第9話 アルバス、声帯付与の魔法を練習する
翌日僕は早速、声帯付与の練習に入る。
場所はミスト大森林近辺の平原。
僕は見つけたゴブリンに対して声帯付与を使う。
「【
「ゴブゴブ!! 人間発見ゴブ! ぶっ殺すゴブ!!」
成功! と言いたいけど魔物相手に使うのは物騒だなこれ!!
「【
「ゴブブベェアアアアア!!!!?」
ゴブリンが僕を襲おうとしていたので、衝撃音でトドメを刺しておく。
「魔物の断末魔を聞くのはなんか少し……嫌だな」
今日は声帯付与の実験も兼ねているので、魔物にも使うがこれからは控えよう……。
それから僕はいろんな物や生物に対して声帯付与の魔法を使った。
「オレは草、オレは草、オレは草、光合成キモチイイ」
「ガルルルル、オレは気高いホワイトウルフ。今日も獲物を探して歩いているガルルルルル」
「ウオオオオオオオオレ様は超かっこいい魔剣!! オレ様がいる限り、勝負には負けん!! ウオオオオオオオ!!!」
一人称オレがやたらと多い……。
色々試してみて分かったことがいくつかある。
声帯付与を使ったからと言ってコミュニケーションが取れるわけではないということだ。
僕からしたら魔物や草や魔剣などの声は理解できるが、向こう側からしたらこちらの声は理解できない。これは僕が人間の言葉で話しているからだ。
この点は王女様は人間だから心配するようなことではない。
それよりも心配しなくてはいけないのが、声帯付与の魔法を発動している間、僕の魔力の最大量が減るというところだ。
声帯付与は維持するのに魔力を必要とはしない。ただし、発動している間、魔力の最大値が低くなってしまう。
この最大値が低くなるというデメリットは、対象によって変化する。例えば草や魔剣といった無機物にかけたら最大値は大きく減り、魔物や動物といった知性を持つ生物なら少ししか減らない。
「王女様は人間だから沢山減ることはないと信じたい……」
無機物、有機物、知性のあるなし、それらがデメリットに絡んでいるのは間違いないだろう。恐らく、声帯付与のデメリットは声を与える難度によって上下する。
王女様に使うとしたら、王女様は人間だから声を与える難度は一番低いはずだ。だから多くのデメリットを受ける心配はないと思いたい。
「でもなあ……治療できないって聞くしな。簡単に声を付与することなんて出来るんだろうか?」
声帯付与に可能性を感じている反面、付与できない可能性を考えてしまう。付与系の魔法は条件によってはかけられない場合もある。
例えば付与を妨害するような魔法や呪いがかけられている場合とか。
これだけ治療が遅々として進まないんだ。その可能性は頭の片隅に入れておかなくては。
「……もう少し練習して練度だけ上げておこう」
声帯付与の練度さえ上げて、かけられない場合をなるべく無くす。
とにかく色んな物にかけまくって、声帯付与の練度を上げる!
「ちょうどいいところに見つけた!」
僕は近くを走る馬車馬に声帯付与を発動する。
「ヒヒーン。私は働き者の馬車馬。今日も今日とて王都行きが多くて、馬車馬の如く働いておりますヒヒーン。王女様はまだ治っていなくて、近々近隣国家からも治療できる人を探すようですヒヒーン」
馬車馬曰く、まだ王女様の治療は出来ていないらしい。一体何が原因でそんなふうになったのだろうか?
王国中の人を集めて治療を試みているんだ。それを近隣国家まで広げるなんて、国王は相当必死なのだろう。
「けど、一王女のためにそこまでするんだ……」
声が出ないのは魔法使いとしては致命的。魔法使いとしては死んだと言っても過言ではない。なぜなら、完全に魔法を使う手段を失われるのだから。
けど、そこまでするとは思えないというのが素直な感想。貴族で魔法が使えない子供が追放、養子とすげ変わりいなかったことにされるのは珍しくない。それは王族の間でもあるとよく聞く。
「まあ、それは僕に関係ないか。とにかく練習練習!」
国王が何を考えているのか僕には関係ない。今は声帯付与を練習して、王女様の治療が出来る可能性にかける。
その後、僕は日が落ちるまで声帯付与の練習をし続けるのであった。
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