芦名 & 梅津
「君が芝浦のこと好きになったから別れたいって言った時、私やめとけって言ったよね。芝浦はあんまいい噂聞かなかったしさ、それに私は君のことが好きだったから。愛してたから。
どっちかっていうと後者の理由で君の別れ話を私は断った。でもまさか、殺されるとは思ってなかったけどね。当たり前だろ?私は君や芝浦みたいに曲がりなりにも恋人を殺したりなんて考えは出てこなかったよ。
君に告白した時、私はうんと頷いてもらえてとってもとってもとっても嬉しかったけど、今思えば、君は誰でも良かったんだよね。そこに気付けなかったのは私の一生の不覚かな〜。それで君を芝浦みたいなしょーもない男に取られちゃうなんて本当に不覚だったよ。あ、でも芝浦は君より少しは優しいのかもね?君、埋められた時しっかりはっきり殺されていたよ。君が私を埋めた時、私はまだ生きていたのにね。君はその上から土をかけて……生き埋めだよ。結構、苦しかったんだから。まあ、ミジンコほど芝浦に優しさがあってもアイツは結局どうしようもない男だし、不覚は不覚だ。
でも、まさか一生の不覚をやり直すチャンスを死後に手に入れるなんてね。これもまたびっくりだよね。まさか自分が埋められたすぐ横に自分を殺した恋人が埋められるなんてこと現実的に考えてある?いや、実際あったんだけどさ。あったからこそのこの状況なわけだけど。本当に君の言う通り、奇跡的だよね。こんなこと。
君は周りの人間に少しでも魅力を感じると渡り鳥の様にそちらに惹かれて飛んでいってしまう。そう考えると芝浦もタイミングが悪いな〜。君が芝浦に飽きたタイミングで言っていれば犯罪者にならずに済んだっていうのに。まあ、結果オーライ?私的には。
死んだら梅津、今までみたいにフラフラなんて出来ないよね。土の中で孤独に震えるのは怖いから。魅力も何もここには土と虫しかいないから。そんな極限状態なら君は私を選んでくれると思ってた。実際、そうだった。逃げられない、この世界で優しくされたら、それに縋るしかない。でしょ?
それにしても今回の土砂崩れはちょうど良かったな〜。梅津ともーっとイチャイチャ出来るし、これで芝浦が埋めた場所もめちゃくちゃになったしね。アイツが捕まったり、自白したりしたらすーぐ離れ離れになってしまうのがネックだったんだよ。こんな奇跡、二度とないのにさ。いやー、よかったよかった。本当によかった。
そういえば、私は君が私をあーさんと呼んでくれた時、嬉しかったんだ。君は別に私のことなんて考えてなかったと思うけど。でも私の欠片を君が拾ってくれた気がして、嬉しかったんだ。
でも、今君が私を思い出してくれて、君がこの指輪を覚えていてくれて、恋人を埋めたことを忘れないでいてくれて。
私は最高に嬉しいよ」
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