第3章:見えてきたもの3

「あぁ~もうっ!ふざけるんじゃないわよ!」



 ベアトリウスの首都、アギスバベルに向かう道中。とある女性の叫び声を聞く。  

「な、なんや!?」

「叫び声?……あ、あれは!?」

「ゲロニカさん……よね?それと……」

「謎の男女集団……」

 発声者は彼らからのようだ。しかし、いない時はとことんいないであろうこの街道に、なぜ彼らのような人達がいるのか。シグマ達は疑問に思った。野宿する人がないわけではないが、この街道は国境沿いにあるため基本的に通り抜けるために使う事が多い。だから止まっている人がいると、少し違和感があるのだ。

「とにかく行ってみよう!」

「は、はい!」

 シグマ達は現場に急いで向かった。




「あの~どうなされたんで――」

「ほんと、いつになったらあたしの体は元に戻るの!?全然治らないじゃない!こんなにお金かけてるのに!」

「そう言われましても……。そもそもアリアお嬢様が幼児化した原因が不明ですし……」

「薬で治すより、犯人を探した方が良かったって事?そんな無茶な……犯人を知らないから薬で治そうとしてるのに……」

「今までのやり方を変える必要が出てきたか。ただの体の縮小だと思っていたが、どうやらそうではないようだな……ん?」

 しばらく会話を聞いてきたが、男がようやくこっちに気づいてくれた。

「ば、ばれましたね……」

「こ、こんにちはぁ~……」

 シグマは一応礼儀正しく挨拶をする。

「君達は……!」

「知ってるのかゲロニカ!?」

「……ノーシュの騎士だよ。大火事事件の再調査をしている」

 が、大火事事件というワードで反応を変え、それどころじゃなくなった。

「(まずい……!)」

「大火事事件だと?」

「大火事事件と言えば、ノーシュで12年前に起きたあの事件ディスか!」

「その大火事事件じゃ」

 集団は、男三人に女は二人。使用人と貴族のお嬢様、そしてなぜかその二人ににつき従っている謎の男二人という印象だ。

「(ゲロニカさんはまだいいけど、他の人達は……。ベアトリウス人には気をつけろと言われたばかりなのに、こんな形であたし達の旅の目的がばれちゃったわ)」

「きゅ、急になんなのよあんた達……!これ以上あたしを混乱させないでよ!」

「(それは僕も思ってるよ……)」

 シグマはベアトリウス人であろう女性に同情をした。よりにもよって話の中心人物にだ。

「あーもう腹立つ!腹いせに殴っていいかしら!」

「いけませんお嬢様!」

 どうやら相当ストレスが溜まっていたようで、こちらに向かってくる。戦闘能力があるようだ。

「ちょちょっ、ちょいと待ちぃ~や、なに急に攻撃してきてんねん!」

「うるさいうるさいうるさい!腹が立つに決まってるでしょこんなの!」

 完全にヒステリーになっており、手が付けられない。マルクが流れで相手をしているが、収まりそうな様子は今の所ない。

「……事情を教えてもらいませんか。なぜ彼女はこんなヒステリックに?」

 シグマはそんな二人の状況を確認しながら、他の人達に質問をした。

「その前に自己紹介をしておこうか。俺の名前はルーカス。ルーカス・デウシ―ザーだ」

 男は名乗った。いや、名乗ってくれた。

「俺達はそこにいるアリア・コリエールが自分の幼児化した体を治すために設立した、レバニアルファンパーレントという組織に属している。レバニアルと略して構わない、まぁお嬢様が金の力で作ったただの支援組織さ」

「アリア以外の私達4名は全員善意のボランティアで属しています。給料と活動資金は全て貴族であるアリアお嬢様持ちディス。ア、紹介が遅れてもうしわけありまセン。私、ディスカー・ナインという者です。名前の由来は聞いての通り語尾から来てマス。普通に言葉を理解できマスので、喋り方にはあまり気にしないでくだサイ」

 二人目はディスカー。

「ふぅん、幼児化されたの事はわかったわよ。でもそのレバニアルっていうのはなんなの?いつから活動しているわけ?」

 そう、聞きたいのはそこだ。

「話すと長くなりますが……。あ、私ファルペ・ヘリウスです。私達の話を聞いてらしたならわかるでしょうが、アリアお嬢様は見ての通り女の子ですが実は成人しています。だから幼児化って言ってるんですからね。で、その幼児化なんですが……何者かに何かをされて幼児化されてしまったんです。その何者かにその時の記憶を封印までされて。だから犯人を捜すことも出来ず途方にくれていたのを」

「——皆さんが彼女の事情を知って助けようとしていると?」

「ええそうです」

 名前を把握したので、ファルペにシグマが言って、状況をさっさと把握する。どうやら幼児化して数年は経っているようだった。

「話をしている途中で悪いが、お前達も名乗ってもらえないか」

「あ、すいません……」

 そうだった。自分達も名乗らなければ。

「僕はシグマ。シグマ・アインセルクです。隣にいるメイとは同じ騎士です。共に成人したばかりです。後は情報屋のマルクと、フェルミナ教のイリーナさんと……」

「マイニィちゃんというカレア家のお嬢様です!」

 イリーナが笑って答える。

「でも、ちょ~っと待ってください、なぜ皆さんはアリアさんが記憶を喪失している事を現場を見ていたわけではないのに知っているんですか?」

「せや、わいが一番気になってるのはそれや!」

「そこにいるカレア家のお嬢様がノーシュでは有名なように、ベアトリウスではアリアお嬢様は有名な貴族です」

「私達は彼女が記憶を無くしている状態だったのを保護したんです。見ての通り皆年齢も目的もバラバラ、商売のために属している者もいればそうじゃない者もいます」

 レバニアルとはそういう団体だ、と言いたいようだ。

「一つ補足しておこう。アリアは別に全て記憶を失っているわけじゃない。幼児化された記憶のみ失っているんだ。だからこうなってる」

「えっ?じゃあ、元々住んでた屋敷とかは?」

「気が付けばあたし以外皆死んでたわ。悲しむ暇もなく持ち金全てもって逃げるしかなかった」

「そ、そんな……!」

 どうやら、れっきとした事件だったようだ。それも犯人が数年逃げおおせているタイプの。

「すまんのぉ……シグマ。関わると面倒も増えるだろうから、お前達には大火事事件に集中してほしかったんじゃが……」

「ゲロニカさん……」

「そうよ、あんた達の方こそなんでうちのゲロニカの事を知ってるのよ!」

「知ってるも何も、大火事事件の調査をしている時に出会ったのよ」

「ふっ……あなた達は大火事事件。そして私達はアリアお嬢様の幼児化を治す方法を探している。はぁ……これは効率を考えると一緒に活動するのが合理的ですかね……」

「……どうやらそのようだな」

 急に行動を共にしたいとレバニアル側が言いだしてきたので、シグマ達はきょとんとする。まさかベアトリウス人がノーシュ人に協力を求めるとは思わなかったからだ。それに疑問に思うシグマだったが、すぐにはっとし、とある事に気づく。

「えっ、もしかして大火事事件ってベアトリウスでも有名?」

「何を当たり前な事を」

 ノーシュ人が知らないのだから、ベアトリウス人も知らないと思っていた。少なくとも一般人は。彼らは一般的なベアトリウス人じゃないという事だろうか。だとしたらなんと都合がいいのか……。

「……もしかしてお前、被害者か?」

「……だとしたらなんなんですか」

「ふっ……いやなに、俺も大切な人が亡くなっていてな。同じ痛みをわかるやつがいて好感がもてるというだけだ」

「あなたも誰かが亡くなっている……?」

 シグマはその生き様的に、分かち合う友と呼べる者が身内以外存在しない。しかし、初めてなってくれそうな人を見て心の底から共感した。

「それでアリアお嬢様、どうします?ノーシュの人達ですけど助けてくれそうですよ」

「う~ん、良い人っぽいけどノーシュ人でしょぉ~?大火事事件っていう目的があるし頼るのも、いやっ、だからこそあえて頼った方が良いのかなぁ……?」

 戦闘していたが、話を聞いてすっかりやめるモードになっていたアリアが言う。

「俺は頼った方がいいと思うぞ。一応、大火事事件と幼児化した犯人はもしかしたら一緒だった、っていう可能性もあるからな。もちろん、可能性としては低いし俺は無いと思っているけどな」

「それよりも、私達が今までレバニアルとして何をやって来たのか、皆さんに教えた方が良いかと思いますよ。大火事事件の犯人がもしかしたら掴めるかも知れないディスし」

「あ、教えてくれるんですか」

「まぁ、した方がいいだろうし、ね?仕事として協力しておいて、なんかあった時は裏切るとか、そういうリスクは避けた方が無難だろうし……」

 そう言って、アリアはすぐに話始めた。

「そうねぇ……あたしが逃げてレバニアルを作った後どうしていたかっていうと――」




 

 今から十六年程前。

「ええ~、自己紹介もすんだ事だし、具体的に何をするかなんだけど、皆はどう思う?」

「私はあらゆる手段を使って全方位調査をするべきだと思います。時間が経てば経つほど、幼児化している事に対してマイナスに考える恐れがありますから」

 アリア、ファルペ、ゲロニカ、ルーカス、ディスカーの五人は、設立の目的の通り、アリアの体を元に戻すため、会議を開いていた。

「ああ。体を調べた限り、幼児化しているだけで体自体は年齢相応なようだ。このままの体で死にたくないのなら早急な解決をしなければならない」

「子供には到底できないような運動をさせた実験の結果が良い方向に働いたか。体だけを縮ませるとは、どんな魔法を使ったらそうなるんだか」

「だとしたら薬だけで治せるのでは?少なくとも身長が伸びるような生活をした方が良いですよね?」

「それも実験としてやった方が良いか。数年経てば、ただの薬なんかじゃなく、呪いの類だと証明できる」

「えっ……あのぉ~、み、皆?あたしのこの幼児化の事、いったいどのくらいの年月が掛かると思ってるんですか?」

「俺は数年」

「良くて2、3年ディスかね」

「ルーカスと同意見」

「ディスカーと同意見」

「う、うわ~ん、あたしの体ぁ~!」

 今より少し精神的に幼くヒステリックにもなりやすいアリアが泣く。

「……アリアの精神面を第一に考えた方が良さそうだな」

「そうですね。初めて会った時のように脅迫されたり攻撃されたらたまったものじゃありませんから」

 別にこの体でも生きていられるが、そうじゃないのだ。家族や使用人の皆が死んで、正気でいられるのか。

「しっかし、こんな事あるんじゃのぅ、貴族のお嬢様が天涯孤独の身となり、幼児化とは……」

 ゲロニカが思わず口にする。

「幼児化の方は間違いなく誰かの仕業でしょうから、なんとしてでも解決するとして、家族は亡くなってしまってどうしようもないディスからね……」

「やれやれ……これは長くなりそうだな」

「そういうルーカス、あなたもいいのディスか?犯人を見つけるために我々レバニアルに入った、だなんて」

「俺には行く当てがない。俺とあんた達は最初から俺が犯人がノーシュの方にいそうだと判断したら、すぐに抜けるような緩い繋がりだろ。それに、わざわざ人助けをすれば生活を保障してくれるんだ、を殺した奴がわかるまで、俺の事はいくらでも好きに使うと良いさ」

「あなたも呪われてますよねぇ、恋人の仇を取るだなんてどんなダークヒーローですか」

「うるさい。俺だってアリアが事情を説明しないなら仲間に入れない、なんて言わなかったらこんな事話さなかったさ。それで?ひとまずは薬を作るのと生活に慣れさせるって事で良いのか?」

「そうしよう。犯人を捜すのも一応案にはいれておく。人の体を治すのに商売の力を使うのは変ではあるが、そもそも体を治せるのかが問題の焦点じゃ。アリアはルーカスと違って犯人を殺す事は望んでないからの。もちろん見つけた後は殺す事になるかもしれんが」

「……」

「(そ、そうだったあたしはまだ12歳……。皆年上なんだった……)」

 大人達の会話を聞いて、アリアははっとする。

「み、皆さん!こっ、これからよろしくお願いします!」




 またある日では。

「う、うぇ~。ま、まずい……(もぐもぐ)」

「生活には慣れたが、身長の伸びはあまり変わらずか。薬はあまり期待できなさそうだな」

「不謹慎だが、これは研究し甲斐があるぞ。成長期なのに2年で数ミリ~2、3cmしか伸びてないなんて。誰かがそのように体を変異させたとしか思えん」

「いよいよ犯人説濃厚……。外に出て探す時が近づいてきましたか……」

「俺は最初からそうするべきだと言ってたんだがな。だからこそ俺一人で犯人を見つけるために各地を回ってるんだし。その方が俺自身の目的も同時に行えるからな」

「ルーカスさんには苦労掛けて申し訳ないディス。でも多数決なのでしょうがありまセンね」

「私はもう薬の実験をするつもりはないぞ。2年もすれば十分じゃろう、商人のつてを借りるために薬の提案をしたのであって支援そのものは無償じゃ。なんとしてもアリアの幼児化は止めないと」

「と言いましてもねぇ……。ルーカス一人で犯人を捜しているとはいえ、あれから2年ですよ?有用な情報が一切見つかってないのにやみくもに外に出ても……」

「腹立つ話だが、犯人が隠れているのは明白か。……どうやら、前々から口にしていた、国の人間にまで手を出す必要が出てきたな。あいつらはどうせ否定するだろうが、強制的に調べるしかない。こうでもしないと解決できないだろうし」

「なんでもいいからこの体を何とかして!大人なのにチビだなんて嗤われたくないわ!」

 アリアはこの体になってしまったせいか、スリムな女性を見ると強烈な憧れを抱くようになったのである。

「しかし残念ディスね。私の作ったスペシャルミルクティーが効果がないとは。発育が良いと評判だったのディスが……」

「あんなのよく勧めてきたよな、お前。素材も知らない物ばかりで、裏社会でしか流通してないぞあんなの。美味しかったけどな」

「効果がないなんておかしいディス!私の故郷ではこれで皆豊満になっているのに!」

「そりゃお前の故郷にいる人達がなにかしらの特殊な遺伝子を持ってるんだろう。それを飲むと胸が大きくなるっていう」

「だからこそやってみたんじゃないディスか、他人に試すのはこれが初めてだったんディスから!他にも絶対安眠まくらとか、盗難防止袋とか色々作ったのに!使ってくれないじゃないディスか!」

「必要ないからな。肝心のアリアは一人で眠れるし、金は自分で管理してるし取られてないし」

「ウフ……ウフフ……。アリアお嬢様のぬいぐるみ、本当に素敵ですわ。これで毎日快適に眠れるわ」

「(……犯人探しの仕方間違えたか?)」

 ルーカスはこの組織にいるのを少し後悔した。

「とにかく、もう数か月したら外に出るぞ。たくさん実験をして、十分な結果は出ただろう?」

「ああ、そうしよう」

 ゲロニカが頷く。

「自分の事が第一なのは当初から変わりないが、流石に俺もアリアの幼児化の件は気になってきた。どこの誰がこんな体にしたんだか……」

「えぐっ……えぐっ。あたしの体……」

 アリアが再び泣く。アリアはいわゆる小児病にかかったようなもので、ずっと身長が低いのは歩幅が短いという事でもあるので、生きにくい事もあるだろう。なにより本人が普通の大人を求めている上、このままというわけにはいかない。

「(アリアはあの調子か。普通に生きる分には問題ないのに、自分の体の事を話すとこれだ。年の近い同性の子と体の事や食事で話せないのは辛いだろうな。……もしかして本当にサユリを殺した奴と同じなのでは?いや、だとして犯人は誰なんだ。それが一番重要なんだから、今はそっちに集中しよう。俺の思いは全て犯人を見つけた時にぶつければいいんだ)」

「外に出るとして、どう探すんですか?」

 ファルペが質問をする。

「まずは集団で行動しよう。俺一人で探すとまともに話を聞いてもらえない可能性が高い。が、コリエーヌの話をすると聞いてもらえた人が何人かいた」

「数年経ったからコリエーヌ家なんて皆忘れてしまったと思ってましたのに、まだ覚えている人がいるんですね」

「さすがコリエーヌ家。でも、それでも有用な情報がないというのが恐怖ディス。ルーカスさんの国の人間を調べるというのはあながち間違っていないのかもしれませんね」

「ベアトリウスの事だ、俺達の行動は必ずバレる。だからこそ慎重に行う。もし犯人が国の人間なら、なんらかの形で嫌がらせをしてくるか、俺達を殺しに来るかするに決まってるからな。それに、ここまで情報がないのも不自然だ、コリエーヌ家がアリアを除いて使用人を含めて惨殺されたのに、殆どの国民が知らないのも気になる。国の人間が記憶を無くす何らかの方法を使って、国民を操っているなら納得がいく。もしそのような物が本当にあるのなら、アリアにもそれを使ったんだろう」

「そういう推測ですか。確かに辻褄は合ってますね」

「だろ?」

「よし。レバニアル、出陣じゃな。金の暴力を見せてやろう」

「う~む、楽しく待ってきまシタ~」

「(なんで……?なんでこんなに皆支援してくれているのに何も変わらないの?こんな……こんなの絶対おかしいよ!なんであたしがこんな目に!絶対……絶対……復讐してやるんだから!)」





「とまぁ、こんな感じで、実験はあまり効果がなかったから、今は外に出て国の人間を動向を伺いながら旅をしているってわけ。流石にいきなり首都に行くのはリスクがあるからね。まずは外堀から責めないと」

「私達はあなた達と違って、既に国の人間が犯人だと判断して動いています。ですから再調査の件と混同しないようにお願いします。今の私達のように、大火事事件と幼児化の件が一緒に伝わったら、何をされるか分かりませんから」

「わ、わかりました……」

 まさかの言葉だった。どうせ会うとはいえ、ベアトリウス人に恩を売れるのは後々良い事に繋がるだろうか。

「私は別に話して、その結果頭を抱えたっていいんディスけどね。両方ともただの事実なんディスし。国としては不幸な事件として処理するだろうから、だからこそ疑っている側面もある」

「それに今のアリアのように、定期的にヒステリックになるのをなんとかするには、根本的な解決をするしかないからな。大火事事件の事までは流石にわからないから、再調査をしているなら一から存分に調べてくれ。それで?俺達と行動を共にするのか?しないのか?」

「どうする皆?どうしたらいいと思う?」

 シグマは皆に尋ねる。

「シグマさんに任せますよ。私はついてきてるだけですから」

「私も……」

「わいは正直微妙な所やで。わい個人としては情報屋として情報を提供して商売したい所やけど、大火事事件と犯人が一緒かどうかなんてわからないやん。せめてその確証が少しでもあれば一緒に活動するわ。国の人間だったら間違いなく別件で捜査する案件やでこれ」

「メイは?」

「人が多い方が良いか、少ない方が良いかだと思うわ。ベアトリウスの事を何も知らないあたし達にとってこの提案ははっきり言って嬉しいサポートよ」

「だよね……う~ん……」

 シグマは悩む。

「……僕達はアリアさんの幼児化の解決を手伝う。だからレバニアルの皆さんも僕達の大火事事件の再調査に協力してほしい、です」

「……いいんだな?」

「はい」

「それじゃ、よろしくね。ふぅ~、人が増えたんだもの、何かしら進展しないとただじゃおかないんだから」

「(お、同じ貴族なのに、怖い……!)」

「あ~!なに怖気づいてんのよ。そんなに怖かったあたし?」

「え、えっと、その……。あはは……」

「一気に増えましたね。こりゃ一団体ですよ最早」

「目立ちますねぇ……。まぁ私達にとっては今更ディスね」

「なに、そんなに派手に活動してるの?」

「少なくとも目をつけられています、既に。あなた達もそうなのではないディスか?」

「うっ……」

 シグマはマキナの事を思い出す。

「やっぱりね。国境なんディスからベアトリウス側の動きが見えたり、その影響があるのは当然です。だから別に変な推測じゃないディスよ。わざわざ行動を共にするんディス、助けなきゃいけない時は助けないと」

「あ、ありがとう、ございます……」

「急には無理じゃろうが……わしらの事は信頼してほしい。わしらもお前達の事を信頼する。わしらはお前達の味方じゃ」


「……犯人がノーシュの国の人間とかだったら話は別だけどな」


「「「……」」」

「ん?反応が何か変だな……」

 ルーカスは、ノーシュは見えない地雷を踏んだ。

「……こっちも大火事事件の犯人がベアトリウス人だったら、徹底的に追及するよ。国の人間としてね」

「……すまん」

「いえ」

 ルーカスは自分が何を言ったのか理解して謝罪した。

「(はぁ~、ベアトリウスに向かう途中でこれや。ホンマ色々起こるなぁ、こいつといると……。まっ、それがええんやけどな!)」

 マルクは相変わらず、新しい情報が入って来るのを楽しんでいた。

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