商人の娘

「死ぬ……」

「大丈夫だよ、大袈裟だなぁ。マナを通しただけで死んだ人なんていないんだよ?」

「じゃあ僕がその最初になるんだ」


 あれから何時間もの時間をマナを通すことに費やした。

 その度に疲労困憊が積み重なっていく。疲労じゃなくて、疲労困憊が積み重なるのだ。本気で立てない。体力がなくなったとはまた違う、不思議な疲労だ。

 僕は今、お姉ちゃんが座った太腿の上に頭を乗っけて横になっている。


「こういう状況でもマナを通すといいことがあるんだけど」

「悪魔か!」

「何言ってるの。魔族の悪魔とか、こんな優しいもんじゃないからね」

「その勇者ジョークには、どう返せばいいのかわからない……」

「ま、今日は初日だし、これくらいにしておこうか」

「ほっ……」


 やってみて思ったのだけど、マナを通すというのは、なんとなく挨拶回りのようなものかな、という気がしている。

 何度も通されて、身体を巡るマナの質というか、種類みたいなものは朧気にわかってきた。早く通り過ぎようとするマナ、留まろうとするマナ、無軌道なマナ。

 体調次第で、確かに入ってくるマナは変わっていた。お姉ちゃんが生き物だと喩えたのもわかる。

 で、そのマナは身体を通すという挨拶とも言うべき儀式をしなければ、力を貸そうとしないのだろう。逆に言えば、挨拶さえしておけば力を貸してくれる。

 お姉ちゃん曰く、この挨拶が子供のうちにしかできないらしい。理由は不明だけど。


「お姉ちゃん、ずっと子供の頃、マナ通してたの? 辛くなかったの?」

「んー。なんか身体が怠いなーって思ったことはあるけど、辛くはなかったかな。暇さえあれば、よくわからないままマナを通してたし。身体を何かが通ってるって感じて面白かったしね」


 お父さんの言う通り、本当にお姉ちゃんは天才だったりするのだろうか。

 それとも貴族にはこんな人がいっぱいいるのか?


「早くマナを呼び寄せるようになってよ。絶対に一緒に世界を救うんだからね」

「荷が重すぎるし、あんまりピンと来ない」


 ただ、お姉ちゃんの言う通り、貴族になるのだとしたら期待できることがある。

 それは本だ。

 本は非常に高く、平民が買えるようなものじゃない。

 僕が何冊もの本を読めているのは、お父さんの友人であり商人のヴァリオさんのおかげである。来る度に数冊ほど貸してくれるのだ。

 でも、個人的にはもっと本を読みたいんだよね。まだ見ぬ本はたくさんあるだろうし。

 で、貴族になれば読み放題になるのではないか? という淡い欲望があった。


「お姉ちゃんが養子になったっていう貴族の家には本がいっぱいあった?」

「え、どうだったかなぁ……。あたし、そういうとこに近づかなかったし」

「……聞いた僕がバカだったよ」


 もっとも、そうなればそうなったで、今の家族と別れることになるんだけど、僕自身はまだ実感をしていない。体験してないからね。

 ただ流されてるだけのような気もするけど、どっちにしろお姉ちゃんには逆らえないので仕方ない。


「風が気持ちいい……。この街の風って、こんなに心地よかったんだなぁ」


 お姉ちゃんが独りごちる。時たま脈絡もなく、大人っぽいことを言うなぁ。

 過酷な状況で生きてきたからなのだろうか。あのパネトーネの連中を魔法で吹き飛ばした時のように、お姉ちゃんは時折変わる。

 前にお父さんが言ってたっけ。


「孤立無援で飯もない状況だと、精神的に余裕がまったくなくなって、仲間にすら暴言を吐いちまうからな。悲惨な環境は人の性格を蝕んでいくんだよ」


 と、実感を込めて言っていた。僕はそれを感慨深く聞いていたものだ。


「あー、風が甘ければ口の中が甘くなっていいのになぁ……」

「……お姉ちゃんは変わらないね」

「えーっ、変わったってば!」


 言うほど過酷じゃなかったのか。あるいは、お姉ちゃんの精神が呆れるほど図太いのか。案外、後者の気がしてるが、考えたところで答えは出ないだろう。


 姉の太腿を枕に休みながら、少しずつ体調が戻ってきていることを実感していると、遠くから馬車が近づいてきているのがわかった。

 領主のお膝元から少し遠いし、王国内に走る大街道沿いを外れてる街だけど、そこそこ商人や旅人、宣教師、ハンターたちが通る。

 ただ、今回の馬車は知り合いのもののようだった。

 僕たちのいる場所の近くで止まると、ガチャリと扉が音を立てて、ひとりの少女が降りてくる。


「ロモロ! 久しぶりね! お姉様もお久しぶりですわ! ごきげんよう!」


 僕たちの目の前で頭を下げて、元気よく挨拶をしてきたのは、デメトリアと言って隣街に住む僕らの友人で僕と同年代の女の子だ。

 服装は煌びやかで一目で高級だとわかるほどだ。その金髪は絹のようで、太陽の反射で眩しく見えるほど輝かしい。

 そして、もうひとり。馬車からは大人の男性が身体を屈めて出てきた。こちらも派手な服装で目を惹く。山賊からしたら格好の獲物に見えるだろうな。返り討ちに遭うだろうけど。


「デメトリア。少々はしたないですよ」

「ごめんなさい、お父様。でも、久しぶりに会うんですもの。わたくしが少しぐらい羽目を外すのは、予想していたでしょう? 止めなかったお父様の落ち度ですわ」

「やれやれ。口ばかり達者になって……」


 小さく溜息を吐いてから、男性――ヴァリオさんは小さく頭を下げてきた。こちらも金髪だ。デメトリアの髪はヴァリオさん譲りなんだろうな。


「久しぶりだね、モニカ。ロモロも。仲睦まじいことだが、珍しいこともあったものだ」

「寝そべったまま失礼します。ヴァリオさん。身体が怠くて、起き上がれないです」

「ははは、モニカに付き合わされて体力の消耗でもしたかい? それも結構。本を読むのもいいが、体力は資本だからね」

「それは元トレジャーハンターとしての助言ですか?」

「一般論というものだよ。それにしても、君は相変わらず子供とは思えないほど聡明だね。賢者の神子と言われるのも頷ける」

「デメトリアには負けると思いますけど」


 そう言うと、デメトリアは満足そうに笑った。


「そうね。でも、ロモロだってすごいじゃない。姉を立ててくれるのは嬉しいけど」

「あの、ロモロはあたしの弟なんだけど……」

「あと確かに生まれたのはそっちの方が半年ぐらい早いけど、大差ないよね?」

「ロモロ、その言葉は十年早いわ。わたしたちの生きた日数からすれば、半年は無視できない時間よ? 敏いあなたならわかるでしょう?」


 そう言われると、反論できない。

 本当に僕と同い年かと思うぐらい頭がいい。この歳で文字の読み書きはもちろん、計算もできる。特に数字には異様なほど強く、ちょっとした計算ならあっという間に答えを出してしまうのだ。親のヴァリオさんでさえ舌を巻いている。

 僕は街で賢者の神子とか言われてるけど過大評価だ。彼女にこそ、その肩書きは相応しいだろう。


「はー。さすがロモロのお嫁さんだねぇ」

「まだ決まったわけじゃないというか、お父さん同士の軽口で決まっただけだし」


 貴族と違って別に義務があるわけでもないし、政略的なものでもない。

 ただ、僕はデメトリアは憎からず思っているし、彼女もそれは同じだ。ボロ雑巾みたいな平民を気に入る変な御嬢様だなとは思うけど。

 まあ、ヴァリオさんのところは商人でお金持ちだし、悪い話じゃない。


 ……この辺りの話も、貴族の養子になると完全に破談になるな。

 貴族と平民の結婚は本当に極稀だというし。貴族が平民に降下して、結婚というケースだともう少し多くなるけど、微々たるものだろうな。


「さて。アーロンはまだ仕事場ですかね?」

「はい。でも、今日はヴァリオさんが来るのをわかってるから、そろそろ帰ってくると思いますけど」

「とはいっても、彼は仕事に没頭すると時間を忘れるからね」

「よくご存じで。ひとまず家まで案内しますよ。ヴァリオさんの家に比べるのも失礼なレベルですけど」

「ははは、気にしないでください。私があんな家に住めているのもハンター稼業を終えてからの商売が上手くいっただけで、元々はああいう家でアーロンたちと一緒に武器の手入れとかしてましたからね。むしろ、落ち着くんですよ」

「お父さんが怪我をしてハンターを続けられなくなった時、一緒に辞めたんでしたよね」

「ええ。それでこれまで入手してきた財宝を売り払って、元手を手に入れたんですよ」


 ヴァリオさんの商会は領主の御用商人といった大きなものではないが、中規模で幾つかの街に商館を持っている。衣服や日用品を売っていて、なかなか繁盛しているようだ。


「ほら、ロモロ。わたくしの手を取って」

「ありがとう。よいしょっと……」


 デメトリアの手を取ってどうにか立ち上がったが、まだ身体の気怠さは取り切れておらず、お姉ちゃんに肩を貸してもらうことになった。なんだか恥ずかしい……。


「ロモロ。もう少し体力は付けた方がいいですわよ」

「僕は本を読んでたいんだけどな。そういうデメトリアはなんか運動してるの?」

「わたくしは女ですもの。そこまで体力を付ける必要はないわ。でも、手芸や裁縫、料理や洗濯、一通りの家事はこなすようにしてますわよ」

「デメトリアは偉いよ」

「うふふ。負けずに頑張ってくださいね。わたくしの未来の旦那様」


 このままだとデメトリアと破談か。あまり気持ちのいい話じゃないな。

 お姉ちゃんに相談しようにも、この辺りの機微には気付かなさそうだし、どうしたものだろう……。


 特に答えが出ることもなく家に到着すると、ちょうどお父さんが戻ってきたところだった。

 お父さんはヴァリオさんの姿を見ると、嬉しそうにニッと笑った。


「おう、ヴァリオ。丁度、お前から請けた仕事が全部終わったところだ」

「恩に着るよ、アーロン。さっそく見せてもらおうか」

「半分以上は家の中にしまってるんだ。ほら、遠慮せずに入ってくれ」


 それから家の中ではお父さんとヴァリオさんに、お母さんを交えて仕事の話になっていた。ヴァリオさんは汚い家に入っても、嫌な顔ひとつしない。デメトリアも同様だ。


 お父さんが一から作ったのであろう装飾品らしきものをヴァリオさんに渡している。お父さんの職業は鍛冶であり、鉄製品の修復や制作を行っている。

 腕はいいようで、ヴァリオさんも全面的に信用しているようだった。


 そんな横で僕らはデメトリアと歓談に興じていた。


「今回の本はこれね」


 デメトリアが布をするすると解いていくと、五冊の本が目に入る。

 新しい本。これでまた知識が増える。本は読めば読むほど世界が広がるようで面白い。

 本は高価で、たぶんこれだけでうちの家族が一年は暮らせるんじゃないだろうか。全部手書きだから当然だろう。

 今回は学術書が多いようで、娯楽の本が一冊だ。

 特に注文は付けていない。デメトリアが面白いと思った本を持ってきて欲しいと伝えてある。


「じゃ、読んだ本を返すよ。でもごめん。読み終わってない本が一冊あるんだ」

「あら、珍しい。合わなかったかしら?」

「いや、今日読もうと思ったんだけど、お姉ちゃんに付き合わされたから」

「それじゃ仕方ないわね。一冊抜くけど、どれがいいかしら?」

「そんな、むごい!」

「ダメよ。貸すのは五冊までって決めてるでしょ? 規則は規則。ルールは絶対。読み終わってない本を返してもらってもいいですわよ」

「はー……。じゃあ、今回のその娯楽本は諦めるよ」

「残念ですわね。すっごく面白いのに。次に来た時の感想を楽しみにしてましたのよ」

「せっかく諦めたのに、そういうこと言わないでくれる!?」


 くすくすと上品に笑うデメトリア。

 デメトリアとお姉ちゃん、どっちが大人っぽいかで言ったらデメトリアの方だよなぁ。


「それと、これは個人的なお土産ですわ。最近、貴族たちの間で流行っているお菓子なんですの。ロモロ、わかりますか?」


 そう言って取り出しのは小さな布の包み。

 それを丁寧に解いていく。

 クッキーのように見えるけど、生地がきめ細かい。

 前世の記憶に引っかかるものがあった。これは僕も名前を知っている。


「あ。これ、マカロンじゃない? すっごく美味しいんだよね。噛むと粉雪みたいにふわふわでさー」

「あ……」


 僕が答える前にお姉ちゃんが口を挟むと、デメトリアが目をぱちくりとさせた。

 そりゃ驚くだろうな。デメトリアは僕と一緒で、うちのお姉ちゃんの知識を侮ってるところがあったし。


「な、な、な。モニカお姉様? それをどこで?」

「どこでって……………………あ」


 失言したことに気付いたようだ。

 今のお姉ちゃんが知っていていい情報じゃない。


「お姉ちゃん、教会の神父さんか誰かに分けてもらってなかった?」

「そ、そうだ! 確かそう! 似たようなものをもらった気がする!」

「教会に出回るようなものではないと思うのですけど……まあいいですわ。モニカお姉様の場合、あまり考えても意味がない気がしますし」


 お菓子をもらって、マカロンだと言われて騙されたというケースも考えられる。

 貴族で流行ってるってことは、それを真似ようとしている人もいるだろう。その失敗作を食べさせられた……と、デメトリアならこのぐらいは考えていてもおかしくない。

 変な疑いを向けられる心配はなさそうだ。


「合ってますわ。アーモンドを使った一風変わった焼き菓子ですの。さあ、召し上がれ」

「いただきます」


 ひとつ摘まんで口の中に放り込むとクッキーとは明らかに違う食感だった。

 歯が少し触れただけでも、儚く崩れていく。

 砂糖がふんだんに使われているのか、とても甘かった。そして、喉を通ると同時にアーモンドの香味が広がっていく。

 ……これひとつだけで、いくらするんだ? と下世話なことを考えてしまう。ここ数年、塩は安くなってきてるけど、砂糖はずっと高いからね。


「うん。美味しい。やっぱりお菓子を食べてると幸せだなぁ」


 お姉ちゃんはだらしない顔をしている。

 きっと勇者になってからいっぱい食べたのだろうな。

 そんな幸せがいつまで続いたのかはわからないけど。


 雑談に興じていると、教会の鐘が高らかに鳴り響く。日も少しずつ落ち始めていて、いい時間になっている。晩課の鐘だったようだ。楽しい時間は経つのが早い。

 ヴァリオさんもお父さんと話しながら、帰り支度を始めていた。


「アーロン。帰る前に少し聞きたいのですが、知り合いに腕のいい情報屋はいませんか? 売るだけじゃなくて、積極的に入手できるような人がいいですね」

「んー。記憶にねぇなぁ。ツテを当たってみるが期待はするなよ」

「ええ、お願いします。これから色々と面倒なことになりそうですからね」


 ヴァリオさんも大変そうだな。情報屋か。街にいるような人じゃ駄目なのかな?

 ま、いいか。僕には関係のない話だ。


「デメトリアたちは明日には出発するんだよね?」

「ええ、明日の朝早くに出ますから名残惜しいけど、今月はこれでお別れですわね。今日はこちらにある商館の方に泊まる予定ですけど」

「そっか。じゃあね、デメトリア」

「一応聞いておきますけど、次に来る時の本の指定はありまして?」


『デメトリアに任せるよ』と、いつものように返す答えを一旦飲み込んだ。

 デメトリアの持ってくる本に不満があるわけじゃないけど、お姉ちゃんに付いて貴族の養子になるのならば、方向性を変える必要がある。

 得られる知識を漫然と待つのではなく、目的を持って集めた方がいい。時間は有限なのだから。


「貴族についてわかる本と、この国とか隣国とかの情勢がわかるような本はないかな?」

「え……?」


 予想外だったのか、デメトリアが首を傾げる。

 そこに口を挟んできたのはヴァリオさんだ。


「どうしました、ロモロ。なんでまたそんなものを読みたいと?」

「そういうのを知っておけば、戦争になるならないとかを判断できるかな、と。危険だと察したら逃げることもできるし」

「……子供の発想じゃないですよ。さすがは賢者の神子といったところですね」

「そんなんじゃないと思うんですけど……」


 そうなのかなぁ。

 お父さんはなぜかうんうん自慢げに頷いている。親馬鹿だ……。


「我が国を含め、近隣諸国の成り立ちなどでしたら、写しを持っていたはずです。ただ、そんなに多くないですよ」

「それでもあれば読みたいです」

「構いませんが……ただ、ロモロの言う戦争の発生を予見するというのは、領主や騎士たちの噂話の方が近いでしょう。それをまとめたような本などありません」

「そう、ですか」


 よくよく考えれば、そんなことを書き留める人はいないだろう。

 反乱の兆しがあるなど書いたのがバレたら面倒なことになりそうだろうし、書き留める前に報告される。その辺りこそが情報屋の領分だろう。


「ただ、商人からの情報でわかることは結構ありますね。私の商品にはないですが、剣や鎧などは毎回領主の方々と取引されます。その量が突然多くなれば当然――」

「戦争に備えてる?」

「その通りです。もちろん軍需品というのはそれだけではなく、糧食や他の装備も含まれます。馬などもですね。馬がいれば飼い葉も。そういった情報は商人同士の情報網でやり取りされますが」

「差し出がましいお願いなんですけど、それってもらえたりします?」

「残念ですがロモロと言えど、そんな情報を渡すわけにはいきません。こういった情報は商売の種ですからね」


 当然の判断だよね。子供がもらえる情報じゃない。

 しかし、そこで助け船が出た。


「ケチケチせずに教えてやれよ。子供に教えて減るもんじゃねーだろ。なんでロモロに大人の対応してんだよ」


 お父さんが肘でヴァリオさんを小突いている。


「本来ならばそうなんですけどね……デメトリアもロモロも少々賢すぎます。慎重にならざるを得ないでしょう」

「何かできるわけでもねーだろ。お前の商売の邪魔になるわけでもねーし。むしろ、子供に邪魔されて被害を受ける商人ってアホだろう」

「ですが……」

「そもそも、ロモロがもらうことになるのは古い情報になるんじゃねーのか? 常に傍にいるってわけじゃねーんだからさ。古くなった情報なんて商人にとっては無価値だろ」


 そう言われてやれやれと、ヴァリオさんが溜息を吐く。

 仕方なさそうな笑みを浮かべていた。


「いいでしょう。ただし、口外しないことが条件です」

「はい。もちろんです」

「では、今後はこちらで耳にした情報をリストにしてお渡しします。高くつきますよ?」

「お、お手柔らかに……」

「出世払いとしましょう。ロモロの将来に期待します。ここで恩を売っておけばお釣りがきそうですからね」


 そう言ってヴァリオさんは得意げに笑った。これは商人の顔だ。

 ……早まったかな?

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