◇清伯木◇ (2)
部屋に行くと二人を覆っていた樹の葉が全て落ちていた。
細かな枝が彼らを囲うように覆っていて、
その中に抱き合いながら二人は横たわっていた。
「夢を見ているようじゃの。」
ヒナトリの大きな体が
その様子は子どもが遊び疲れて
仲良くぐっすりと眠っているような健やかな感じがした。
すでに嫌な気配は全くなく、
自然の風が吹き渡った後のような爽やかな気配が満ちていた。
「空木チャンがあの黒い卵を浄化したってこと?」
「多分そうじゃろう。
それで大抵はこの後は
ほら、見てごらん。」
ヒナトリが微かに動き出す。
そしてゆっくりと伸びをするとぎょっとして少し体を起こした。
細い枝がバキバキと折れる。
「痛っ、なんだこれ!」
「ヒナトリ、気を付けて、枝が危ないヨ!」
ヒナトリが動きを止めたが自分が空木を抱いているのに気が付くと
きまりが悪い顔になった。
その時に空木が目を覚ます。
「……、あっ、」
二人が凍り付く。
「ヒナトリと空木殿、しばらくそのままいなされ、すぐに出してあげる。」
「素鼠老、どうしてここに。」
ヒナトリが聞く。
「あれだけの闇が満ちていれば誰でも気が付くわ。
ほれ、ペリ助けてやりなさい。」
ペリが樹に近づき枝をかき分けた。
その枝は彼らが横たわっていたソファーから生えていた。
「ソファーが大変なことになってる。
樹のソファーになってるヨ。」
驚くことにソファーはその場所に根を下ろしていた。
「このソファーが祭壇代わりじゃな。
これもびっくりしておるだろう。
家具となったのにまた再び生を受けるとはな。」
「この建物もなんか変わった気がするヨ。」
「だろうな、その根はこの建物も通して貯水槽に繋がっておるようだ。」
素鼠老とペリがソファーや建物を触り調べている間、
ヒナトリと空木はソファーに座ったまま
気まずい感じで黙り込んでいた。
お互いに嫌な感じではない。
だが目覚めた時にあまりにも二人の距離は近すぎた。
気恥ずかしかったのだ。
「あの……。」
空木が素鼠老とペリに話しかける。
「一体何があったのでしょうか。」
「おお、済まぬな、わしは素鼠老じゃ、穂積とは古い知り合いじゃ。」
「父とですか。」
「空木殿とは初めてじゃが穂積から話は聞いておるよ。」
老人がにこりと笑う。
「ところで体の具合はどうかな。」
空木が自分の体を見る。
「特に変ではありません。
むしろ具合が良くなった気がします。」
「ヒナトリ殿はどうじゃ。」
「……俺もなんだが調子が良くなった。」
「じゃろうな。」
素鼠老がにやりと笑う。
「お前たちの組み合わせは穂積が思っていた通りだ。」
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