第20話 ノバリスクのギルド
20.ノバリスクのギルド
「後のことは任せたわ。お願いします」
「確かに承知いたしました。どうかご無事で」
そんなやり取りの後、魔法陣の上に立った僕は、姫三人と共にノバリスクという世界へ旅立つ。連邦警備隊の老紳士もその場にいた。
「勇者」とか「選ばれた人間」なんていうのは、すでに
でも、もし僕が本当にそんな力を持っているのなら、この世界のためになりたい。
幼いトリエッティまで頑張ると言ってるのに、いつまでも僕がウジウジしてるなんて、恥ずかしい。自分に出来るだけのことはしたいと思った。
逆召喚は、神殿魔術師たちが大勢集まって、かなり長いこと魔法を唱える。二度目ではあるものの、低い声で延々と唱えられている魔法をドキドキしながら聞いていた。
だが、詠唱が終われば、もうそこは新しい世界だ。
ノバリスクは、今までいた世界とほとんど変わりはないようである。
街の様子も、似たようなもの。
となれば、向かう先は情報が集まってくる冒険者ギルド。
前回は貴族たちばかりで、自分からはなにも動こうとしない人たちだった。
僕も初めてのことだったし、どうしていいか分からなかった。街の人たちから色々と話を聞いてみてようやく、とにかくギルドへ行くべきということがわかったのだ。
それまでかなりの時間がかかった。
だが今回はもう二度目。迷わずに行ける。
重い木のドアを開けると、中にいた人の視線が一斉に僕たちに注がれる。これも前回と同じ。初めて見る人間がやってくれば、当り前のことだろう。
僕たちはカウンターにいる受付嬢のところに向かって歩き出した。
「こんなガキが二人も美人を連れてるたぁ、許せんな」
うん……。驚くほど前回と同じ展開だ。思わず笑ってしまったが、そういうものなんだろうか。顔を真っ赤にして酔っ払ったスキンヘッドの、どう見てもゴロツキというようないかつい男が僕の前に立ちはだかっている。
貴族パーティで行った時は、美形のクレシアを連れているためだったと思う。あの時はドレッドが剣で追い払ったのだったっけか。
前回と違うのは、そのドレッドはおらず、僕しかいないということだ。
「なにがおかしい! 一人、分けてくれたってバチは当たらんだろ? いや、二人まとめてでもいいがな」
スキンヘッドはそう言いながら、持っていた酒の瓶で僕に殴り掛かって来た。前回もここまで急な展開ではない。慌てた僕は、思わず目を閉じてしまった。
その時、耳をつんざくような銃声が聞こえてきた。
恐る恐る目を開けると、床にへたり込んでいるスキンヘッドの姿と、その額に銃を突き付けているマレッタ姫の姿があった。
「あわわわわ……。可愛い顔してるが、だ……だめだこの女……、イカれてやがる」
スキンヘッドは、大きく目を見開いたままぶるぶると身体を震わせていた。
なにが起きたんだと横にいたステラ姫に聞いたら、殴り掛かって来たスキンヘッドの顔をかすめるようにマレッタ姫が一発銃を威嚇射撃し、驚いて座り込んだところにすかさず踏み込んで……今の状況なのだという。
「オ……レは、本気で殴ろうとなんてしてないんだよ! 本当だって! ただ脅かすつもりだけだったんだって!」
「ウソ! 襲い掛かって来たのは間違いないでしょ!」
マレッタがぎりっと銃をさらに額に押し付けながら叫んだ。
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