第4話大切な人の喪失が大切な存在を気づかせる

私は気づいたら心音の膝で眠ってしまったようだった。独りだとまるで沼に沈むように心が沈んでいった。しかし、心音来てくれて、ただ話しているだけで不思議と心に空いた穴が埋められていった気がした。

「おおはよう。ごめんね。気付いたら寝ちゃってた。」

「大丈夫。ひかりちゃんは今はゆっくりしたほうがいいと思うから。」

起きたら朝の6時になっていた。私のためにずっと膝枕をしててくれたのだろう。

「ずっと私が膝にいたから眠れなかったよね。」

「ちょっと眠いけど大丈夫だよ。」

今の私はその優しさだけで十分救われるような気がした。それと同時に申し訳なさも押し寄せてくる。気づいたら私は涙を流していた。

「だっ大丈夫?思い出しちゃったのかな....?」

「うんん。違う。」

私は勢いよく首を左右に振る。

「心音が優しくて。嬉しさと申し訳なさが込み上がってきちゃって。」

心音が私を正面から抱きしめる。そして耳元で囁く。

「ひかりちゃんは私にとって大切な人だから。辛くなったらいつでも何でも言ってね。」

この瞬間、私は胸が締め付けられるような気持ちが湧き上がってくるのを感じた。私の中で心音の存在が友達以上になった瞬間だった。

「本当にありがとう。」

私は数年ぶりに思い切り声を出して泣いた。

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 数分して私はやっと落ち着いた。

「昨日お風呂入れてないよね。待ってて今お風呂入れてくるから。」

私は散乱した物を足で左右によけながらお風呂場まで行く。

「心音、先に入っちゃって。」

私は奥の寝室からバスタオルを取り出す。

「洗顔料とかヘアミルクは私のでいいかな?」

「大丈夫だよ。ありがとう。」

私は一式を心音に渡す。心音がシャワーを浴びている間私は落ち着かなかった。小学生の頃、修学旅行で一緒に入った時は何とも思ってなかったのに。しかし、今はドア二つ隔てて心音がシャワーを浴びていると思うだけで鼓動が速くなる。不思議な気分だった。私はどうしてしまったんだろう。自分のことなのに心音に対するこの気持ちが何なのかが分からない。

「上がったよ。ひかりちゃんもお風呂入る?」

「うんそうだね。入ってくるよ。」

「お腹すいたし、ひかりちゃんが上がったら、近くにあるカフェに朝ごはん食べに行かない?」

「良いね。食べに行こう!」

心音が来る前まで空腹なんて感じなかったのに、今は何か食べたくて仕方がなくなっていた。洗面所に入るとまた緊張してきた。さっきまで心音が入っていたお風呂。本当に私はどうしてしまったのだろう。こんなことを意識するなんて。

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 お風呂を上がったあと、私と心音は近くのカフェ、フルーフに来ていた。ここはバケットとサンドイッチが小麦の豊かな香りがする絶品で、アイスクリームも濃厚で美味しい。私と心音はハムレタスサンドを頼み、私がチョコアイス、心音は豆乳アイスを頼んだ。

「心音の豆乳アイス美味しそうだね。どんな味がするの?」

「優しい味で美味しいよ。食べてみる?」

心音がアイスを差し出してくる。これって間接キスであーんってやつでは⁉︎いやいや女の子同士なんだからこのくらい当たり前。私はそう言い聞かせて、アイスを食べる。

「ほんとだ。優しい甘さで美味しい!」

その日食べた豆乳アイスは今まで食べた何よりも美味しく感じた。

「そういえば学校はどうする?」

「明日から行く。大山先生に伝えといてもらえる?」

「分かったよ。伝えとくね。」

私は心音にお礼を言い、心音とはカフェで解散した。私はこの後気持ちの整理をつけるために、家の掃除をしたのだった。

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