第18話 アルバス、ギルマスと共闘する1

「ワイバーン1体に、魔鳥が9体か。さて、どっちをやる?」


「数が多い方で。ワイバーンは任せます」


「承知した」


 エレノアはワイバーンへ。僕は魔鳥へと向かう。


 ワイバーンの鱗、全長10メートルを超える巨躯を倒すような魔法を僕は持ち合わせていない。


 魔鳥は数こそ多いが、ワイバーンに比べると柔らかく、全長も一メートル半とそこまで大きくない。


衝撃音ショックサウンド


「グェ!?」


 衝撃音で魔鳥の一体を攻撃。魔鳥の腹部が破裂して、地面に落ちる。


「クエエエエ!!!!」


 仲間が倒されたのを確認した魔鳥が叫びを上げる。次の瞬間、魔鳥達は高速で飛び回り、僕を撹乱しながら突進してくる!


障壁音ウォールサウンド


 障壁音を自分の周りに展開して、身を護る。一番早く突っ込んできた一体の魔鳥が、障壁音に激突。


 ゴキン!!


 という音を立てた後、魔鳥の首があらぬ方向へ曲がり、地面に落ちる。


「高速で突っ込むとこうなるのか……」


 魔鳥達は突進するのをやめて、警戒するように空を飛んでいる。


「クエッ! クエッ! クエエッッ!!」


 何かの合図みたいに、魔鳥が叫ぶ。魔鳥達は近くの建物に着地し、建物の一部を鷲掴みにして投げてきた!


「結構コントロールがいいっ! うわっと!」


 障壁音が瓦礫を破壊してくれるが、このままこれを続けられたら厄介だ。


「じゃあ初めて使う魔法で相手だ!」


 僕はスゥゥゥーと大きく息を吸う。山に向かって叫ぶ時と同じように、両手を口の両側に当てて筒のようにする。


「わッッッッ!!!!」


 吸った息を大声にして解き放つ!


 僕の声は、僕の口の直線上にいた魔鳥5体を捉える。


「グェ!?」


 5体の内、3体が腹部を潰されて地面に落下する。2体はダメージこそあるものの、まだ絶命には至っていない。


「完全無詠唱の魔法使ってみたけど、コントロールが難しいなこれ」


 心音詠唱ともう一つ、身音魔法パターンサウンドという魔法の組み合わせによる完全無詠唱の魔法。


 心音詠唱は詠唱を代替する魔法。そして身音魔法は魔法名を代替する魔法だ。自分から発せられる音を、魔法名にすることができるというもの。


 この二つを組み合わせることで、詠唱なし、魔法名なしで魔法が使える。


 僕が今使ったのは衝撃音。大声を出すことをトリガーとしている。発動は完全無詠唱の方が僅かに早い。


 けど魔力もまあまあ使うし、威力のバラつきも大きい。

 遠い魔鳥が倒れていないということは、声の届く距離によって威力が決まるのだろうか……? 普通に衝撃音を使えば、あの距離にいる魔鳥も一撃のはずなのに……。


「ま、いい練習にはなったよ……衝撃音4連!」


 完全無詠唱については試したいことが山ほどある。だが時間もあまりかけていられない。街に被害が出てしまうからだ。


 僕は衝撃音を四回連続で使い、残っている魔鳥を撃ち落とす。魔鳥達が地面で絶命したのを確認して、僕はエレノアの方を見る。


「さて……エレノアさんは……っ!?」


 僕はそこで信じられないものを目にする。


「さて、トカゲ風情よ。次はどの魔法で攻撃されたいか?」


 エレノアの周囲には火の球、水球、小さな竜巻、浮遊する土塊、四大属性をイメージさせるようなものはもちろん、光と闇の球、エレノアの周囲は紫電が弾けている。


「あの人、一体幾つの属性を持っているんだ!?」


 僕の言葉にエレノアがニッと笑った気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る