第43話 アルバス、ルルアリアの護衛につく②
ルルアリアに連れ回されること半日。
僕とエレノアはルルアリアの護衛のため、王城から始まり、その後王都の様々なところを駆け回っていた。
今は王城に戻る馬車で一息ついているところだ。
「ふぅ……。まさか、護衛がこんなにハードだったとは」
「アルバス様はほぼ魔法を使いっぱでしたもんね。魔法薬はいりますか?」
「もらいます」
半日間、ほぼずっと
護衛している間、下手に魔法名を唱えることも出来ない。完全無詠唱で魔法を使うと、みるみるうちに魔力がなくなっていく。これは改善しなくてはならないだろう。
「はい、アルバス様、あーん」
「え……、いや、ちょっと流石にエレノアさんもいるし、そういうのは」
「ん? ええぞ。わしは気にせんし、むしろ見たいくらいじゃ。ほれ、やれルルアリア」
「ということです。観念して、あーんしてください」
ルルアリアに肩をガシッと掴まれて、小瓶に入った魔法薬を飲まされそうになる。
この状態も恥ずかしいけれど、あーんなんてもっと恥ずかしい!!
「ええい、なんで抵抗するんですか!? 大人しく飲まれてください……!」
「大丈夫ですよルルアリア王女様! 僕のことなんか気にせずに……エレノアさんも笑ってないで止めてくださいよ!!」
「ほら、あ、あ、ん!!!」
なんでこの人こんなに力が強いんだ……趣味で土いじりやっているからだちくしょう!!
魔法で誤魔化してはいたけど、同年代の男女よりも貧弱な僕は、ルルアリアに抵抗できるはずもなく、そのままあっさりと魔法薬を飲まされることになった。
「女性に力負けして、あげくあーんなんて……二重の屈辱だ」
「アルバス様が抵抗しなければせめて屈辱一つで済みましたのにね」
ええ、全くその通りですね!!
これからは魔法の練習だけではなくて、筋トレも日課にしよう……。
「そういえばルルアリアから聞いたが、アルバス、お主、第一王子に決闘を申し込まれたらしいな」
魔法薬のやり取りをみて笑い終わったエレノアが、まだ笑った後の余韻を声に残しながら僕にそう聞いてきた。
「ええ。それに向けて音属性を改めて練習しなおしていますね」
「なるほどのぅ。それで訓練室を幾つか吹っ飛ばしたと」
うぐ……。
それは忘れて欲しい出来事だ。というか僕が忘れたい。
「第一王子……生意気なこわっぱじゃが、奴は強いぞ。じゃが、アルバスにはいい機会かも知れん。お主は無詠唱との付き合い方を……」
とエレノアが口にしかけた時だ。
馬車が止まり、従者が扉を開ける。どうやら王城に着いたみたいだ。
「……と着いてしもうたか。この話は後じゃな」
「そこで切るんですか。仕方ないこととはいえ」
無詠唱との付き合い方……?
エレノアは一体何を言いかけようとしたのだろうか?
まあでもその話は後だ。今はルルアリアの護衛としての仕事を果たさなくては。
「ルルアリア王女様。お手を」
ルルアリアは微笑みながら、僕の手を握り馬車を降りる。その後に続く形でエレノアも馬車を降りた。
まだここは王城内でも貴族達が出入りしている場所。ここではルルアリアは話すことができない。
「本日の予定はこれにて終了です。お疲れ様でしたルルアリア王女様。お部屋に戻りましょう」
僕の言葉にルルアリアはこくりと頷く。
僕らは王城の中に入り、生活している区画に入る。そこでルルアリアが大きく息を吐いた。
「ふぅ、馬車とここでしか声が出せないのはやはり息苦しいものがありますね」
「ルルアリア王女様の安全のためです。……とあれは?」
僕は視界の端に見慣れない人を見かける。
長身の男性……僕よりも高い、百八は超えてそうだ。ボサボサの黒髪に着崩した服、ベンチで寝転がっているだけなのに、何故か視線を奪われる。
ルルアリアは僕の視線の先に気が付いたのか、彼を見てこう口にする。
「あ、小兄様。また訓練サボっておられるのですか?」
「ああん……? ってルルアリアか。と、お前は……アルバス・グレイフィールドだっけか」
小兄様……ということはルルアリアの兄。そして、またしても僕のことを一方的に知っている人。
ということはこの人は……。
「貴方は……第二王子ですか?」
「お、初対面のはずだがよく分かったな。手短に自己紹介すっと、オレの名前はブレイデン。オレはお前に一つ言わなきゃいけないことがある」
気怠げな印象だったけれど、僕が声をかけると意外にもテンション高めだ。
……それにしても言わなきゃいけないこと?
「お前には感謝してるぜアルバス・グレイフィールド」
……んん? なんで僕は初対面の、それに第二王子から感謝なんかされているんだろうか……?
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