第16話 マレッタの思い

16.マレッタの思い




 こんなに、すごい力を持っているとは思わなかった。


 ボクだって固有スキルは持っている。

 でも、神獣の前に立った時は、さすがに足が震えた。

 来てくれなかったら、きっとボクたちはやられてしまってたと思う。いや、国自体が滅ぼされてしまったかもしれない。


 感謝。……いえ、そんな言葉じゃ足りない。

 お父様の言われたように『救世主』という言葉がしっくりくる。


 逆召喚をするメンバーとしてお城に来た時は、わからなかった。

 だって、あれはもう十年近くも前の出来事。あの時のことはよく覚えているけど、姿かたちは、すっかり変わってしまっていたし。

 少し気になったんで調べておいたが、本当に良かった。


 転移先から戻ってきた後、パーティから追放されて一人でこちらに向かったと聞いた時は、天のおぼし召しかとさえ思えた。その後、反乱が起きることも知ってたから。


 ただ、メリデン王国の人は性格が悪いと聞いていた。

 彼のことを心配もしていた。変わってしまっていたらどうしようと。

 連邦警備隊長から善なる心の持ち主だと聞いた時は、居ても立ってもいられなかった。


 早く! 早く会いたいと。


 たまたま視察に来ていたポリンピアで襲撃しゅうげきが起きた時。

 声が聞こえた時は、ドキッとした。戦闘中だったのに、ドキドキしちゃった。

 そして、やはり段違いに強い……。思っていた通りだけど、本当に強かった。


 でも、少し無理したのかも。

 お医者さんの話では、ケガは大したことがない。大丈夫だって言ってたけど、とても心配……。


「うーん……」


 あ、起きたみたい?


「こ、ここは?」


「スマト城よ。勇者様、よくぞお目覚めで」


「おにいちゃん、良かった!!」


 ステラ姉さんとトリエッティが話しかけている。ボクもなにか言いたい。でも、ちょっと恥ずかしい。


「ゆ、勇者ですって? 僕はそんな力、ないです」


「いえ、先ほどの敵はアレクくんが倒したのですよ。……あ、アレクくんなんて言っては失礼ですね。アレクさま」


「ええっ?! 僕はとにかく無我夢中でだったんで。なんにも覚えてないです。それに、アレク『さま』なんてやめてください」


 ステラ姉さんの話に、アーくん、すっかり驚いた顔をしている。

 戦闘のことは、覚えていないのね。それで倒してしまったのだから、やはりさすがだ。


「では、これまでのようにアレクくん、でいいかしら? 寝ている間に鑑定してもらったのだけど、あなたは今、新しいスキルを身につけているのよ」


「おにいちゃん、すごいんだよ!!」


 ステラ姉さんの顔が興奮で紅潮している。トリエッティもすっかり、なついちゃってるみたい。

 でも、アーくんはボクの……!

 ……でももう、そんなことも言ってられないんだろうな。

 アレクはこの世界の宝。誰かのものじゃない……。

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