第21話 二度目ですから

21.二度目ですから




「ごめんなさいっ! 兄の言うことは本当です。こんなのに人なんか殴れる度胸なんてないんです! 今日だってそんなんだからパーティから追い出されて、バカみたいに吞んだくれて、気持ちが大きくなっちゃっただけだと思うんです。お怒りの気持ちはもっともですが、ど、どうか兄を、許してやっていただけませんでしょうか?」


 マレッタとスキンヘッドの横には女性の姿があった。それはカウンターで見かけた受付嬢だった。


「そうなんです! 本当にごめんなさい! ごめんなさいっ!」


 スキンヘッドは真っ青な顔で大声出しながら叫んでいた。この男の言っていることも、受付嬢の言っていることも、僕にはウソをついているようには思えなかった。


「んー……。も、もう、その辺でいいんじゃないかな……」


 僕の言葉にマレッタ姫は振り返り、やがて銃を下ろした。


「本当にごめんなさい! ごめんなさいっ!」


 スキンヘッドは床にペコペコと額を擦りつけながら謝っている。……その姿は、まるでかつての僕の姿のようで胸が痛んだ。


「も、もういいですから……頭を上げてください。ところで、冒険者登録をしたいのですが……」


「と、登録ですね! はいっ、承ります! どうぞ、こちらへ!」


 受付嬢は震える声でそう言いながら、カウンターに僕を案内した。


 初心者であるGランクからの登録ということで、一からの振り出し。


「こ……ここに名前と、なりたい職業をお書きください。依頼内容は壁に貼り付けてありますので、やれそうなものがあれば、カウンターまでお持ちいただけましたらと」


 ギルドの仕組みも、どうやら同じようだ。

 資金稼ぎのために少しずつクエストはこなすが、ここに来る目的はランクを上げるためではない。固有スキルが手に入りそうな情報を聞き出すこと。そして、元の世界に戻るための最終的なボスを見つけること。

 前回僕はそう考えて、毎日のようにギルドに顔を出した。


 ギルドに通うことで、……僕のは予想外だったけど、他の人のはある程度アタリをつけられた。この世界の固有スキルには、どんなものがあるかということを、神話のエピソードや人々の噂から聞き、後はそれに見合いそうな敵を探し出す。

 一年という短期間でクリアできたのは、この考えがバッチリ当たったことが大きいと思う。


 ここに来る前、王家に伝わるという特殊なポーチに、あらかじめ僕は薬草を入れて来た。ポーチには、大きさは関係なくなんでも入るらしい。

 薬草なんてきっと、こんな凄いものには入れたことがないはずだ。姫たちは「なんでなの」と不思議そうに聞いてきたが、もしかしたら役に立つかもと思ったのだ。


「こ、こんなにたくさんですか? そ、それにそのポーチは……」


 受付嬢が驚いていた。

 薬草はこの世界でも同じで、登録の際に納めたら、ランクはFに上がり、お金ももらえた。


 ギルドで食事でもしながら、これからのことを話そうと思っていたまさにその時、思いも寄らない出来事が起きた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る