第14話 ワグナー王の怒り

14.ワグナー王の怒り




 あの魔王とかいう、得体の知れぬ力を持つ者。

 をここまで侮辱しおってからに……。


「我の言うことが聞けんのか?」


 魔王め、世界の王たるに向かって、なんという口のきき方だ。どうしてポリンピアへの侵攻がとがめられなばならぬ。……たしかに失敗に終わったが。くそっ。

 だが、今はじっと我慢。確かにヤツの言う通り、絶好の機会には間違いない。


「我が力と逆召喚から戻った者たちの力があれば、スマト王国を倒せるぞ」


 そう言って現れた時はすぐに信じられんかったが、スマト王を呪いを掛けるわ、神獣などという強力な魔物まで呼び寄せるわ、妄言とさえ思えたメリデン城が宙に浮くなどという予言さえも現実のものになったことで、もはや信じるしかないだろう。


 新たな指令も下されたが、それも甘んじて受けるしかないとは……。力こそ全てということか。

 余の臣下にもこれ程の者はおらぬ。……実に不愉快だ。


 その魔王が言うには運命がようやく動き始めたということだ。余が望む方向に進んでいるとも言う。あの忌々しきスマト王国を倒せるなら、ここはじっと耐えるもよいか。


 逆召喚から戻った者たち……。

 ドレッドは腕っぷしはあるが、頭が弱い。しかしクレシアとメディバは使えそうだ。特にクレシアはすでにあの歳で、この世界で一番の魔法使いとも噂されておる。これも世界の王となるべき余に与えられた絶好のチャンスに違いないのだ。


 想定外だったのは、まさか固有スキルを失った平民のこと。魔王がそこまで執心とは思ってもみなかった。いったい、あやつに何が出来ようぞ。くそっ、追い出したことで、余に罵声を浴びせおってからに……。

 神獣を勝手に戦闘に持ち出したことも、憤っておったな……。なんとケツの穴の小さいことだ。また呼び出せばいいではないか。


 なぁに、罵声の一つや二つ、我慢してやろう。


 余は偉大なり。


 メリデン王国歴代の王の悲願は、真の王たるこそが、達成するのだ!

 この世を支配するのは、偉大なるにして誇り高き王、すなわちであるべきなのだ!


……もっとも、あの魔王という者が、世界を支配すると言い出さぬかとヒヤヒヤしておる。もしそうなれば、スマト王国の言いなりになっておる今と、なにが変わりあろう?


「この世界など眼中にない」


 ヤツはそう言いおるが、いまだに信じられぬ。信じられぬが、実際にあの力を前にしては、とうてい歯向かうことなどできぬだろう。

 スマト連邦の支配はもちろんだが、どこかでスキをついて、魔王を倒せる手段はないものか……。言いなりになるのは、腹に据えかねる。常に機会をうかがっておくべきだろう……。


 ああ、しかしこうして思い出しても腹が立つ!

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