第17話 アルバス、呪いについて調べる
ルルアリアの治療から翌日。
僕は宿屋の一室で目を覚ます。僕が王都に来てからずっと借りている宿屋だ。
「今日から呪いの調査か……。一体、何から手をつければいいんだろう?」
呪いとそれを得意とする魔法についてはあまり詳しくない。
呪いの魔法を得意とするのは闇や毒属性が主に挙げられる。
だが、僕の周りにもこの属性の発現者はおらず、グレイフィールド家に魔法書もなかった。だから僕もあまり詳しくない。
「呪いについて大図書館で調べてみるか……」
先ずは呪いの概要を知らなくては話が始まらない。大図書館に行けば呪いについて調べることができるだろう。
僕は大図書館に向かう。
***
「あった!」
大図書館で僕は本を見つける。呪いについて書かれた本だ。
僕はそれを手に取って開く。中には呪いの基本的なことが書かれていた。
「呪いを得意とする属性は、闇や毒……。ここは僕の認識と同じ。呪いの効果……、これは重くなれば重くなるほど魔法の難度や、条件が厳しくなるか」
呪いは難しい魔法だ。
ある場所に行かないようにする、ある行動をしにくくする、などの制限をかけるのが一般的な呪い。
そこからある行動をすると毒に侵されるや、ある場所に行くと魔法が使えなくなるみたいな、条件を満たした時にデメリットが付与されるのが、闇や毒属性みたいな呪いを得意とする属性じゃないと使えない高度な呪い。
大きいデメリットを与えるほど、魔力の消費大きくなる。声が出ない、目が見えない、人を殺すみたいな強い呪いは、条件や魔力面から相当扱える人が限られるということだ。
ルルアリアにかけられた呪いは、声が出なくなる呪いと、呪いの治療や声を出せるようにする方法を拒絶する呪いの二つ。
「一人を相手に、複数個の呪いをかけるのは高度な技術が必要と……」
かけるのが難しい呪いを二つ、同時にかけているのだ。それは実質不可能みたいな話だ。一つでもかけるのが難しいのに、二つもかけている。
「でも何で声が出なくなる呪いなんだろ……。殺すじゃだめだったのかな?」
呪いをかけた犯人が呪いに長けているのは確かだ。人を殺す呪いも扱えると考えたら、なんでルルアリアを殺さなかったんだろう? って僕は思う。
ルルアリアの声が出なくなるということに、何か目的でもあったのだろうか?
「分からん……。犯人が何をしたかったのかさっぱりわからん」
「おや、そこにいるのはアルバスじゃないか」
頭を抱えている時だ。聞き覚えのある声が聞こえてくる。僕が顔を上げると、対面の席にギルドマスターのエレノアが座っていた。
「エレノアさん……どうしてここに?」
「ん? いや野暮用でな。アルバスは……ほう? 呪いの勉強でもしているのか?」
エレノアは僕が読んでいた本を見る。
そういえばエレノアは前少し話した印象だと、魔法に詳しい感じだった。
もしかしたら呪いのこととか何か分かるのでは? と思う。
「後学のために呪いの勉強をしておこうと思いまして。ちょっと分からないことがあるので聞いてもいいですか?」
「おお! 向上心があるとは感心感心!! どれどれ、何が分からぬのじゃ?」
「呪いの難度についてです。例えばなんですけど、声が出なくなるや目が見えなくなるみたいな身体機能の一部を制限する呪いと、それを解除させない呪いって併用できるものなんですか?」
「可能だ。じゃが、同時にいくつものの条件を満たさないといけない。接触は確実に必要じゃな」
接触……。ルルアリアに会える人間なんて限られる。となると、王族や中央貴族が犯人なのか?
「魔道具を使えば接触の条件がなくなるとかは?」
「無理じゃ。そんな魔道具は神代まで遡っても存在しないじゃろう。そんな物があれば、暗殺、謀略、なんでもありで世の中のパワーバランスが崩壊するからのぅ」
エレノアの言う通りだ。そもそも魔法を超遠隔で発動すること自体難しいのに、距離関係なしに強力な呪いを発動できたら、世界はもっと混沌としている。
「ふむ、というかアルバス、熱心に呪いについて知りたがっているようじゃが……そうか、音属性ならば呪いを扱えるな」
「へ……? 音属性が呪いを扱える? それってどういう?」
僕が持っている魔法書には、そんな記述はどこにもなかった。使える魔法は幅広いが、呪いの類は記載されていなかったはずだ。
「お主に渡す魔法書を探しているときに偶然、そのような魔法を見つけての。てっきり、知っていて調べているようだが、違うのか?」
「い……いえいえ違います! 初耳ですそんなの!! というかどういう原理ですか。音属性なんて呪いと関係なさそうですよ」
闇や毒属性がイメージ的に呪いと結びつくのはわかる。でも音属性って呪いとは無関係に見えるけど……。
僕が困惑していると、エレノアは得意げな表情で言葉を続ける。
「何、音と呪いは意外と関係性が深い。歴史を辿るとな、こう意外と……待て。何か妙なものを感じる」
「何かって……いや、調べたほうが早いか。
エレノアが話を途中でやめたのを見て、僕は索敵音を放つ。エレノアが感じたという何かを僕も感じ取る。
上空から現れた十体近くの魔物。これは鳥型と……。
「た、大変です!! 北区に突如魔物が!! 中にはワイバーンもいます! すぐに地下室へ避難を!」
大図書館の職員が慌てた様子で叫ぶ。それを聞いた人たちは次々と地下室へと駆け込む。
その様子を流し目で見ていたエレノアは……。
「さて、と。ギルマスとしてこの状況は看過できん。わしはちぃと、奴らをボコってくる。お主はどうする? アルバス」
「放ってはおけません。僕もいきます」
飛行型の魔物。初めて戦うタイプの魔物だけど、被害を食い止めるために僕にもやれることはあるはずだ。
「良い返事じゃ。さて、魔法を使うのは久しいのぉ。少しは骨があるやつだといいんじゃが」
「ギルドマスターの実力、近くで見させてもらいます。さて、行きましょうエレノアさん」
僕らは大図書館を出て、突如出現した魔物達へ向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます