第3話 聞いてください

夫の会社へ電話をした次の日、ルチアに実母から電話がかかってきた。


「ルチア。元気にしているかい。」


「お母さん。それが、、、、ちょっと話を聞いて欲しいの。」


「どうしたんだい?ルチア。」


「最近旦那が家に帰って来ないの。残業が増えたって聞いてたんだけど、1か月近くそんな状態だから、会社に電話してみたのよ。そしたら、旦那はいつも定時で帰っているって言われて、、、、友達がね。会社に行っていると見せかけて不倫していた人を知っているって、、、、もしかしたら、、、、。」



「ルチア。気にしすぎだよ。もしかしたら会社の人の勘違いかもしれないだろ。それに、旦那の帰りが遅い事なんてよくあるさ。世の中にはハッキリさせない方が良い事もあるんだよ。それより、家の事はしっかりしているのかい?」


「ええ。」


「ルチアは、昔から不器用だったからね。心配しているんだよ。旦那は家が居心地がよければ帰ってくるようになるよ。心配しなくていい。やるべき事をしっかりやるんだよ。」


「分かったわ。お母さん。」


「それでね。昨日お父さんが、私に庭のチューリップをこんな所に植えるなって言うんだよ。お父さんだって勝手に木を植えるのに、本当に自分勝手なんだから。ルチアは結婚したのに、貴方の姉は全然私の意見を聞き入れない。結婚の事は自分で決めるから母さんは関係無いって言うのさ。ルチアだけだよ。私の話をよく聞いてくれるのは。」


「そう。」



「ああそうだ。週末は旅行に行くんだよ。ハイキングにね。旅行会社のツアーに申し込んで安くすんで良かったよ。ルチアも気晴らしをすればいいさ。そっちで上手くやるんだよ。じゃあ、またね。元気そうで安心したよ。」


もっと、ルチアは相談したかった。でも電話はもう切れてしまった。それに、相談できるような気もしない。はっきりさせない方がいいという母の言葉が頭に残った。

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