第15話 アルバス、ルルアリアと協力する
ルルアリアといつでも会える権利。王族の一員になることや富や名声を得ることに比べたら少し地味かもしれない。
「これならばアルバス様の自由は保証されます。王族の一員になるわけではありませんからね。アルバス様がそれで良いと言うのであればですが」
変に富や名声を貰うより、ルルアリアの提案の方が僕は好みだ。
別に富や名声を嫌っているわけじゃない。ただ莫大な富を貰っても持て余すし、管理が大変だ。
名声なんて貰ったところで目立つだけだし……、父やアイザックに知られると面倒だ。追放した息子がめちゃめちゃ有名になったと聞いたら、プライドの高い二人は何をしでかすかわからない。
「じゃあルルアリア王女様の提案に乗ります。僕からお願いですけど、なるべく目立たないようにしてくださいね」
「アルバス様の頼みです、最大限努力は致しましょう。しかし、私の身近な人物にアルバス様の存在を伏せるのは難しいかもしれません……」
ルルアリアはどこか申し訳なさそうな表情だ。
ルルアリアと会う以上、事情を知っておいた方がいい人はいるだろう。変な誤解を招かないためにも必要なことだ。
僕は父とアイザックにこのことが耳に入らなければそれでいい。
「ええ、それくらいでしたら大丈夫です」
「ありがとうございます……大変、不躾かと思われますが、アルバス様に一つ頼みごとをしてもよろしいでしょうか?」
ルルアリアは一瞬悩んだみたいな表情を見せたあと、僕にそう聞いてきた。
聞かずに断るのは僕の性に合わないため、僕は無言でコクリと頷く。
「アルバス様、私の声が出なくなった原因を調べてはもらえないでしょうか?」
「声が出なくなった原因……」
ルルアリアが声を失った原因。それは国中の名医という名医が調べても、原因不明で終わってしまった。
「アルバス様は魔法を使った時、何か感じたのではないかと思ったのですが、違いますか?」
ルルアリアの予想は正しい。
ルルアリアに声帯付与を使う時、大量の魔力を消費した。そうしなければ声帯付与の魔法が無効化されていたからだ。
付与系の魔法やあらゆる治療魔法、治療方法を跳ね除けようとする強い力を、僕はあの時感じた。
それを僕は呪いと呼んだ。一部の属性や一部の魔道具があれば、他人にデメリットを付与出来る呪いは存在する。
しかし、魔法を跳ね除けようとする強い呪いをかける方法があるのかと言われると分からない。
「感じました。呪いの類と思われる力を。しかし、ルルアリア王女様に呪いがかけられていた。もしかして、その呪いの原因を探るのですか……?」
「ええ。お願い出来ないでしょうか? アルバス様は一度その呪いを肌で感じているはずです。アルバス様なら、同じ呪いを目の当たりにした時分かるのでは? と思ったのですが」
たしかに同じ呪いと遭遇したら分かるだろう。ルルアリアから感じた呪いの気配みたいなものは忘れたくても忘れられないから。
さらに言うと僕ならば声が出なくなる呪いにかかっても魔法は使える。
心音詠唱があるおかげで魔法を詠唱しなくてもいいし、魔法名を別の音に代替する魔法も完璧ではないにしろある程度会得している。自分限定になるが、完全な無詠唱で声帯付与を使うことは出来るから、万が一のリカバリーも可能だ。
「いいですよ。断る理由もありませんし、ルルアリア王女様の頼みとあらばなおさら断れませんしね」
「私から頼みましたが……本当によろしいのですか? ある意味では私の治療よりも困難かもしれないんですよ?」
ルルアリアは驚いたような表情を見せる。
確かに声帯付与を魔法書で見つけた時、王女様の治療が出来るかも!と思った。しかし、今はできるかどうか分からない。
頼りになるのは呪いの気配らしきものを覚えているということだけだから。
けれど、同時にこうも思う。これは僕にしか出来ないことだと。
もし呪いと遭遇して、声が出なくなる呪いをかけられた場合、僕は自力で何とかできる。しかし他の人は違う。呪いをかけられた時点でほぼ詰みのようなものだ。
「ルルアリア王女様のおかげで魔力はありますし、声が出なくなる呪いは僕の属性ならばある程度対処できます。それに呪いの気配を感じたのが僕だけなら、僕がやるべきことかなと思って……だから僕がやります」
「ありがとうございますアルバス様。私も精一杯協力しますので、いつでも会いに来てください!! いえむしろ、私の方から会いに行きますね!!」
ルルアリア王女様に手をガシッと掴まれながら、僕はその言葉を聞く。
「ルルアリア王女様がそんなに動き回っていいものなんですか……? いや、ダメでしょう絶対に!!」
「どうしてですか! バレないように上手くやりますから、協力させてください!! 私はアルバス様に心を打たれました! これは王女として……いえ、私からお頼みしたのです。私が精一杯努力しなくてどうするんですか!?」
ルルアリアの勢いに飲み込まれそうだ……!!
まあでもルルアリアが協力してくれるならそれはとても心強い。時空属性の魔法は調査の際に役立つかもしれないし、王女としての権限もある。
けれどそれはそれとしてルルアリアが心配だ。王女様なんて命を狙われるし、なんならもう一度呪いをかけてくるやつが出てくるかもしれない。
僕の力だけではルルアリアを護り切れるか不安しかないのだ。
「大丈夫ですよ。私はこう見えて強いんですよぶんぶん!! それに決して無茶なことはしません。アルバス様に助けてもらったんですから」
「ま、まあそういうならお願いしますね。ルルアリア王女様」
「はいっ! よろしくお願いしますねアルバス様!」
僕はルルアリアの勢いに負けて、ルルアリアの協力を受け入れることにするのであった。
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