第4話 護衛
それからの西へ向かう旅は、困難を極めた。
なんやかんやあった。
めっちゃ大変だった。すごかった。
え?ここはこの作品が人気が出た時に、2次創作や公式スピンオフが出るところなので、待ってほしい。
アイテム「幸運を呼び込む神力の壺」を10万キンで手に入れたり、座禅のまま宙に浮く人にポアー魔法を教えてもらったり、色々あった。結局どれも「やつ」のせいでなくなってしまったんだけど。
こうして能力的にもアイテム的にも何も成長のないまま、放浪の旅は3か月を迎えた。
「今日の夕飯は豪華なバナナだな…」
これで4日連続である。いくら探査魔法「G・P・S」を使って正しく前に進んでも、見えるのは砂。そう、ここは砂漠というところである。
「砂漠暇すぎる!つまらない!そこら中に花を植えたい!!!!けどそんな魔力はない!!」
というわけでバナナを食べているのである。
普通のペースで歩いていれば、あと2日で街に出れる。日は沈んだ。今日はここで野宿だ。植物魔法を用いて、簡易的な家を拵える。
眠るにはまだ早い気がしたので、魔導書を取り出す。
「ええと、次に向かうのは…」
サンド・アラジンという街だ。
「おすすめの観光スポットはここ!①サンド砂丘 ②サンドウィッチショップ ③魔道ミュージアム…?」
だそうだ。②の砂魔女の店は気になるが、店って観光スポットなのか?それよりも、魔道ミュージアムが3番目ってなんで…?順番おかしくない?
なんとなく魔導書を読むのも白けてしまい、今までの旅路を振り返る。
僕はビンボー王国を西へ抜けてきた。最初にドワーフの町へたどり着いた。ここは、行ったことがあるから知っている。国…国で言うと、チャナゴル共和国である。チャナゴル共和国のドワーフ自治領。
チャナゴル共和国とビンボー王国は親密な関係を築いていたので、一応国王が隊長である国防軍特別遊撃隊所属の僕ら勇者パーティーは、何度か訪問していたし、それなりに顔が知られていた。
だからこそ、宿は借りるだけ借りて、後はもう逃げるようにしてその国を出なければならなかったんだけど。
国を出て、さらに西へ進んだ。チャナゴル共和国を抜けると、すぐに山がある。山を越えると…その後の国は、全てビンボー王国と交易のない国々だ。当然言ったこともない。だから、冒頭の通り、もう大変だった。ひどい目にあった…。
あてもなく西へ向かっているが、この砂漠を超え、サンド・アラジンを超えたら、いよいよヤウロペ連邦だ。
ヤウロペ連邦…西側最果てにして、最大の国だと聞いている。魔導書に書いてあった。いやほんと魔導書すごいね。
最果てとはすなわち、最果てである。小泉さんみたいになった。小泉って誰だ?
向かった者はだれ一人として帰ってこない。故に、最果て。だから僕は、まあとりあえず、ヤウロペ連邦をゴール地点と考えている。
最大の国だというのであれば、何かしら商売ができるだろう。生計が立てられるだろう。ビンボー王国より貧乏ということは多分ないんじゃないかな…と勝手に期待している。
この植物魔法があれば…それに、僕は意外と色々な魔法を使えるんだ。なんとかやっていけるだろう。
「あれ…あつっ!」
思案を巡らせていると、突然左足に違和感を覚える。最近たまにあるので困っている。たいていの場合、休めば治る。つまり、
「よし、寝よう。おやすみ」
さっさと寝ることにした。
夢の中だが、大きな音が鳴り響いている。まるで鉄と鉄がぶつかり合うような…。声も聞こえる。野太い男の声だ。サボ・サンだ、おらぁ!サボさんしてんじゃねーよ!…意味が分からない。さすが夢。女性の声もする。私のためにそんな…もうやめて…!いやそんな頭お姫様かよ…。ヒヒーン!これは人間?馬か?
それに、焦げるようなにおいがする。上手に焼けましたね。
「ってこれ夢じゃなくない?」
目を開ける。杖を手に取る。さっと立ち上がり、ログハウスから出る。ここまで2分。やっぱ夢じゃね?いや~眠い!
「うそだろ…なんで今まで平気で眠っていられたんだ…?」
距離にして約500m先。あれは何だ、馬車か?燃えていて判別がつかない。人影が見える。争っている。僕の右手側は甲冑を着込んだ人間が3,4人?甲冑を着ていない1人は女性か?左手側は、いかにも盗賊っぽく頭にバンダナ巻いているのが…20人以上?甲冑の騎士たちの方が個々の戦闘力は高いようだが、人数に差がありすぎる。押されている。
後になって考えてみると、寝ぼけていたとしか考えられない。最善の手は、観察しつつ、距離を取ることである。
なのに、なぜか、この時僕はどうしようもなく憤怒していた。最悪手を選んだ。
「詠唱省略、力を貸せ、精霊たちよ!」
「仕方ねーな、サボさんがやってやるぜい!」
「話ややこしくなるし著作権心配だからあんたは引っ込んでな!」
全力で前へ走り出す。砂漠だが、植物魔法で足場になりそうな植物を生み出し、ひた走る。
「おい、なんか来るぞ」
「気にするな。あの女さえ手に入れば俺たちの勝利だ!行くぞ!!」
なんか盗賊が言っているが何するものぞ、距離を詰める。
杖を振り、
「創樹生成・金鯱(エキノカタクス)!」
非常にとげとげしいサボテンを数多生成し、ひたすら盗賊たちに向かって投げつける当てるぶっ飛ばす。
「いてえなこの野郎、サイコロステーキにしてやる!!」
「先輩!女が逃げます!」
「ああ?この砂漠でどこに逃げようってんだ」
「よそ見をするな。創樹生成・鳥兜(トリカブト)」
強力な毒性をもつトリカブト。素の人間が口にすれば、わずか数十秒で死亡すると言われる死の花トリカブト。それを、容赦なく顔面に叩きつけていく。
敵は身体強化魔法を使っている。この毒性で死ぬことはないだろうが、しばらくそこで寝ていてもらわないと困る。
「花に触るな!全身布で覆え!」
戦い慣れている。判断が速い。それでも、8人ばかり無力化に成功した。すでに甲冑の騎士たちに6人ほど倒されている。あと6人。激しく競り合っていたが、いったん距離を置く。
女性は…姿が見えない。隠れたか。つかまったか。
「っと!」
突然、騎士の1人が僕に刃を向けた。
「助太刀感謝致す。しかして、お主は何者ぞ!」
「なんか気が向いたからあんたたちの味方をすることにしたの。はい、敵はあっち!構える!」
「背に腹は代えられぬ。加勢感謝致す!」
物わかりのいい騎士はかっこいい。
「創樹生成・野薔薇(ノバラ)」
ツタで敵をヅタヅタにしようとして構える。
「…まあ、待て。これを見ろ」
盗賊の頭領だろうか、1番後ろに控えていた男が 下卑た笑みを浮かべたまま、指パッチンをする。ウザい。
盗賊の1人が女性の頭にナイフを突きつけたまま、歩いてきた。
「げへへ。こいつがどうなっても…なんだっ」
別に僕の魔法は僕の足元から生成する必要ない。女性を人質にしている盗賊との距離はせいぜい20mだ。余裕で発動範囲内。
盗賊全員の足元から一斉に野薔薇を生成する。ただのバラなので魔法で強化した男たちにダメージを与えられるものではないが、隙を作れば十分だ。
「やっちゃえ、甲冑の騎士(バーサーカー)」
「うおおおおおおおおおおお!」
騎士が突っ込んでいく。
「輝け!ジュワユーズ!」
剣からビーム!騎士はこうでなくては☆
********
「これさえあれば、万事うまくいくでしょう」
「ありがとう…ありがとう!僕の植物研究ライフが今幕を開ける!!」
あまりよくある光景とは言い難いが、なんと女性はヤウロペ連邦のサパー領の第二皇女というではないか。
「お礼など結構です。僕はヤウロペ連邦を目指しているただの植物研究家にすぎませんよ」
「ヤウロペ連邦ですか!では、ますますそんなわけにはいきません。そうね…」
「いえ、本当に結構です。でも、そうですね…入国に必要なビザを持っていないので、ちょっと困ってて」
「あら、じゃあこうしましょう!今私がサインをするわ。えっと…これね、この用紙。永住権の保証と出入国の自由の保証…っと」
すごい。1番ほしいものが手に入りそう。
「そんな…僕にはあまりにもおそれ多く…」
「これさえあれば、万事うまくいくでしょう」
もらわないわけないじゃないか。
「ありがとう…ありがとう!僕の植物研究ライフが今幕を開ける!!」
「できればその…その代わり…私と一緒に来てくださるかしら」
護衛と言うことである。
「それくらい、お安い御用ですよ!」
契約成立!YES!こうして逃亡生活に幕を下ろしたのであった。
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