第2話 怪しい魔術師

「お前その魔法陣が何なのか知っているのか?」

「確証はないけど、心当たりはある」

 当たってたら面倒そうだけど。


「魔力持ちで奴隷なのは複雑な事情なんだろうな」

 男は、ビエラと名乗り、同情するよ。とでも言いたそうな顔でニヤニヤした。

 妙に上から目線で、俺は知ってますという態度がムカつく。



「それは魔力封じさ。未熟な幼児に上位魔術師が制御できるまで魔力封じの魔法陣を身体にほどこす」

「魔力封じ……」

 やっぱり。

 最後にやったゲームの設定がそんなだった気がする。


「どうだい? それを施した人物に心当たりはあるか?」

 男は楽しんでいるのだろう。人の悪い顔で聞いてきた。

「まだわからないけど多分当たってると思う」

「ふーん、どうする?」

 どうするも、選択肢は一つだ。早くこの魔法陣を消して魔力を使えるようになるに越したことない。


「この魔法陣を消せる人物を紹介してください」

「いいぞ。ちなみに奴隷の刺青なら俺でも消せる」

 男はまたもや右手を差し出した。


「金はないですよ」

「フッ、わかってるよ。魔法石を出せ」

「魔法石? そんなものは持ってないけど」

「ここにいて、追手も来ず苦しんでもいないという事は魔法石も奪ってきたんだろ?」

 あ、そう言えば白豚から奪ってきた宝石。

 俺はポケットの中をまさぐると趣味の悪い宝石の中に、魔法石のついた指輪があった。

 偶然だけどラッキーだな。


「奴隷の入れ墨は魔法石で管理しているんだ」

 まるで孫悟空の頭のリングだ。

 俺はブルーに輝く太い指輪を男の手のひらに乗せた。


「はい、ダメー」

 男は指輪を親指と人差し指でつまむと、俺の目の前に掲げて大声で言った。


 ?


「今、説明しただろ。簡単に人に渡したらダメだろ」


「あ」

 しまった。

 楽しそうに笑うと男は、手に持っていた指輪に二言三言呪文を唱える。


「あ、消えた」

 ふふん、と得意気に口角を上げると、俺の頭をぐりぐりとかき回した。


「僕も、久しぶりに師匠に会いたくなったから一緒に行く事にする」

 はぁ?


「まあ、そう警戒するな。子供が一人で旅するにはなかなか目立つ。僕と一緒なら親子旅に見えるぞ」

 露骨に嫌な顔をしたのに、そんなの気にも留めていないようにバシバシと俺の背中を叩く。

 確かに、子供の一人旅は何かと不便だ。

 だからといって、こいつは怪しすぎる。

 うーん。


「わかった、でも怪しい行動をしたら殺すからな」

「了解。それより、腹減ってるだろ、飯にしよう」

 今さら警戒してもしかたないので、俺は黙って男について店の奥について入った。


「ありがとう」

「お、素直じゃないか。子供は素直が一番だ」


 子供か……前世では30近いおっさんだったけど、その記憶があっても今の俺は子供といえるんだろうか。




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