傭兵

 ひとまず話も終わり、詰め所を出た。

 早く戻って、お姉ちゃんにここからの流れの確認を取っておこう。

 中央通りを通って家に戻るべく歩いていると、


「ロモロくん? ロモロくんじゃないの?」


 後ろから声をかけられた。

 振り返ると、大剣を背負った厳つい男性と、狐目で細身の女性が立っていた。

 男性はとても迫力があり、気難しそうに、むっつりと口を真一文字に噤んでいる。

 狐目の女性は隣とは正反対で、話しやすそうな雰囲気があった。


「いやー、一年ぶりだねー。少し大きくなったかな。子供の成長は早いもんだー」

「………」


 狐目の人はヴェネランダさんで、もうひとりの厳つい男性の方はマティアスさん。

 どちらもお父さんとほぼ同年代であろう。というか、お父さんの昔のハンター仲間だ。


「お久しぶりです。ヴェネランダさん、マティアスさんも」

「いやー、礼儀正しいねー。偉い偉い。頭を撫でて上げよう。ほれ、マティアス、ムスッと黙ってないであなたもやりなさいよ」

「……必要ない」


 このふたりは本当に対照的だ。

 かたやお喋りで、かたや無口。

 今は一緒に行動しているらしいけど、お互い疲れないのかな?


「っていうか、ロモロくんどうしたの? 兵士の詰め所から出てきたけど? なんかやらかした?」

「僕は何もしてないですよ。お姉ちゃんたちのやらかしたことの後始末です」

「うっひっひ。ロモロくんも大変だぁ。モニカちゃんは相変わらず落ち着きがないみたいだねー」


 突然、顔をぐいっと近づけてくるヴェネランダさん。

 何かに気付いたかのように目をぱちくりさせている。

 割のいい依頼でも見つけたかのような、そんな楽しそうな顔だった。


「あれぇ? ロモロくん、もしかして――」

「行くぞ」

「おっと。はいはーい」


 途中でマティアスさんが遮るように家に向かうことを促して、僕らを放って歩き出した。

 仕方なさそうにヴェネランダさんもその後をついていく。

 ……なんだろう。ヴェネランダさん、鋭いし、元貴族で魔法師だし、何かに気付かれたのだろうか?


「やれやれ。忙しないねぇ。この時間じゃまだギリギリでアーロンは仕事から帰ってないんじゃないの?」

「なら仕事場に行けばいいことだ」

「時間的に行き違いになるだけだって。まったく、泳いでないと死ぬ魚じゃないんだから。無駄な体力を使う必要もないでしょうに」


 肩を竦めてやれやれと溜息を吐くヴェネランダさん。


「ほら、ロモロくんも何か言ってやって」

「いや、そう言われましても……というか、珍しいですね。お父さんに用事って」

「ま、私はただの付き添いだけどね。用件があるのはマティアスだけだよ。たまには顔出しておかないと、忘れられちゃうしね」

「おふたりはハンター止めた後、傭兵団に身を寄せたでしたっけ。大変そうですね」


 ヴェネランダさんもマティアスさんも、元々はハンターだったが、父やヴァリオさんの引退とともに、同じく引退している。


「最近は平和で大変でもないけど、その分、稼ぎがないもんだから、傭兵団の財務を預かる身としては困りものなんだよねぇ」

「ハンターやめない方がよかったんじゃ」

「んー。考えはしたんだけどねー。どうも私とマティアスだけじゃ注意力が足らなくて。特にマティアスは戦うことと鍛えること以外がてんでダメだから、自分で何でもしなきゃいけないソロハンターには向いてないのよね」

「余計なことは言わなくていい」


 マティアスさんが不満そうに反論してきた。

 しかし、ヴェネランダさんは歯牙にもかけず、話を続ける。


「マティアスは戦闘能力だけならギリ金級って言われてるのにねぇ。銅級レベルならゴリ押しでどうにかなるけど、金級の仕事受けたらモンスターと戦う以前に死ぬって言われてるから」


 じゃあ、ヴェネランダさんは? と言おうかと思ったが、ふたりにも事情は色々あるのだろう。そこに踏み込まなくてもいいか。


「すぐ帰って来ると思いますので、家で待ってもらった方がいいと思いますよ。それに妹も生まれたんで、見ていってもらえると」

「ほー! アーロンってばまた子供をこさえたんだ。お盛んだねぇ」

「子供の前でやめろ」

「ロモロくんは特別だからいいでしょ。もう頭脳は大人っぽいし」

「なんのことです?」

「あら? まだ性教育習ってない?」

「その名前がある書物は読んだことがないですね」


 前世の記憶による知識はあるけど黙っておこう。

 部屋に戻ると、すでに戦場のようだった喧噪は消え、ゾーエお婆さんも含めて全員が帰っていた。

 いるのは説教しているお母さんと、されているお姉ちゃんだけだ。

 そんな中、ネルケはお母さんの腕の中ですぅすぅ寝ている。大物かもしれない。


「お願いだから、もう少し大人しくして頂戴。女らしくとまでは言わないから……」

「はい……ごめんなさい……」


 呆れ気味のお母さんの声に、本気で反省しているお姉ちゃんの声。

 お姉ちゃんにはかなり効いたようで、肩を落として意気消沈している。たまにはいい薬だ。そもそも精神年齢は十七歳のはずなのだから、やるせなさもひとしおだろう。


「お帰り、ロモロ……って、あらまあ。お久しぶりです」

「邪魔をする」

「マーラさん、お久しぶりですー。ちとアーロンの方に野暮用がありまして。その途中でロモロくんに誘われました」

「あらあら。遠慮なさらずに中にどうぞ。あの人もすぐ帰ってくると思いますよ」

「それじゃお言葉に甘えてー。モニカちゃんもおひさー」

「お、お久しぶりです」


 中に入って全員が椅子に座る。

 ただ、お姉ちゃんは少しヴェネランダさんが苦手っぽいんだよね。去年会った時も距離を置いてたし。

 さっき僕がヴェネランダさんの目から感じたものと同じ理由だろうか。


「おー。その子が新しい子かぁ。女の子? 可愛いねえ」

「ええ。無事に産まれてくれました。ネルケって名付けたんですよ」

「……おめでとう」

「もう少し気の利いたこと言いなっての。誰でも言えるようなこと言って」

「いえいえ。ありがとうございます」


 そんな会話の後、晩課の鐘の音と共にお父さんが帰宅した。


「ただいま――おう、マティアス。ヴェネランダも。まだしぶとく生きてるようで何よりだ」

「おひさ、アーロン。遊びに来たよん」

「久しいな、アーロン」

「相変わらずだな、お前らも。で、何か用か? ヴェネランダが遊びってことは用があるのはマティアスだろ」


 マティアスさんはこくりと頷いた。

 そして、顎で外を指し示す。あまり聞かれたくない話ということか。


「……はー。そういう理由かよ」

「お前しかいない」


 用件がそれだけでわかったようだ。マティアスさんとお父さんは部屋を出ていく。


「ヴェネランダさんたちは、いつまで滞在する予定なんですか?」

「太陽が七回昇るぐらいですかねぇ。マティアス次第です。宿屋ももう取ってますしね」

「あら。じゃあ、晩ご飯は宿屋で?」

「特に予定は決めてないんですよ。適当な酒場にでも入ろうかと思ってましたけど」

「それでしたら、ぜひ食べて行って。大したお料理は出せませんけど、野兎の肉も獲れましたから奮発しますよ」

「おお。いいですね。ではお言葉に甘えて。なら、代金は――」

「いえいえ、別にそんな」

「いやいや、一飯のお礼もできなければ私の沽券に関わりますから」


 そう言ってひとつの指輪を差し出してくる。


「これ高いんじゃ……?」

「いやあ、全然。リング部分はただの鉄だし、宝石もついてないしねー。ついてるのはあたしの魔法ですよ。体調をサポートするね。持っておいてください。出産してまだ時間が経ってないなら、まだ気分もよくないでしょう」

「わたしのために?」

「いやいや、偶然ですって」


 この人の場合、偶然とは思えないんだよなぁ。

 そもそもお母さんが子供を産んだことも知っていたんじゃないだろうか。


「おやおや、ロモロくん。察しがいいねぇ」

「僕、何も言ってないんですけど」

「顔でわかっちゃうんだなぁ」

「魔法師だからですか?」

「いやいや、人間観察の賜物だね」

「遠見眼でも持ってるのかってぐらい察しがいいですね……」

「目は細いのに、って思ってるでしょ?」


 図星である。怖いな、この人。軽口も叩けない。

 ヴェネランダさんにからかわれていると、お父さんとマティアスさんの話が終わったのか、ふたりが家の中に戻ってくる。


「ったく、高くつくからな」

「支払いならば問題ない」

「そういう問題じゃねーっての」


 お父さんは少し不満そうというか困り顔だ。面倒な用件でも頼まれたのかもしれない。

 そして、マティアスさんはヴェネランダさんに向き直る。


「帰るぞ、ヴェネランダ」

「あんたの用事が終わっただけじゃない。積もる話ぐらいあるでしょうに」

「ハンターじゃなくなったアーロンと話すことは多くない」

「こっちは晩ご飯をご一緒する約束したのよ」

「……なら、付き合おう」


 この日は来客のふたりを交えての夕食となった。

 お父さんのハンター時代の話で盛り上がり、お姉ちゃんが目を輝かせている。


「やっぱりあの大剣でズバッと一刀に切り伏せるんですよね」

「ああ」

「でも、大剣って使いづらくないんですか? マティアスさんって右腕怪我してるのに」

「なんだ、それは。別に怪我などしていない」

「あれ? 違ったかな……。もう結構前に怪我してたような……」

「お姉ちゃん! 寝ぼけてるんじゃないの? マティアスさんは怪我なんてしてないでしょ」


 今のは間違いなく、お姉ちゃんが言ってはならない台詞だ。

 おそらく、これからマティアスさんは右腕を怪我してしまうのだろう。

 何が原因かはわからないが、いつかどこかで。


 目配せして余計なことを言うなと伝えるが、お姉ちゃんにそんなものは通じなかった。

 マティアスさんやヴェネランダさんにハンター時代の話を振って振って振りまくる。

 もう少し弟の心情を察してほしい。今後のためにも。


「久々に聞いたけど、やっぱりお父さんたちのハンター時代の話は面白いね!」

「久々?」

「……あ、あれー? この前もしなかったっけ?」

「お姉ちゃんは時間間隔が早すぎるんだよ。だから、一日経つと久々だからね」


 またしても、軽率過ぎる。口が軽いというか……。

 お姉ちゃんは今、やり直しているという自覚が足らないのではないだろうか。


「どれだけ憧れようと、ハンターには絶対にしないからな。モニカ」

「うん。わかってる。あたしはハンターにはならないから別にいいんだ。でもお父さんの話が面白いのは仕方ないでしょ?」

「お、おう? まあ、そうだ、な……?」


 お父さんが戸惑っている。最近まではハンターになるならないで喧嘩までしてたのに、いきなり物分かりがよくなったからね……。

 代わりに勇者になる! と言ったら、どんな顔するだろうか。


「なんだぁ。モニカちゃん、ハンターにならないの? 絶対向いてると思ったのに」

「ヴェネランダ。余計なことを言うな」

「あたし、別の目的ができましたから」

「んん? なんだ、モニカ。お父さん、初耳だぞ」

「なーいしょ」

「お、おい!? 教えてくれないのか?」

「あはははは! アーロンってば、娘に嫌われてるー。そのうち、お父さん近づかないでとか言われるわね、これは」

「具体的過ぎる話はやめろ!」


 盛り上がっている中、マティアスさんはずっと無口で食べている。

 ただ、この人はマズいものは口にしようとしないらしいので、お母さんの料理が美味しいんだろうな。黙々と食べてるし。


「馳走になった。借りはいつか返す」


 食事が終わるやいなや、マティアスさんは立ち上がる。

 周囲の会話などお構いなしだ。


「ホント、気が利かないやつね。もっと話せることはあるでしょうに」

「……しばらく滞在するのだから、話す機会はいくらでもあるだろう」


 それがマティアスさんなりの気遣いだったのかもしれない。

 ただ、マティアスさんはすぐに顔を逸らして部屋から出て行ってしまった。


「おっと、アーロン。ちょいとロモロくん貸してもらえる?」

「おい。ロモロに何吹き込むつもりだ」

「まーまー。悪いようにはしないから」

「ロモロがいいならいいぞ」

「それだと断りにくいじゃないですか……」


 ちょいちょい手招きされて、僕は仕方なく部屋を出る。暖炉の熱は建物全体に広がっているので、ここでも寒くはないけど。

 ヴェネランダさんは新しい玩具でも手に入れたかのような目をしてて、とても嫌な予感がした。


「そんなあからさまに、面倒事を押しつけられてたまるかって顔されると傷付くなー」

「……何の用ですか」

「いやー。聞きたいことがあるだけよ。私ってば気になることは確かめないと、気が済まないたちだから」


 それはいいけど、問題はなぜお父さんを外したかだ。

 そして、もうひとつ。マティアスさんが律儀に残っていることも気になる。


「ロモロくん、何か隠し事してない?」

「……何をですか?」

「おやおや? 発汗量と心拍数が少し上がったかな?」

「……隠し事なんて、誰にだってあると思いますけど」

「ま。子供らしくない答えね。私、そういうの大好きだけど」


 こっちのことをすべてわかってるんじゃないだろうか。

 この人にかかると、すべてを見透かされてる気分になる。長話すればするほど墓穴を掘ってしまう気がした。


「やーれやれ。子供に腹芸ってのも趣味じゃないし、さっさと本題に入りますか。……ロモロくんさあ。魔法が使えるようになってない?」

「………」

「無言は肯定って意味で取られるよ? 覚えておいた方がいいかな」

「……どうして、それを」

「私は魔法師としては三流なんだけど、ひとつだけ他の魔法師よりも優れてるところがあるの。それがマナの感知。本来、マナは呼び掛けないとその存在がはっきりとわからないけど、私はそれをしなくてもマナがある程度、どういう状態かわかるんだなー」

「僕の周囲に何か異常でもあるんですか?」

「ロモロくんの周囲に、微かなマナが絶えず漂ってるんだよねー。これは一般的な平民にはあり得ない現象で、魔法を使える者だけに起こるの。マナがいつでも力を貸せるように待機してるっていうのかな。モニカちゃんもすごいけどね」


 お姉ちゃんの方までバレてる。言い訳不可能だった。


「ま、他の魔法師にはわからないから安心して。それにマナが周囲にいることは恩恵もあるから。すこーしだけ体力の回復が早くなるとか怪我しにくくなるとかね」

「それを僕に言う目的は何ですか?」

「いーや、特に。気になるから聞いただけ。アーロンは気付いてなさそうだし。黙っておいた方がいいんでしょ?」

「ま、まあ、それはそうなんですけど……」

「私としては、そっちの方が楽しそうで面白いからね。黙っておいてあげましょう」


 くっくっくと笑うヴェネランダさん。ようやく気付いたけど、この人、僕をからかってるだけだ。

 唇を尖らせると、今度はマティアスさんが僕を見下ろしていた。下手なこと言ったら、殺されそうだと思うぐらい迫力がある。


「ついでだ。もうひとつ、聞いておく」

「な、なんでしょう?」

「南側で微かに感じるモンスターの気配と、お前が兵士の詰め所にいたことには何か関連性があるか?」


 今度こそ、心臓が止まった気がした。

 このふたりは精神に悪すぎる。


「……わかるんですか?」

「マティアスのモンスターを察知する能力は随一だからねー」

「兵長には口止めされてるんで、あんまり言いふらすわけにもいかないんですけど」

「ああ、気にしないでいいよー。言いふらす気もないし、その理由もわかるしね」


 住民に言えない理由も、街道封鎖できない理由も、ふたりは理解しているようだった。

 それからマティアスさんはさらに踏み込んでくる。


「聞きたいのはお前がなぜ兵士の詰め所にいたのか、だ」

「いや、気にするようなことでも……」

「………」


 じっと睨まれる。言えと顔に書いてあった。

 なんでここまで圧力が強いんだろう。関係ない話だと思うんだけど。


「マティアスはロモロくんが心配なのよ。何か変なことに首を突っ込まないかってね」

「……余計なことを言うな。関係ない」


 しかし、マティアスさんは少し気まずそうにしていた。

 もしかして、本当に心配で聞いてくれたのかもしれない。

 まあ、隠すようなことでもないか。


「あー……ちょっと身内の恥みたいなところがあるんですが……」


 掻い摘まんで解説する。

 お姉ちゃんの友人たちが兵士と諍いを起こし、勝ってしまったこと。

 そこにモンスターの噂が立ったら、自分たちでどうにかしようとか思ってしまいそうなこと。


「自殺志願者か?」

「いや、単純に実力を過信してるだけだと思うんですけど」

「十歳の子供が何人いようとモンスターに勝てるわけがない。魔法でもあれば別だが、刃物で鉄を切り裂けるぐらいの芸当ができねば話にならんぞ」

「あんたモンスターのことになると、ホント饒舌になるなー」

「……そんなことは、ない」


 ヴェネランダさんの指摘にマティアスさんが小さく咳払いする。


「お姉ちゃんたちがトラブルにしそうな種を、起こす前に察知できれば面倒がないなって思ってたんですけどね」

「確かに勇んでモンスターを探しに行くのも危ないしねー。何かあったら大変だ」

「それもそうなんですけど、増長の方をどうにかした方がいいかな、と。……待てよ」


 その時、不意にとてもいい考えが閃いた。

 そもそもお姉ちゃんはアダーモに自信をつけさせることを含め、みんなの生命を守るために鍛えたい。

 そして、僕や大人たちはモンスターに興味を惹かれたりすることなく、大人しくしてほしい。

 これができれば、このふたつを一気に解決してしまえる。

 問題は目の前の気難しい人が引き受けてくれるかどうかだけど。


「マティアスさん、ひとつ頼まれてもらえませんか? この街に滞在してる期間だけでいいんですけど」

「……内容と依頼料次第だ」

「お金はないです」

「あんた、子供から金取る気ー?」

「相手が子供だろうと誰だろうと関係ない。それはハンターでも傭兵でも同じだ。無報酬の依頼など責任を放棄されて適当な仕事をされても文句を言えんぞ」


 うーん、こっちから出せるものはないんだよな。

 出世払いで許してくれる相手でもないし。


「ま、ひとまず内容を話してみたらー? 内容次第で依頼料も変わるわけだし」

「そうですね。では、一応。お姉ちゃんを含めて、さっき言った六人を鍛えてもらえませんか? できればモンスターの噂を気に留めることもできなくなるぐらい、疲労させてもらう感じに」

「なるほどねー。動けなくなったら、モンスターどころじゃないもんね」

「あとできれば増長の方をどうにか。それとマティアスさんがいなくなっても、しっかりと鍛えられる育成計画とかがあればなおいいかな、と。みんな、ハンター志望なので」


 これならお姉ちゃんの要望も叶うだろう。アダーモはもちろん、全員が強くなるのだから。

 そう告げると、じっとマティアスさんに睨まれる。

 さすがに引き受けてくれないかなぁと諦めかけていると――。


「どうせ、やることもない。その程度なら構わんだろう。ただし、条件がふたつある」


 引き受けてくれるという意外な返答が返ってきたけど。

 次の日、僕は死ぬほど後悔した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る