第3話 お嬢様に出会う
「いいか、変なのについて行くなよ」
いくつか奇妙な色の液体が入った瓶を麻袋に入れると、ビエラはテーブルに広げた地図にチェックを入れた。
「これを届けたら、その代金でお前の旅支度をしろ」
「旅支度?」
「靴はケチるんじゃないぞ。厚手のマントに革手、着替え……非常食は僕が持っているから必要ない」
それから、近寄ってはいけない箇所を地図につけ加えると「くれぐれも奴隷商には捕まるな」と念を押される。
子供じゃないんだから。と喉まで出かかったがやめておいた。
「
中身は瓶なので思った以上に重い。
よろよろと歩いていた自覚があるが、それにしてもいきなりドンとぶつかられたあげく発せられた言葉に唖然とする。
「無礼者。平民が私にぶつかるなど重罪。スティーブこいつの首をはねなさい」
瓶が割れないように麻袋を両手で抱えてうずくまる俺に、少女はめちゃくちゃなことを護衛に命令した。
年齢は俺くらいだろう。
見るからに高級そうなドレスを着て、護衛を3人も引き連れている姿はお貴族様そのもの。
ルビーのような髪と桜色の瞳はキラキラ輝いている。整った顔は性格のキツさがにじみ出ていた。この色合いはヒロインみたいだけど性格は悪役令嬢ぽい。
「アリエル様、お怪我はございませんか?」
「怪我はない、この汚らしい子供にさわってしまったわ」
「お怪我がなくて何よりです。しかし、この子供を処分するとなるとさらに御見苦しいものをお見せしなくてはなりません。それよりも早く屋敷に帰り着替えませんと」
スティーブと呼ばれた護衛が、少女に言いながら俺に目配せしてくる。
ああ、早くあっちへ行けってことか。
遠慮なくその場をあとにしようと、麻袋を抱え、よっこらしょと立ち上がる。
ふと、上を見た視線の端にきらりと何かが光った。
「危ない!」
俺は何も考えずに、少女の頭を抱えて横に飛んだ。
瓶の割れる音と、人間の肉が貫かれる音、金属が何かをはじく音が同時にして、よりいっそう小さな頭を抱きかかえる手に力を込めた。
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