第15話 その頃、クレシアは

15.その頃、クレシアは




 どうしてこう、おバカちゃんばかりなのかしらね。いや、男っていうのは、もともと頭の悪い生き物なのかも。まさか王まで、あんなにオツムが弱いとは思わなかったし。

 感情のままに人を殴るなど、愚かだわ。

 虫けらの次に嫌いなのは、能なし。どうりでスマト王国程度にさえ勝てないわけよ。


 今こそ王家を滅ぼして、わたくしたちレムール一族が王に返り咲く絶好の機会。


 かなり昔、愚かな一族の一人がしくじったせいで、伯爵なんて身分になってしまったけど、元は王族に連なる家系。くだらない政略結婚なんかでより、今のこの好機を逃さず女王になってやるわ。


 王とドレッドを言いくるめて、ようやく勇者パーティのリーダーにまでこぎつけたしね。

 まぁ、あのバカはちょろい。


「ありがとう、あなたのおかげよ」


 こんな風に少し優しい顔したら、なんの疑問もなく、ころっと引っかかる。


 メディバは口数が少なすぎて、なにを考えているか分からないけど、まぁ、誰に聞いても、表舞台に出てくるようなキャラじゃないわ。放っておきましょう。


 パオロは、私からお願いした。

 ドレッドは頭が弱いし、盾役としても不安。あんなものを前に置いておいたら、安心して魔法が打てやしない。

 パオロは実力あると聞いているし性格的にも取り込みやすそう。申し分ない。


 この世は情報がすべて。いろんなところにお金を掴ませて、どんなことも聞き逃さない。王のマヌケさや、国の悪事なんかも全部、頭に入っているわ。

 いずれ脅しにも使えるはず。


 それと今、王の後ろに魔王というのがいるのも知ってる。さっきの神獣だって、きっとその魔王が出したもの。あのバカな王なんかじゃ、無理。


「とても人には出来ぬ力をお持ちのようです。しかも、頭もキレるそうで」


 これも情報屋から聞いた話。ただ、残念だけどなかなか実態がつかめない。

 何とか取り入るためにも、少なくともパーティのリーダーになっておく必要があったのよ。


 どこかで手を汚すことになるかもしれないけど、そんなのは承知の上。まぁ、わたくしがやったと人々には思わせないよう、ワグナー王だのドレッドだのを用意しておくけど。だからこそ、表向きは信頼関係を保っておかないと。


 しかし、気になるのは、あの虫けら……。

 さっき王が取り乱してたのは、魔王からなにか言われたからだろう。

 魔王様の評価を高めなきゃいけないけど、わたくしにとんだマイナスがついちゃったかもしれない。


 そもそもあたくしが炎の魔法を愛し、エンファイトスを持っているというのに、固有スキルが雷の【雷磁結界サンダーガルム】になってしまったのも、あんな虫けらがパーティにいたせい。変なのがいて、運命が変わってしまったに違いないのだ。

 わたくしの邪魔をするものは決して許さない。


覚えてなさい!


 って、あら……これじゃまるで、負けた者の捨てゼリフじゃない?

 二度と口にしないでおきましょう。


 ただ、妙な技を使ったのよね……。それと、固有スキルが、転移先にいた時と比べて弱くなっている気もする。わたくしのだけじゃなくて、ドレッドも、メディバも。

 スマトの姫たちと一緒になって動いてたのも、変よ。


 まぁ、全員倒せと言われたので、今度会ったら、ひねりつぶしてやるわ。全員、虫けら以下ね。考えるのもイヤ。早く倒して、頭から消し去りたい。


 とにかく魔王様に認められて、この世界をわたくしのものにしなければ……。

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