第17話 空気の秘密

17.空気の秘密




「アレクくんのゲットした【空気アトモ】は、逆召喚から戻ると一時的に消える。でも、しばらくすると【全固有スキル】に変わる。つまり、パーティがゲットした固有スキルの全てが使えるようになるの」


 アレクくんの固有スキルについてはステラ姉さんが教えていた。

 お父さんが調べているようで、色々とわかったことを姉さんに伝えているらしい。なぜか……ボクもマレッタもお父さんには会えないんだけども。


 その他のことも、まだまだわからないことだらけ。この話も、固有スキルが消えてしまったという話を聞いた後、お父さんが必死に調べて、つい先日わかったばかりだ。

 アーくんの行った世界は【イーサリアム】。

 だから、【全固有スキル(イーサリアム)】になっているはず。


 この【空気アトモ】が、全ての固有スキルの根本こんぽんらしい。

 そしてこの固有スキルを得た人こそが、真の勇者であり選ばれしものであると。

 お父さんからの話では、そう本に書かれていたという。


「固有スキルは全部で29ある。それを全部獲得した時、ようやく魔王と戦うことができる。倒したらきっと、お父さんの呪いも解けるはずよ」


 ただ、その固有スキルを獲得する具体的な方法は、まだ何一つわかっていない。


 姉さんの【時計クロッカム】は、大事な舞踏会に寝坊した時に覚えたって言ってた。トリエッティは習い事に行くのがイヤで、抜け出したいと思った時に、ゲットしたらしい。

 ……変なの。

 普通は戦闘とかで覚えるようだけどね。

 ボクは、そう。多分……ポケットに入ってる、この水色の石。


「そこでアレクくんっ。全ての固有スキルを、わたしたちと一緒にゲットしに行ってくれないかしら!」


「ええーっ!?」


 今のところ、戻って来たのはメリデン王国のパーティだけ。他の三つの国は、誰一人として戻っていない。やられてしまったのか、いまだに手間取っているのかもわからない。

 それぞれの逆召喚先の世界ごとに、四つずつ存在するという固有スキル。それをボクたちで取りに行こうということになっている。

 もちろん、アーくんがいるからこそ成り立つ作戦。


「心配はいらないわ。アレクくんの力があれば、きっとうまくいくと思う。さっきの、無詠唱でスキルが出せるのだって、普通の人にはできないことだし」


 ボクもスキルの名前を唱えないと発動しない。そういうもんだと思ってたが、さっきアーくんは、なにも言わずに発動できた。どうやって出せるんだろう?


「なんかイメージが頭にバーッと湧いて来たんです。凄いんですか? あ、でも、ステラさんも無詠唱じゃないですか?」


「わたし? あ、そういえば今何時だろうって思うと、頭の中に文字で浮かんで出てくるのよね。なるほど……って、仕組みはそうかもしれないけど、わたしはただ時間だけよ」


 姉さんはそう言って、苦笑いした。

 イメージを頭で思い浮かべる、か。そうなんだ。ボクも今度、試してみよう。


「それから、合体スキルって呼んでいいのかしら。威力が桁外れね。ね、マレッタ?」


 うん、偶然だったとは思うけど、たしかに驚いた。あ、えっと、あ……。


「そっ、そうね。ボクも驚いたよ」


「マレッタっ! 姫ともあろう人が『ボク』なんて言っちゃだめよ。まったくこの子ったら、小さい頃は城から飛び出して野山を駆け回るわ、どこか行った先でも勝手に一人で遊びにいっちゃうわで、お転婆すぎ! 服だって男の子みたいだったし。もうっ、今でもそう!」


 怒られちゃった。

 でも、あれはメリデン王国に父に連れられて行った時のこと。

 あまりにも詰まらないんで、皆の目を盗み、抜け出してトンボを追いかけるうち、どこかの丘に迷い込んじゃった。


 その時に、ある男の子と出会う。

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