻撃の目標として注目を浴びていたことで『デコイ』というスキルを手に入れた。このスキルは知能が低いもしくは激昂している敵を引きつけるというものだ。このスキルで騎士班のみんなの負担が減り、比較的安全になった場所から木の壁を建てていた。

 そして、壁の建築及び『デコイ』で引き寄せた敵の殲滅が終わるといったところで新たな問題が発生した。

「斥候に行ったものから伝令!折れた聖樹の周りを囲むように砦が完成しているということです。」

 この一報は拠点に緊張を走らせた。

「メグルどうするんだ。拠点を構えるということは知能と統率力があるということだ。雑魚敵の中にメグルのスキルには影響されていない奴らもいたからな。共存というのは難しいだろうよ。」

〈そうだね。とりあえずは傍観するしかないが対策をしないわけにもいかないだろうね。

「…それなら俺たちがさらに防御を強くするために建設をする。」

〈うん。それならまずは堀を掘ってほしいかな。壁を乗り越えられないためにも。

「それなら、儂ら農業班にもその作業を手伝わせてくれないかのぉ。土を掘ることは整地をするときにやったから任せてくれんか。」

〈了解。じゃあフユとナツ達に防衛の増強を頼んだ。ルー達素材班とアキ達加工班は武器や地面を掘る道具の製作、ストックまでお願い。

「了解したわ。任せてちょうだい。」

「我が王のために精進させていただきます。」

 みんな、仕事のために一斉に動き出した。相手はなかなかに強そうである。まだ力の一片も見ていないが、斥候が帰ってきて報告を聞いたときに僕もその相手の砦を見たのだが、恐ろしいことに石を積み上げて作られていた。この数日の間にあれほどの大きさの壁を石で作っていたのだから相当な数の労働力があるのだろう。

 攻められても守る術を、そして反撃できるようになにかしなければならないと思った。

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