順風満帆な人生なんて存在しない。本作はそれを現実として突きつけながら、その中で苦しみ、葛藤する人間の心を優しく描いています。心を通わせられなかった父親との関係を描いた『ゴムボール』。キャバ嬢と本気の恋愛の中で傷つき合った『チロルチョコ』。厳しく、悲しく、辛い人生の中でたゆたう心を、優しい文体で描き、読者の心を揺らします。それはまるでゆりかごのように、どこか安心させてくれます。まるで、辛くても、生きていていいのだと思わせてくれます。これはそんな短編集です。