近所迷惑です!大家家の皆さん!

紅琥珀主

今日という日常

朝、けたたましい目覚ましの音と共に目が覚める。時刻は午前6時頃。やる気ゲージはMAX100だ。

俺は超普通の高校生大家一『おおやはじめ』だ。

そう、下に妹と弟が合わせて5人いることを除けば…。

毎年の様に増えていく兄弟と洗濯物と洗い物の山々。騒がしくも楽しい日々を送っていたが、受験生となるとそうも言ってられない。

面倒だが、起きてから最初にやることは妹達を起こすことだ。

やることは3ステップ

1、大きく息を吸い込む。

2、妹達の布団に手をかける。

3、布団を剥がすと同時に…


「おぉぉぉきぃろおおおおおお!!!」


『うるさい、黙れ!はじめぇ!』


長女の破鳴と次女の破野が口を揃えて言う。


「やかましい!さっさと起きんのが悪い。大体お前達はなんでいつも目覚ましなってんのに起きねぇんだよ!」


「だって、5時にセットしたから」


「なんでだよ!あほか!」


やる気ゲージが5減ってしまった所で、少し小言を言ってから階段をかけ下り、脱衣場へ。母の包丁の音を聞きながら、洗濯機から大量の洗濯物を取り出しカゴへシュート。


「ちっ、今日は金曜日だから多いな。てか破野のやつまた給食袋溜めてやがった。」


そんなことを呟きながら、重たい洗濯物を運び干し始める。


「お母さん。破野また給食袋溜めてたんだけど!あと、今日やたら多いんだけど!勉強できないんだけど!?」


「また、破野やったの…。それはもう諦めなさい。それより勉強?うーん、まあはじめならしなくても大丈夫でしょ。それより今日午前中3時間位千破のこと見ててくれない?」


「は?」


「今日セールしてる日だから沢山買って来ないと。勉強してていいから。」


「いや、できるかぁ!」


「そう言わずにお願い。」


「ええ…うーんまあいいか。(本当は良くないけど)」


この時点でやる気ゲージは20ダウン。


「ありがと。それより破野達はまだ起きてこないの?」


「あいつらっ!洗濯物外に持ってく時にもっかい起こしてくるよ。」


そう言って干し終わった洗濯物をハンガーは穴の部分を腕に通し、ズボンを片手で抱え、洗濯ばさみで止めたタオルや下着をもう片方の手で持ち、上へと持っていく。

ドアを開ける時に両手が塞がっているので足や肘を使い開ける。

これは妹達には出来ないのでまさに熟練の技と言えよう。


洗濯物を干す時の3ステップ

1、タオル類は普通にかける

2、ハンガーかけには上段に大人の服や破野が来ていた丈長の服、下段には千破や健の服をかける。

3、ズボンははたいて伸ばし竿にかける。


洗濯物を干し終わったので、妹達を再度起こしに戻る。すると破鳴と破野は読書を、健と深破は二度寝していた。


「おぉ前えぇらあぁ!ご飯食わねえのか!?」


そういうと破鳴と破野は慌てた様に枕元へ本を隠すと、


「食べる食べる。」


という。


「はあ、じゃあさっさと降りてこいよ。」


そう言って階段を降りて帰る…と見せかけて、数十秒後に見に戻る。

すると、やっぱり読書していた。


「…お前ら、それはご飯要らないってことで良いんだよな?」


「だめ!」


「もうお母さんに言ってくるわ。」


そう言って下へと急いで降りる音を立てるとやっと動き出した。

机を布巾で拭き箸を並べ、味噌汁茶碗と、野菜を載せた平皿を運ぶ。そこまでやった所でやっと妹達が降りてきた。


「お母さんおはよう。」


そう言う妹達。


「おはよう。降りてくるの遅すぎ、あと破野はいい加減給食袋を溜めるのをやめなさい。」


「はーい。」


そう気の無い返事を返す妹達。恐らく来週も同じことをやるだろう。

それを思うとやる気ゲージは15下がる。

そうして今日もいつも通りの朝が始まった。

ご飯を食べつつ、俺は妹達に聞く。


「今日破鳴は?」


「部活。」


「破野は?」


「家にいるよ。」


「深破も家で、健は保育園か。お母さん破野に千破見させるのはダメなの?」


「破野は信用出来ないからダメ。」


「ちょっとお母さん!酷くない!?」


破野が何やら言っているが無視する。


「はあ、本格的に見れんの俺だけかよ。」


とりあえず朝食を手早く食べ終わり、自分の食器と、フライパン、味噌汁鍋などを洗う。

ジャーという水音に加え、お湯の熱気がイラつきを加速させる。


「ちっ、どうすっかなあ」


そうこうしているうちに、母は出発してしまい、残されたのは妹3人。


「さて破野と深破、千破とそこで遊んでて。」


「嫌だあ。」


「千破のこと見ててくれたら昼ごはんのおかず増やしてやるよ。」


「うーん、わかった!」


そうして破野と深破に任せて数分、勉強の準備が丁度整った位で、千破が泣き始めた。


「はじめ、千破泣いちゃった。」


「泣いちゃったじゃねえ!ちゃんと見とけって言ったじゃん!ああ、もう貸せ」


妹達の使えなさにイラつき、やる気ゲージは更に10削られる。

千破を抱っこする、すぐに泣き止む千破、しばらく抱っこして揺れていると千破はそのうちウトウトし始めた。ここで破野達に騒がれては困ると思い、リビングから追い出し2階に行くように伝える。階段は静かに登れと言ったのに、全く静かに登らない。

千破が寝たところで、緊張の瞬間が訪れる。


「…(さーて、起きないでくれよぉ。)」


そう言いながら千破を布団に置こうとする。

全神経を集中し、細心の注意を払い布団に載せる。そして、腕をゆっくりと抜く。

大体、5回に1回位に成功する。

今回は…


「成功か…。」


そう思い時計を見ると、既に11:30。母さんは12時に帰って来ると言っていたので、あと30分しかない。

急いで勉強を始めるが、程なくして母さんが帰ってきた。


「お昼はなに?」


「いつも通り余り物。」


「まあ、そうだよね。あと、家じゃ勉強するの無理だから午後どっか行ってくる。」


「行ってもいいけど、その前に布おむつ干してってくれると助かる。」


「はあ、わかったよ。」


ここまででやる気ゲージは50まで減ってしまっている。

昼ごはんを食べ終えた。昼ごはんには好物が多かったのでやる気ゲージは10回復した。

これは賭けになるが、やる気ゲージを15消費して速攻布おむつを干し終える。


「じゃあ、もう出かけるから。」


ここが運命の分岐点、ここで何か家事を言い渡された瞬間、やる気ゲージは一気に20程減ってしまうだろう。

結果は…


「行ってらっしゃーい。」


よし!賭けに勝った!母の言葉を背中に受けながら、自転車に乗り走り出す。


「さてさて〜どこへ〜行こうかね〜♩」


そう歌いながら自転車で走る事約15分。

着いたのは家から最寄りの図書館だった。


「まあ、図書館が安牌だよなあ。」


そう言って図書館独特の気配を感じながらエレベーターに乗る。


「えーと、2階だっけ?3階だっけ?最近来てなかったから忘れちゃったなあ。確か3階だった気が…。」


3階でエレベーターのドアが開く。

目の前にはようこそとしょかんへの文字が見える。


「お、あってた。」


カウンターから聞こえるピッ、ピッという音も久々に聞いたとなると妙に懐かしい。

子供用の勉強スペースを見ると、中学生が占領していたので使えなかった。

その為今回はカウンターを素通りして、奥にある新聞を読んだり勉強したり出来る長机へ直行。老人が数人座っていたが、気にせずに勉強を始める。


…10分後

やる気ゲージを10使って勉強するはずが集中力を乱され、20も減ってしまっている。

集中できない理由は主に3つある。

1、中学生がずっと歩き回っていてうるさい。

2、隣のお爺さんがずっと咳き込んでいる。

3、その他絶妙な騒音が絶え間なく聞こえる、


これ以上図書館に居ても逆効果だと判断し、荷物を手早くまとめて図書館を出る。


「さて、ホントにどうしようか…。」


照りつける日差しの下そんなことをつぶやく。


選択肢は3つ

1、家に帰って勉強。

→やる気ゲージマイナス10。勉強ゲージも余り上がらない可能性が大

2、今日はもう諦めて友達と遊ぶ。

→やる気ゲージプラス10ただし、勉強ゲージは今日1日0になる。

3、スタバとか行く。

→やる気ゲージマイナス5。勉強ゲージはプラス20〜75。ただし金は減る。そして手持ちの金は無い。


「しゃーねえ。帰るか。」


俺は1の選択肢を選ぶ。

そう、妹達が両親とどこかにいっているという可能性にかけて!


自転車を漕ぎ急いで帰る。駐車場を確認するが車は1つしかない。


「お、これはワンチャンあるかも…。」


そう思い、ドアを開け家に入る。


「ただいまぁー!」


「おかえり。」


答えたのは破鳴だけだった。

リュックを置きそのままキッチンへ向かう。

冷蔵庫から麦茶を取りだしながらタブレットを弄っている破鳴に聞く。


「お母さん達は?」


「ん?なんかどっか行った。」


「ふーん。」


表面上ふーんとか言っているものの内心は大喜びである。


「じゃあ、俺勉強するから。」


「あっそ、」


2階へと上がり、お父さんの書斎で残り15のやる気ゲージを全て使い勉強を開始する。

数時間経ち、どうにか勉強ゲージを100にする事が出来た。


「よし、終わりっと。」


階段の窓から見た限りいまは6:30くらいだろう。1階に降りるとまだ破鳴がタブレットをいじっている。


「破鳴、お母さん達は?」


「まだ帰ってきてない。」


「食洗機片付けた?あとお風呂は?」


「あ、やべ。」


「やべ、じゃねぇよ。」


そうして洗濯物を取り込んだりしていると。


「ただいまぁ。」


そう言ってお母さんと妹達が帰ってくる。


「健、今日はどこ行ってきたの?」


「今日は、なんか公園行ってきた!」


「そうか。それは良かったね。」


そんな会話をしながらお風呂に入ったり、夕飯を食べたり、そうしてあっという間に寝る時間になった。


「ほら、もう9時だぞ。早くねろ。」


そう言って電気を豆電球に切替える。

本当ならスマホでも弄るのかもしれないが、持っていないのでそういう訳にも行かない。


「おやすみ」


『おやすみ』


そう言って深い眠りに落ちて…


「そういえばアイドルのニーナちゃんがさ…」


落ち…


「あ、わかるぅ!」


落…


「落ちれるかぁ!うるせえええ!はよねろおおお!」


そんなこんなで、大家家は今日も騒がしい。




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