第7話 先生の家①
篠宮先生から家の合鍵をもらってしまった。
スマホのメッセージアプリには、家の住所が送られてきており、今からでも行こうと思えば行ける状態だったりする。
『部屋散らかってるから、今日は来ちゃダメだよ?』
『絶対行きます』
『ダメだってば』
『俺は気にしませんよ』
『私が気にするの』
とはいえ、篠宮先生から今日は来るなとお達しが来ているので、素直に帰宅している。
まぁ、先生はまだ学校に残っているだろうし、バレずに家に行くことは容易いだろう。ただそれは信用問題に関わる。
信頼関係が破綻したら、恋人どころの話じゃないだろうしな。
ともあれ、本格的に先生と付き合うことになってしまったな。
逢引する場所も確定して、いよいよ後に引けない状況である。
法律云々は正直どうだっていいのだけど、先生との交際が発覚した際にくだされるであろう処罰がずっと胸の奥底に引っかかっている。
まぁ最悪のケースばかり考えても仕方ない。
バレないよう最善を尽くしていけばいいだけ。
とはいえ、万が一に備えて、こちらとしてもやっておくべきことはあるだろうな。
そんなことを考えながら、俺はベッドの上で一眠りすることにした。
翌朝。
新学期は早くも三日目を迎え、クラスメイトたちも夏休み気分が抜けてきた印象を受ける。
朝のHR。
俺は頬杖をつきながら、ぼんやりと篠宮先生を見つめる。
やっぱり、こうやってみると印象がまるで違う。
やたらと大きい丸メガネが原因なのは明らかだが、美人なイメージがない。
容姿に着目する以前に、メガネがインパクトを与えていて、その整った容姿に気付きにくい構造になっている。
髪型もシンプルに後ろでひとつにまとめているだけ。まぁ、教師が色気づいてポニーテールとかにしているのもどうかと思うけど。
ともあれ、俺的にはこの方がホッとする。
篠宮先生がメガネを外していれば、異性として狙い始める男子が湧き出そうなものだ。ライバルの出現は避けたいからな。
──なんてことを考えていると、篠宮先生と目があった。
「……というわけで、今日から普段通り午後まで授業だから気合いいれてね」
淡々とHRをこなしつつも、俺にだけわかるように小さく手を振ってきている。
可愛いけど、もう少し危機感を持って欲しいものだ。
俺も小さく手を振り返してしまっているあたり、人のことを言えた立場じゃないのだけど
「じゃ、朝のHRはこれで終わり。あ、そうだ。綾辻くんはちょっとこっち来て」
「へ……あ、はい」
まさかの名指しで呼び出され、ビクッとする俺。
学校内で不用意な接触は避けるよう話したつもりなんだけど。
俺は椅子を引くと、早足で篠宮先生のもとに向かう。
「な、なんですか?」
「あ、うん。今日はウチに来て大丈夫だから」
「え?」
「それだけ。じゃ、授業がんばってね」
ふわりと微笑み、出席簿を片手に篠宮先生は教室を後にしていく。
わ、わざわざ呼び出してまで言う内容だろうか。というか、内容的にはスマホなどを駆使して内密にすべきな気がする。
まぁ堂々としている分、逆に怪しまれないっていうのはあるかもしれないが。
それはそれとして、先生の家にいく権利が与えられ、俺の心臓の鼓動はドクドクと早まっていた。
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