第2話悲劇と悲鳴

新しい衣装ができ、意気揚々と帰途に付く。心音にデバイスの調整もしてもらった。変身デバイスは繊細な機器のため、定期的なメンテナンスが必要だ。調整のたびに少しずつ反応速度なども向上させてくれているらしい。坂道を登り、学校のある土地とは一段高い土地に出る。この土地は扇状地であり、この扇状地の奥に私の住むアパートはある。バスも通っているが私は足腰を鍛えるためにできるだけ歩くようにしている。大通りを進み5つ目の角を右に曲がる。すると私の住むアパートが左手に見えてきた。

三階まで階段で上がり、309号室のドアを開ける。

「ただいま〜。」

おかしい。いつもならただいまというと必ずおかえりと返ってくるのに。

「お母さん、お父さん、いる〜?」

リビングの扉を開けると、鼻をつくような血の匂いがしてきた。急に不安が押し寄せてくる。リビングに数歩入ると、背後に人の気配を感じた。右足を軸に体を高速で捻る。体の右側を棒状のものが上から下へ通り抜ける。そのまま相手のみぞおちに精一杯のパンチを叩き込む。

「ぐっあっ。」

鈍い音とともに相手は床に倒れ込む。どうやら気を失ったようだった。急いでリビングの奥に向かう。棚が荒らされ、物が散乱していた。その中央でお父さんとお母さんが頭から血を流して倒れていた。私は気が動転しながら、急いで救急車を呼んだ。

「もしもし、あっあの家でお父さんとお母さんが頭から血を流して倒れてて。助けてください!」

私は救急車を呼ぶと、ガムテープで不審者の手足を縛り上げた。

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私は緊急治療室の前でかれこれ3時間うなだれていた。緊急治療室のドアが開き、先生が出てくる。私はすぐに先生に駆け寄る。

「お父さんとお母さんの容態はどうですか?」

私は祈るような気持ちで先生に聞く。

「残念ですが、頭蓋内出血が酷く、お二人ともお亡くなりになりました。」

「そんなあぁぁぁ。」

なんでなんでお父さんとお母さんが死ななくちゃいけなかったの?魔法少女として色々な人を助けてきたのに、自分の両親を助けられなかった。私は何をしてきたんだろう。もう少し私が早く帰っていさえすれば。様々な後悔が心の中で渦巻き、嗚咽となって現れる。私は気づいたら病院の廊下の椅子で泣き疲れて眠ってしまっていた。

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