私 & 梅津
「ここ何処何土土の中何で俺一体どうなって誰か助けて俺死んでるいや生きてる分かんない誰か助けて誰か誰か誰か」
幽霊になった彼は大混乱だった。無理もない。目が覚めて土の中に埋まっていて白骨死体になっていて幽霊になっていたら誰だって混乱するだろう。
しかし、彼は幸運だった。ここに先輩地縛霊がいるのだから。
「落ち着いて。ビークール。焦っても何も良いことはないよ」
「え、あ、貴方は?」
「君と同じ存在、というべきかな。ここに住んでいる地縛霊というやつだ」
「地縛霊……って、やっぱり俺……!」
やはり、ここは先輩として、落ち着いたところを見せなければ。
「まあまあまあ、落ち着いて。落ち着けないのはわかるけど落ち着いて。そうだな……一旦、落ち着くために私に君のことを教えてほしい」
彼は
埋めずなのに埋められてんの?と聞いたら烈火のごとく怒られたが、これは私が悪い。うん、悪いな。素直にごめんなさい、だ。
とにかく、梅津。彼に生前の思い出せる限りのことを思い出してもらうと、彼は私と同じく別れ話が拗れて殺されたらしい。
あの夜、彼を埋めた男は
「いやー、聞けば聞くほどその芝浦って奴は最低な奴だね」
「そうだろ!?俺はアイツのために元々付き合ってた恋人をすてたっていうのに……」
悲しそうな梅津に同調しながら、私は話を進める。
「ほんとにひどい。私も君を埋めようとしている芝浦の蛮行を何とか止めたかったんだけど……残念ながら地縛霊というやつは自由が効かなくてね。自分の骨からは上手く動けないんだ」
「そうなのか……ごめん、アンタにも迷惑かけちゃったみたいで……ところで、アンタは何処にいるんだ?」
確かに、梅津の側からは私の姿は見えないだろう。私は彼に理由を教える。
「下の方を見てみて」
「……ん?なんか白いモノが見えるけど」
「それは私の骨だよ。芝浦は穴を掘る時に私が埋められている近くを掘っていてね。私の骨が君の方に少し出てしまったんだよ。出ている骨が通信機の様な役割をして、私たちは話せているのだろうね。きっとこれがなければ話せないと思う」
「そんな……!俺、こんな暗くて狭い土の中で一人きりなんて……狂っちゃうよ!!」
梅津が激しく狼狽するのが分かる。私は安心させるように優しい声色で話を続ける。
「大丈夫。今はまだこうして話せているだろう?下手なことがない限り、話せなくなることなんてないよ。安心して」
「アンタがそう言うなら……そういえば、アンタアンタって呼ぶのも失礼かな?なんて呼べばいい?」
「うーん、君の好きなようにでいいよ。私は君より随分前に埋められたから生前の記憶に少し曖昧なところがあってね。自分の名前もよくわからないんだ」
「そ、そういうもんなのか?んー、じゃあ、
「え」
私は少し面食らった。
「あ、気に入らなかったか?」
「いいや。うん。君に呼ばれるならそれがいいな。是非、あーさんと呼んでくれ」
「なら良かった。これからよろしく……ってのも変だけど、色々教えてくれ。あーさん」
「うん。よろしく。梅津」
私は笑う。梅津も笑っていた。こうして、奇妙な土の中の同居生活が正しく幕を開けた。
魂は無垢で、綺麗で、力を加えやすいから、気をつけないとな、と私も決意を新たにする。梅津が悪霊とかになっちゃったら悲しいからね。
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